[情報ダイエット] 毎日忙しくても文章を書き続けるための6箇条

writing.jpg Cory Doctorow: Writing in the Age of Distraction | Locus Online

1日に1時間、ダイエットできていますか?

これから不定期にではありますが「情報ダイエット仕事術」を補完したり、強化してゆくための連載をしていきたいと思っています。

本に書ききれなかったことはもちろん、他のブログなどで関連した話題が合ったときなどにも、この連載で紹介してゆくつもりです。

今回紹介するのは、Boing Boing の編集者であり、SF 作家でもある Cory Doctorow さんが紹介する、文章を執筆をするときのアドバイスです。

「割り込み」があまりに多いこの情報化時代に、小説を書いたりブログを書く時間を見つけるにはどうすればいいのかについてこの記事はヒントを与えてくれます。

面白いことに「ネットから離れる」というのは、彼にとっては有効なアドバイスではないそうです。ネットは彼にとって終わることのない興味や、インスピレーションをかき立ててくれる空間だからだそうです。

しかし実際にはネットや仕事に向かう時間の中から執筆のための時間を捻出しなければいけないわけで、彼は以下の6通りの方法を用いてこのバランスを作り出すように努めているとのことです。

以下、抄訳でご紹介いたします。

ネット時代の執筆術6箇条

  1. 短い時間で、毎日書く
    小説を書いているときには、非常に控えめな目標、たとえば一日1ページというものを立てて、それを毎日行うようにしている。何時間も外界から身を閉ざして原稿に向かうのは無理でも、20分程度だったら、食事を早めたり、ちょっと早起きするなどして捻出することはその気になればできる。こうした 20 分を、週末も含めて毎日続けることで毎年1作の小説を書くことが可能になる。

  2. 下り坂で駐車する
    時間がきたなら、文章の途中でいいので、そこでやめてしまうこと。むしろこうして文章を途中で投げ出しておくことによって、明日続きを書こうとするときに仕事を再開しやすくなる。編み物や陶芸でもこうした「下り坂で駐車」しておく手法が効果があることが知られている。

  3. 執筆と調査を同時にしない
    調査は執筆ではないし、逆も然りだ。執筆の最中に詳細なデータや数字が必要になったときにはプレースホルダーの文字(「あああ」とか「要調査」など)を入れておき、手を休めずにかき続けることでインスピレーションの奔流を涸らさないようにすること。

  4. 「条件がそろう」のを待たない
    気分がのっていて、子供を寝かせたあとで、静かな書斎でゆっくりとしてからでないと原稿に向かうことができない、というような「条件」を気にしているようではいけない。それだと、「20分の空き時間を作る」というタスクに加えて、こうした条件をそろえることを同時にしなければいけないからだ。20分あるなら、とりあえずキーボードに指を走らせよう。外界のノイズはその 20 分の間だけ我慢していればいいのだから。

  5. Word は使わない
    高度なスペルチェッカーや、構文校正、編集を可能にしてくれるワードプロセッサーは創作にはまったく向かない。それよりは、高機能な検索・置換機能だけが備わったテキストエディターを駆使する方が、原稿を仕上げるのには最適だ。

  6. リアルタイムのコミュニケーションツールは切る
    IM, Skype, 電話, メールの自動受信といった、無意識にも「今に誰かがじゃまに来るかもしれない」という警戒心を抱かせるものは先回りして切っておくこと。こうしたツールを使っているのは、「邪魔をしてくれ」という看板を玄関に掲げて世界中の人に見えるようにしているのと同じことだ。

去年紹介した、「ブロガー必見! 文章上達のための 12 と1/2のルール」の第一のルールも、「毎日書くこと」だったことを思い起こします。

「本当に毎日 20 分で小説が書けるのか?」と疑う人もいるかもしれませんが、まさか本当にこの 20 分の間に「構想・資料集め・執筆」の全てをしているわけではありません。

実際はその日の仕事をしている合間や、バスで通勤している間に「今日はあの続きはどうしようか?」「今日はあそこをこう書き直そう」というように考えていて、実際に原稿に向かっているときはあらかじめ考えていたことを実行に移しているだけなのです。だからこそ、毎日 20 分でも一定の成果を上げられるというわけなのですね。

A「1週間に一度、長い執筆時間を用意する」

B「毎日 20 分を用意して、ちょっとずつ手を加えてゆく」

この二つをみると一見 A の方が「本気を出している」ように見えますし、「小説を書く」というと A のアプローチが正しいようにみえます。しかし実際は B の方が従事している時間は短いのに、いつでもどこでも今書いている小説のことが頭の隅にあるので、長い時間を執筆に充てている以上の成果があがるというわけなのです。

小説家に限らず、このマインドセットはブロガーでも応用することができますね。「携帯を使い、Google Reader でネタ探しをしておく」→「記事にすべきものを一つだけ選ぶ」→「起承転結も何となくイメージしておく」→「実際にキーボードに向かってから、30 分で」頭の中のイメージを書き出す」といったようにです。

情報ダイエット的には、2章で示した「大きな取り組みをしている」= 「大きな時間を割り当てる」ことにはならないという点や、5章の「準備ができてからアウトプットではなく、インプットと同時にできる仕組みを作る」という話の素晴らしい実例ですね。

Cory は Creative Commons で小説を発表するということでも知られています。作品に興味があるという方は最新刊、Little Brother が彼のウェブサイトから無料でダウンロードできますが、もちろん買って あげることで彼をサポートするのもよいでしょう。

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。