能率を一気に押し下げるダブルバインドの危険

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とても忙しい仕事をいろいろかかえていたとしましょう。その中でもタスク A はより緊急だけれども重要性としては2次的、つまりは締め切りがあるタスク。それに対してタスク B はタスク A と同じほど急いでいるけれども、A ほどではなく、しかし重要な用件です。

こうした、あちらが立てばこちらが倒れるという2重拘束の状況を私は心理学の用語を勝手に使ってダブルバインドと呼んでいます(正確ではないかも)。あるいはプログラミングの言葉を使って、レース・コンディションなどとも(これも正確ではないです)。呼び名はどうあれ、この状況は私にとって最大の敵で、仕事の先送りがもっとも生じやすい状況としていつも恐れています。

ダブルバインドが始まると、A をするにも B が気になり、かといって B に手を出すには時間がなく、というジレンマに陥ります。このジレンマはほとんどが心理的なもので、私にとってはちょっとしたタスクでさえこなせないくらいに能率を一気に低下させてしまうとても危険な状況です。

こうしたとき、どうすればいいのでしょう? doublebind.jpg

もっと決断力のある人だったら、「そんなの A からがつんとやって、次は B に決まっているだろう?」と言われて、はい、おしまい、なのですが、心理的に身動きがとれなくなっている状況ではなかなかそうした当然のことさえままなりません。

また、「仕事と家庭」との間のダブルバインド、「したいことと、やるべきこと」との間のダブルバインドのように、容易に答えが出てこない場合もあります。

こうした心理的状況をどのように乗り越えるのか? という問題はいつも疑問に思っているのですが、まだきれいな答えが見つかっていません。そのときの落ち込み方次第で効果があったりなかったりするからです。

そのなかでも以前に効果があったいくつかの対処法を紹介したいと思います。

自覚する:ダブルバインドに陥ると、ただ単に忙しくて疲れているという以上に急速にエネルギー(気力)が減退していきます。まずは、「ああ、ダブルバインドに入っているな…」と自覚して、心理的な罠にからまっている状況を認識します。けっこうこれだけでも、焦りが減って、落ち着きを取り戻せることが多いです。

聖域時間を作る: 「今から1時間は A、次の1時間は B」という風に両方に時間の割り当てを作り、とにもかくにも、このタイマーが2回なるまでには両方のタスクが少なくとも1時間分は進むよ、と自分をごまかす。実際は A か B のどちらかの進行が加速度的に進むので、こう着状態は抜け出せます。または、ちゃんと片方のタスクのために時間をスケジュール帳に書き込んで自分と約束をすることで、もう片方のタスクに集中できる心理状態を作ります。

15分だけ…:パニック状態に陥っているときには、とにもかくにも 15 分だけ片方のタスクをやってみると、存外心に余裕が生まれることがあります。「なんだ、すごい緊急で大変なタスクだと思っていたけど、これならいけそうだ」という感じです。安心が生まれたら、普通に優先順位順にタスク処理をするくらいに落ち着きがとりもどせたりします。

破産宣告: 本来やってはいけませんが、あらかじめ片方のタスクの完了を待っている人に、「これだけ遅れます」と宣言してしまうのもよくやります。もちろん怒られますが、心の中で「どれだけ怒られるのかな…(ガクガク)」と恐怖が膨らんでいる状況よりは現実感が生じます。状況を伝えれば、予定をもう一度ネゴシエーションすることができる場合もけっこうあります。

ほかにもこうしたこう着状態を脱出するために実践している方法はありますか? 私はよくハマっているので、みなさんの知恵があるなら、ぜひお聞きしたいです。

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。