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一歩進んだライフハックへ (7) 自動的に忘れる仕組み作り



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ここ最近ずっと考え事ばかりがぐるぐると脳内で回っているのですが、何度くりかえしてもそれがたどり着く結論は一つです。それは:

ライフハックは消えてゆく方がよいもの

というものです。これに近いことを Merlin Mann が IDEO での講演で口にしていたのを思い出します。彼は多くの人がもっとプロダクティブになりたいあまりにライフハック系のブログを読みすぎていることに関連して、「43Folders をいずれ誰も読まなくなるようになればいいのに」という風に口にしていました。河を渡りきれば船が必要なくなるように、船自体に執着するのではなく、川を渡ることに集中してほしい、ということです。

自分を悩ますメールを忘れよう。たまった RSS の記事を忘れよう。そもそも、ライフハックを忘れよう。 完成は忘却とともにやってきます。

「一歩進んだライフハックへ」のシリーズ、最終回は戦略的忘却についてです。

普段の忘却をしくんでしまう

ちょっと考えてみると、ふだんメールや RSS を処理しているうちに自分が使う「忘れ」には3種類があることに気づきます。

  1. うんざり系:情報が多すぎてこれ以上は処理できないからトイレを流すようにリセットしてしまう方の「忘れよう」の「忘れ」の場合
  2. 熟成系:この情報はいったん視界から遠ざけておき、熟成させようと思うときの積極的な「忘れ」の場合
  3. 定着系:もう意識的に「覚えていよう」と考えるまでもなく記憶に定着しているので、覚えようとする努力自体を「忘れ」た場合

1については、特に RSS やブックマークに当てはまると思うのですが、定期的にたまった情報をリセットするポリシーを持っておくことが、大量の情報に目を通すことのできるコツなのではないかと思います。

たとえば RSS だったら、テーマに応じたカテゴリ分けではなく、重要度に応じたカテゴリ分けをしておくことによって「これとこれは読んだ。あとは重要じゃない可能性が高いので『すべて既読にする』でパージする」といった判断ができます。

はてなブックマークや del.icio.us ブックマークも、ブックマークの数ばかり多くて有用な情報を抽出できなくなる前に、「フラグの立っていないブックマークはふるいものから順に消去する」 といったルールを作るのがよいかもしれません。

寝かせフォルダの作成

2番目の熟成系は、先日紹介した「思考の整理学」でも繰り返し紹介されていた「2段階抽出方法」と同じものです。夜の間に集中して手紙を書いているときに、 次の日に手紙を読んでみて、ええ?こんなことをかいていたのか?と思うことがある。あの効果を使う手法です。

本やブログなどで面白いと思ったことや、自分のアイディアについても、とりあえず「寝かし」の段階をいれて、時間の洗礼を浴びせることによって本当に面白いものとそうでないものを選り分けていきます。時間がたってみても「面白い」と思えるアイディアには、「本物」が混じっている可能性が高いので、こうしたアイディアをプロダクトにしてゆくと成功の可能性が高くなるというわけです。

勝負の分かれどころは、どれだけふだんの I/O マネージメントでこうした寝かせ情報を常にストックしておけるかということになります。

GTD の Someday /Maybe 「いつかやろう」リストにも、同じことがいえるかもしれません。私たちはその場の思いつきで「あれがしたい」「これがほしい」と思いがちですが、その思いをいったん「寝かせ」ておいて、あとで見直しても情熱を失っていないプロジェクトだけを実行にむけて動かしてゆくという風にしてもいいでしょう。

たとえば OmniFocus なら、Someday / Maybe フォルダ内で 30日以上放ってあるものは特別なフラグが立っていない限り自動削除という風にスクリプトを組んでもよさそうです。 「やろう」と思っていたときの熱意が時間とともに忘れられてゆく効果を、フィルターのようにして重要なものだけ抽出するわけです。

ハックそのものを忘れてゆく

自分で自分のブログを否定するようですが、私は Merlin のいうことはもっともで、いずれ自分も、他人もライフハックを必要としなくなれば、ある種の「あがり」だなと思ってます。

習慣化が進んでゆくにつれて、一度は意識的に導入したテクニックやライフハックも、しだいに忘れ去られてゆくことでしょう。それはむしろよいことでもあるのです。どこか古い習俗だとか伝統芸に似てますね。

ライフハックの究極の目標が、この道具が手の一部分となって消えてゆくことにあることを意識すること。これがライフハックに振り回されるのではなく、それを駆使する人との違いとなってゆくのではないかと、今は思うようになっています。

さて、自分のライフハックを一歩前進させるためのロジック作りのためのこのシリーズのおかげで 2008年がくる前に1年分の理屈を語り尽くした感じでとても満足しています(笑)。毎日これに目を通している家内は「今日も理屈っぽいね」という突っ込みさえ入れなくなってしまいました。

明日からはたまりにたまった海外のニュースに追いつくことにしたいと思います。


著者について

堀 正岳

「人生を変える小さな習慣」をテーマとしたブログ、Lifehacking.jp 管理人として、仕事術、ライフハック、テクノロジー、文具、ソーシャルメディアなどについて執筆中。2011年アルファブロガー・アワード受賞。Evernote ライフスタイルアンバサダー。ScanSnapアンバサダー。この他のブログに、ライフ×メモ 、Climate+を運営しています。