The 4-Hour Workweek: 週4時間しか働かない仕事術 (3)

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昨日はドリームラインという考え方を使って、無茶なくらい大きな夢の実現のために必要なリソースの見積もりを行う話についてでした。

次の数章はこれらの夢の実現に向けてどのように空き時間をつくり、どのように追加の収入を得ていけばいいかについての実践的な話がかかれています。

おお、ライフハック的になってきたじゃないかと思うと、それがまったく逆です。ここには、どのようにすれば少ない時間でもっと仕事ができるようになるかといった、ふつうの意味での「仕事術」は書かれていません。最初の一行からしてはっきりとそれを表明しています:

Just a few words on time management: Forget all about it.

時間管理術について一言いっておこう:全部やめてしまうといい 必要のない仕事は容赦なくそぎ落としてゆく、斬新な考え方がここには書かれています。そんな数章を斜め読みでご紹介。

効率と効果

効率的に仕事をしても、それがさらに無用な雑用を増やすだけなら「効果的」とはいえません。ここでいう効果は、少しでもドリームラインの実現に向けた時間や副収入の確保につながること、という意味だからです。

著者の Tim Ferris はこの点を指摘した上で、無用なタスクはそもそも行わない、ひきうけない、時間を最低限しか充てないという哲学を厳格に適用すべきだとしています。

そのためには、やってくるメールをそもそも一日2回しか読まず (ええ?)、トラブルばかりであまり利益をもたらしてくれない顧客をこちらから断り (えええっ?)、最終的には社外から仕事ができるように周囲を説得、あるいは要求してゆく (おいおいおい….)というのが週4時間の仕事術の最終形だとしています。

いきなりそこまでいくことは出来ないにしても (あるいは今の仕事を続ける限り不可能にしても) まずは仕事をそぎ落とすことが第一歩となるのだそうです。

二つの法則を味方につける

パレートの法則は 80:20 の法則ともいわれていて、経済学者パレートが提唱したものです。ようするに全ての結果の 80% は 20% の原因から生じているというものです。この法則を厳格に自分の人生に適用して、自分のボトルネックを客観的に判断することを著者はすすめています。たとえば、

  • 自分の収益の 80% はどの 20% の仕事から得られているのか

  • 自分のストレスの 80% はどの 20% から生じているものなのか

といった感じです。そして、ある顧客との関係が最もストレスで全体の効果を下げているなら、おもいきってその関係を絶ってしまうといった発想につながります。ふつうのライフハックの考えかただと、8割のストレスを生じさせているその関係を、なんとか修復していってみよう、という方向で考えるのですが、Tim は逆の発想です。

もう一つの法則はパーキンソンの法則といって、「与えられた仕事の量は、わりあてられた時間をちょうど埋めるように膨張する」というものです。1ヶ月後が締め切りといわれれば、ちょうど1ヶ月後に仕上がってしまうという、あれです。

ならばこの二つの法則を逆手に使って、次のような仕事のアプローチが可能になると著者は指摘しています。

  • 重要な2割しかしないことで、時間を節約する

  • 仕事にあてる時間そのものを節約することで重要なことしかしない

何が重要かをより分けるために、「もし、あなたが心臓発作になって、命にかかわるので今後は一日2時間しか仕事ができないなら、何をするか?」、「2度目の心臓発作であなたは週に2時間しか働けなくなった。何をするか?」といった思考実験を試してみることなどが挙げられています。

情報ダイエット

これは私もいつも思うことなのですが、現在は情報があふれすぎていて、選択的に耳をふさがないことには、どうにも自分だけの時間もてないところまできています。Tim も同意見のようです。

彼は電子メールについては、1日に2回しかチェックしない、新聞、ニュース、テレビ、音楽ではないラジオ、無駄な読書、ウェブサーフィンなどはそもそもやめてしまうか、最低限の時間だけにとどめるべきだとしています。

ニュースを見ないというのはずいぶん思い切っていますが、「そもそもこの情報は自分にとって有益なのか?」、「この情報を自分は使うことがあるか?」という風に考えると、おのずと無用なものは消えていきます。asahi.com や cnn.com をみなくても実はそれほど実生活には影響がないし、探しているなら重要な情報はむこうから飛び込んでくるものなのだそうです。一週間だけでも上の情報全てから自分をシャットアウトしてみると、「自分にとって必要な情報はこれ」というように、情報を選択できるようになるのだとか。

ちょっと面白かったアドバイスは「面白くない本、映画、ドラマは途中でやめてしまう」というものです。マトリックス・レボルーションよりもひどい映画だと感じたなら、一刻も早く逃げ出せ、と。私はあれを割と楽しんだのですが。

で、何をするのか?

こうしてメールをそぎ落とし、仕事をそぎ落とし、そしてきっといくつか恨みも買って、空いた時間を何に使うのかというと、家族との時間、自分を成長させるための重要な時間、この本を読むための時間につかうのだということです。

「勤務時間中はずっと仕事をしていなくてはいけない」という思いこみを自分の中で殺して、20% の時間で 80% の効果をちゃんと確保しつつ、残りの時間はさらなる成長のために使うというのは、何度も繰り返しになりますが、ずいぶんと思い切った考え方です。

これをそのまま適用することはできないかもしれませんが、この仕事は重要なのか、この会議は重要なのか、この時間は自分にと、時間のもつ意味を常に問いかけているスタンスには共感を覚えます。これは、自分の生きる意味をいつも問いかけている姿だといえないでしょうか

本にはここで紹介した以外にも、電話ですばやく要点に入るための会話術、会議が始まる前にアジェンダを決めておく方法、仕事を上手に投げることで自分でやるよりも大きな結果をつかむ方法などについて書かれています。

ライフハック的な興味からいうと、本の前半までが一番楽しいですが、後半にもいろいろと参考になる点があります。あと2回にわけて、そのあたりを斜め読みしてみます。

(update: permalink に日本語入れたままでした。訂正して再投稿。ブックマークした方、すみません、すみません)

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。