[Habit1] 主体的な船長とそうでない船長の航海

handshake.jpg 経済産業省が最近とったアンケートで、企業が職場で社員に求める力として「主体性」、「実行力」、「課題発見能力」を挙げられていました。3つとも一言にしてしまえば、「主体的に行動する」ということになりそうです。

「主体性を発揮する」 “Be Proactive” というのは「7つの習慣」の第1の習慣でもあります。外からやってくる出来事に受け身に流されるのではなく、自分からルールを作る、自分から状況を作る、自分から立ち向かう、という行動原理です。

これは言うは易しで、自分もいつも周囲に流されてしまっては自己嫌悪になり、主体性をマスターするのはなんて難しいのだろうかといつも痛感しています。しかし逆の発想でいくと、主体性は 100% 自分だけで始めることができる習慣ですので、それこそ小さなハックからはじめて発展させてゆくのに最適な習慣でもあります。

これからしばらくの間、月曜日は Habit 1 関連に割り当てて、ネットで見つけた第1の習慣に関する記事やアドバイスを紹介してみたいと思います。今回紹介するのは proactive で検索して Google でもトップあたりに登場するブログ、Steve Pavlina.com の珠玉のエントリーから。

主体性のある船長とない船長

「第1の習慣」については詳しくは原典の本を読んでいただくのが良いのですが、かいつまんで書くと、「外からやってきた状況に対する反応を自分で選ぶ」ということに尽きるのだと思います。極端な例を持ち出すと、たとえばいきなり他人に激しく罵られたとして (外的な刺激)、それに対する反応 (怒る、逃げる、落ち着いて問いただす etc.)は自分で選び取ることができる、というのが「第1の習慣」 Be Proactive です。

ちょっとした出来事にたいする反応の選び方が、なぜゆくゆくは大きな話になって行くのかを、Steve Pavlina.com の記事は実に美しくまとめています:

If a reactive person were to captain a ship, the ship would flow with the currents. This person would be preoccupied with studying the currents, trying to predict where the ship will end up as a function of the currents. If the currents are good, this person is happy. If the currents are poor, this person feels stressed. On occasion this person might attempt to set a destination, and if the currents are good, the ship will arrive. But if the currents are poor, this person will bemoan them and give up the destination for an easier one.

もし受け身な人間が船の船長だったとするなら、船は海流に流されるだけで、その人は海の流れ(外的な状況)を読むのに忙しくて、船が結局はどこに流れ着くのかを予想しようとやっきになるだけでしょう。海流が良いなら、その人は幸せに感じるかもしれませんが、流れが悪ければその人はストレスを感じることでしょう。時としてその人は行き先を決めて海流に乗ってゆこうと考えるかもしれませんが、運が良ければ行き先に着くことができても、運が悪ければその人はその行き先は最初からいけないのだとあきらめて、次に楽な場所に漂着するだけでしょう。

逆に主体性をもってすべてに対応している人の航海はまったく違ったものになります。

If a proactive person were to captain a ship, however, the ship would go wherever the captain wanted it to go. This captain would still note the currents, but they’d merely be used for navigational purposes. Sometimes the ship would flow with the currents; other times it would steam against them. It matters little whether the currents are good or not; this captain will reach the intended destination regardless of the currents. The currents can only control the time of arrival and the exact path from starting point to final destination. But the currents have no power to dictate the final destination; that is entirely the captain’s choice.

主体性のある人が船長なら、船はその人の思うところに思うままに行きます。この船長も海流を読むことはするでしょう。でもそれは航海のためにです。流れは時として目的地に向かっているでしょうし、時として流れに逆らうことも必要でしょう。流れが良いか悪いかは、この船長にはあまり関係ありません。というのは流れがどうあれ、この船長は決めた場所に向かうからです。流れはその目的地に着くまでの時間と、経路を支配するかもしれませんが、この船長が決めた目的地を変えることはできないのです。

間違えてはいけないのが、「主体性を発揮」していればすべてがうまくいくわけではないというところです。ここで言うと、目的地がはっきりしていて、主体的に行動していても着くのは尋常でなく遅いかもしれないということです。では主体性が何の役に立つかというと、どんなに小さなことであっても自分の行動を自分でコントロールしているという実感を持てる点にあるわけです。

主体性は目的の成功を保証はしませんが、成功を準備することはできる。だからこそ、7つの習慣のなかでも最も土台に近い場所、最初の習慣として紹介されているのではないでしょうか。

さて、ここまで書いたことは能書きとしてはたいへんけっこうなのですが、こういう状態に自分をもっていくためのハックやテクニックはあるのでしょうか。来週からは自分の Proactvive 度のチェックを行った上で、「小さな選択」を選び取ることからこの習慣を身につけるためのハックを紹介していきたいと思います。

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。