Dave Winer氏の検索システムDaytonaが楽しそう
アウトライナーの開発やポッドキャストの生みの親として知られる Dave Winer 氏のブログがまた最近楽しそうなのです。
Sunday, December 12, 2021 | Scripting News
ずっと彼のブログを読んでいるフォロワーなら、彼がそのときにおける自身の情報整理の考え方に基づいてツールをアップデートして利用しているのを知っていると思いますが、ここ最近実装された Daytona という検索システムのおかげで執筆の様子が実に楽しそうなのです。
ここで先に説明しておかなくていけないのが、彼のブログはいま Drummer という、アウトライナーに基づいたメモアプリで作成されていて、そのアウトプットは当然彼が深く関わっていた OPML 形式(アウトライン・プロセッサ・マークアップ言語)で出力されています。
Drummerはツイッターでログインすれば誰でも使えるようになっていますので体験可能ですが、そこに彼が最近追加したのが Daytona と彼が読んでいる全文検索システムです。
そんなに多機能なものではありませんので、AND/OR 検索といったことはいまのところできない(?)ようなのですが、簡単なキーワードだったら瞬時で過去の記事から表示してくれます。
大事なのは、Dave が過去 4.5 年分のすべてのブログ記事をOPML化してこのDaytonaシステムから検索可能にしている点です。
なにかの話題について書くときに、瞬時にそれについて過去に書いた事例を引き出し、自分の思考を過去からたどりながら執筆できるのは大きな利点です。
Googleのサイト検索でもよさそうですが…正直な話、あの仕組みがちゃんとブログの中を有用な形で検索してくれることはまれに感じています。少なくとも、Dave が Daytona でやっているような厳密で融通のきかない検索のほうが、執筆の際には良いのです。
Memex メソッドの実装
この話は、ブロガーのコリイ・ドクトロウ氏が5月くらいに書いていた彼の執筆法についての記事に呼応しています。
The Memex Method | Cory Doctorow
彼はここで情報に対する反応としての「ノート」をいわゆる個人的な書付、伝統的にジョン・ロックが「コモンプレイス・ブック」と呼んだそれになぞらえて考えているものの、あえてそれをブログとしてパブリックにしてしまうことで転倒させてしまう方法について紹介しました。
情報集め、吟味して、公開するにふさわしいものだけを投稿するのではなく、まず自分の興味を掴んだものについてはブログにしてしまい、投稿された情報をパブリック・データベースとしてさらにその上に記事や本などを執筆するという手法をとっています。
ときには誤解や間違いを投稿してしまって恥をかくことがあっても、投稿することで自らに対して誠実でありうるというのが、コリイの考えかたです。
そうしてコリイの場合は過去20年近く、Dave の場合は過去4.5年のすべての考えがパブリックになっている状態でさらにそれを次のブログ投稿で洗練させてゆくという手法をとっているわけです。
ブログを、一種の Memex 記憶の拡張期としてつかっているわけです。
もともとブログというのはこうした考え方が背景にあったと思うのですが、SNS との関わりや、ブログ自体の変遷とともに軸足が変わっていたところもあったかと思います。
この重要性は過去に一度も薄れたことはなかったのですが、コリイとDaveという、いわばブログ界の重鎮が、あらためていまデータの可搬性と検索性を一体的にとらえて記事にしている点は注目すべきでしょう。
このブログの検索窓
このブログも、しばらく前に Wordpress をやめ、Hugo に移行したことですべての記事をMarkdownできています。データの可搬性はもうできていたのですが、実は検索の部分はいままでさぼっていましたので、これを機会に整備していきたいと思います。
全文検索(インクリメンタルサーチ)の機能を付ける | まくまくHugo/Goノート
Hugoでの全文検索についてはこちらの素晴らしき記事とコードがあったので、ひとまず試験的に入れてみたのですが:
あっという間に、基本的な検索は実現してしまいました。ありがとうございます!
過去の3000記事ほどを1秒で見渡せるのは、快感そのものですね。サーバーの方にこれを反映するのは、もう少し調整してテンプレートに混ぜたり、日付などを入れられないか試してからにしたいと思います。