シンプルな手帳の代名詞、「野帳」にビジネス向けの新ラインナップ

大学院時代、私は地理学・水文学の講座に在籍していたのですが、そこでは野外実習として長野県の街なかで調査をしたり、山の上で気象観測をしたりなどといったフィールドワークにもたびたび参加しました。

そこで先生たちが漏れなく使っていたのが緑色の表紙をした「野帳」、我々の用語だと「観測野帳」と呼ばれるノートブックでした。

固くて立ったままでも記入できる表紙、水に濡れても破れないページ、薄くてどこにでも入れて持ち歩ける手軽さのバランスが他にはない特徴で、一回の観測あたり必ず一冊を持ち歩いて、見たものや感じたことを最大漏らさす記録するように学生の私たちは訓練を受けました。

もともと測量士のために開発され、さまざまな現場で愛用されるようになったこの「野帳」に初めてのビジネス向けのラインナップが登場しました。

野帳といえばあの緑の表紙がトレードマークですが、ビジネスの現場では目立ちすぎる面があります。ビジネス向けに新しくなった野帳は、サルファーイエロー、グレイッシュブルー、ウォームホワイト、チャコールブラックと、落ち着いた温かみのあるカラーを採用しており、垢抜けた印象を与えます。

野帳といえば作図にも使用でき、罫線としても利用できる青い方眼ですが、野外では利点となるこの青さが普段遣いにはちょっと強すぎるきらいはありました。それなりに字を目立たせないと方眼に負けてしまうのです。

そこでビジネス向けの野帳ではグリッドのサイズはそのままに、色は薄いグレーに変更されています。これならば書いた字の方に意識が向きやすいですし、箇条書きのリストを取るのにも便利にみえます。

野帳の利点であり欠点は、そのコンパクトさゆえに40ページしか紙面がない点です。これはなかなかのバランスで、一つのフィールドワークや現場で捉える情報を書き留めるには十分ですが、普段遣いをして大量の情報を記録すると、何冊も利用するようになります。それもあって、私は野外観測では野帳を、ふだんはモレスキンを使うようになったという経緯があります。

ビジネス向け野帳に4種の色があるのは、たとえば1ヶ月に一冊といったようにどんどんと書き込んで、一年で4種3冊、合計12冊で記録を残すといったようにどんどんと使ってゆくことを想定しているように思えます。

小型のノートブックといえば、Dialog Notebook も人気ですが、こちらには格納用のボックスも最近発売しています。野帳にもそうした保存用の格納ボックスが生まれるといいかもしれませんね。

発売予定は4月28日。一冊の価格は240円(税抜)と手頃ですので、まずは4冊から使い始めてみてください。

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。