人生を変える小さな習慣
世界はどんどん良い場所になっている。ハンス・ロスリング「Factfulness」が教えるデータと向き合う方法

世界はどんどん良い場所になっている。ハンス・ロスリング「Factfulness」が教えるデータと向き合う方法

Summary:

知識をアップデートするのではなく、物の見方をアップデートする

元旦に電子書籍版の配信が始まった本書 FACTFULNESS(ファクトフルネス) は13問の簡単な質問と、著者ハンス・ロスリング氏の剣呑みパフォーマンスから始まります。

世界の貧困はいまどのような状態にある? いま世界でワクチンを摂取できているのは何割の子供? といったこれらの質問は、読者が正確に答えられることを期待して書いてあるのではありません。

むしろ、ひとまず先入観に従って答えた場合にどのような間違いをおかすのか、どのような偏りが私達の考えの中に潜んでいるかを知ることで、その先入観の源に遡るのが本書の目的だからです。

たとえば世界は先進国と、貧困に悩まされる多くの途上国にわかれているというイメージをもっているひとは、いくつかの質問の答えに驚くかもしれません。そこに、私たちの目を曇らせるさまざまな本能が隠されているのです。

知識のアップデートではなく、見方のアップデートが必要

著者のハンス・ロスリング氏は医師であり公衆衛生学者ですが、TEDの「魔法の洗濯機」のプレゼンテーションで世界的に有名になった人物です。

効果的な公衆衛生の政策や援助を立案するには、とにかく現場の状況の正確な把握が必要です。しかし多くの人は世界の貧困の状況や、技術発展の正確な状況をデータに基づいて理解していないことに氏は長く頭を悩ませてきました。

たとえば「世界は先進国と後進国に分かれている」という簡単化は無批判に受け入れられがちですが、データから見るとそれは正確ではありません。世界の大半はむしろ中間所得に属していて、それを単純に先進国と後進国に分断して考えようとするとさまざまな無理が生じます。

こうした「分断」が存在すると考えてしまうのは、データをちゃんとみていないからというのもありますが、人間の「ものの見方のクセ」でもあります。分断して考えたほうが楽だから、そうした間違った仮定をあてはめてしまうわけです。

そうした思考のクセは分断だけではありません。「世界はどんどん悪くなっている」というネガティブな観測や、「これまでこうなっていたので、今後もこの通りになるはず」という直線思考。あるいは「すべてはあらかじめ決まっている」という運命論や、原因が複合的な状況において存在しない「犯人」を探したりといったように、世界をみるときにおかしがちなクセは様々にあります。

本書はそうしたクセを一つ一つデータを検討することで洗い出し、先入観や偏りをなるべく避けるものの見方を教えてくれる珍しい本です。アップデートされた知識を与えてくれるのではなく、物の見方をアップデートしてくれるのです。

ハンス・ロスリング氏の人生とともに語られるデータへの旅

本書のもう一つの魅力は、講義を聞きに来た学生さんたちへのサービスに、サーカスでしか見られないような剣呑みパフォーマンスをやってのけるハンスの、奇妙で魅力的な生涯のさまざまなエピソードとともに、データの見方が語られている点です。

世界中を飛び回り、様々な地域で発生した疾病の対策のために手を尽くしたハンスの苦労と達観も垣間見えてきて、TEDの講演で私達が親しんだ彼のもう一つの顔を楽しむことができます。

本書の後半、おそらくはハンスの人生最大の後悔に違いない事件のエピソードが語られる部分では、私は涙を抑えられませんでした。ああ、そういうことだったのかと。世界をより正確な姿でとらえて、間違いをおかさないように努力するのには、そうした理由もあったのかと、納得ができたのです。

「正直にデータを見る」というのは言葉で書くのは簡単ですが、それは非常に困難な、不断の努力を必要とするものです。ある人の正直さが、物の見方として他の人の正直さと相容れないことだってあるでしょう。実際、本書 FACTFULNESS の中にあるデータの扱いにも、一部「トレンド端点の誤謬」に陥っている例を見て取れます。ものの見方は、完璧ではないのです。

しかし、本書で解説されているさまざまな人間生来の本能について学べば、自分のもっている偏見を疑い、より正直にデータをみるためのいとぐちがつかめるはずです。

そこに広がっている世界観は思った以上に明るく、希望に溢れていて、人間にとって未来はまだまだこれからなのだと感じさせてくれます。

それが、ハンスが私達に残した最後の贈り物なのです。

FACTFULNESS(ファクトフルネス)は日経BP社から1月11日に紙版が発刊予定で、こちらの手触りも素晴らしいのでおすすめですが、電子書籍版がそれに先駆けて元旦から読むことができます。正月を気持ちよくスタートさせるために、ぜひダウンロードしてください。

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著者
堀 正岳