ツイッターがライブ動画とイベントをタイムラインの最上部と通知に表示する試みを開始

ツイッターはこれまでもツイートの見え方をさまざまに変更してきましたが、そこにもう一つの改変がゆるやかに加わりつつあります。重要なニュースをタイムラインの最上部に表示させるという動きです。

すでに去年からアメリカではホーム画面の最上部にスポーツ関連の特設コーナーがハイライトとして表示されるようになっていますが、これが一般的なニュースにも拡大するということのようです。ここにはライブ映像が表示される確率が増え、関連するツイートもまとめられるようになります。

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ツイッターを訪問するとこのようにカード式に重要ニュースが表示され、タップすると関連する話題とツイートがまとめられているわけです。ワールドカップを意識して追加された新機能は、あきらかに試合をツイッターのなかで楽しんでもらうための工夫が凝らされています。

スポーツ以外にも、重要ニュースがあったさいには通知が表示されます。

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位置情報や、これまでのツイートの閲覧傾向などから通知が送られる内容は選定され、このようにツイートを追うことをうながされます。こちらをタップすると:

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やはりこのように関連のライブ、ツイートなどを表示するページへと遷移します。つまり、ツイッターは「誰をフォローしているか」によって世界が変わる、自分で自分のタイムラインを編集しなければいけない世界観から、誰でも似たような情報をみているメディア会社へと変貌しつつあるといってもいいでしょう。

パーソナライズされたニュースという聖杯

同様にアルゴリズムでニュースを配信する試みはFacebookが先行して洗練させ、2018年に入ってからはケンブリッジ・アナリティカ問題などもあって不信感をもって受け止められているという経緯があります。Googleも新しいGoogle Newsサービスを立ち上げて、人々がニュースをみる入り口を抑えるための戦略を展開しています。

いかにしてニュースのもとに人々を集め、収益化するかという問題はこれらの大企業にとって聖杯のようなものなのです。

ツイッターの場合は、多くの人がリアルタイムにつぶやいている世界で最もおおきな公共の発言空間であることを利用して、重要なニュースのもとに人々のつぶやきを紐づけたい考えのようです。

日本でいうと、有名なアニメ映画やスポーツの試合が行われる際にはタイムラインに一体感がうまれますが、それを日常的にサービス側で演出したいというのがツイッターの意図でしょう。

日本では表示の仕方が違い、このハイライト機能は検索画面のトップに限定されているものの、今後ホーム画面なども含めてUSと同じような表示になることが予想されます。

このことは、ツイッターが西部劇の荒野のような乱雑な場所から、ニュースを軸とした秩序の世界に移行してゆくことを意味していて、大多数のユーザーにとっては使いやすい印象を与えるでしょう。

しかし、なにが重要で、なにが通知に値するかをツイッターが決めることにつながりますので、情報ツールとしてのツイッターは公約数的な情報にしか出会えないつまらない場所になってゆくのではないかという危惧もあります。

Vergeの記事では、「ツイッターは自分がメディア会社なのか、SNSなのか、それともなにか別のものなのかわかっていないのではないか」という疑念ともにツイッターの担当者に「この新機能の名前はなにか?」と聞いたところ、すぐに返事が返ってこなかったことに驚いたという話を紹介しています。

ツイッターはいままでフォローする人と、フォローしてくれる人の網目で生み出される情報の空間でしたが、それがニュースや出来事という集合に吸い上げられてしまうと、それはメディア会社のコメント欄のような雰囲気にもなってくるのかもしれません。

件の担当者はVergeの記者の質問に対してきょとんとしたあとで、「新機能は、これが新しいツイッターだということです」と返事したそうです。

ツイッターだと思っていたものが、ゆるやかに変わりつつある、その兆候をいまわたしたちは目にしているのかもしれません。

(追伸)

https://twitter.com/mehori/status/1007651814148198400

もちろん、本場でもこのような意見はあるようです(笑)。

 

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。