速読のために一枚のカードを使う方法

はじめにことわっておきたいのは、これは速読といっても2倍や3倍速く読める方法ではありません。そうした方法はたいていなんらかの「読み」を切り捨てている傾向がありますので、ここでは触れないようにしています。

ここで紹介するのはふだん読書をする習慣があまりなく、いつまでたっても読み進まないことに苛立ちを感じている人に特に効果のある、読書に一定のペースを生み出すことによって平均速度を数パーセント向上させるという方法です。

このペースを生み出すときに邪魔なのが、英語ならば単語を一つ一つ目で追うという読み方であったり、日本語だと文字を一つ一つ見つめるという癖です。多くの人は、多少視界を広めに単語ならば複数個、日本語ならば一行の半分ほどを塊 = バッチで読んでゆくほうがペースが生まれ、理解力を犠牲にすることなくすばやく読みこなせます。

なぜこうしたペースをつくることが速く読むことにつながるかというと、無意識にいま読んでいる行の一つ前の行などを読み返してしまう regression 「回帰」という目の動きが発生しているからです。

これを防ぐために、FastCompany のブログで紹介されていた方法が、5x3インチのいわゆるインデックス・カードをものさしのように使うという手法です。

カードを当てる場所が重要

横書きの英語の文などを読むときに、私もおなじようにカードを使うことがたまにありますが、そのとき読んでいる行の下にカードを置きがちです。

しかしFastCompanyのブログ記事によれば、逆に読んでいる行の「上」、縦書きの日本語ならば「右側」に置くほうが回帰を防ぐことができるのでペース作りには役立つのだそうです。

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こうして2つの手をつかって読書ができるタイミングも限られていますが、自宅で毎日自分に課しているノルマ分をよむときに実際に試してみました。

日本でよく読まれている文庫本サイズならばコクヨの情報カード「シカ-30」のサイズを当てることによってちょうどよく行を隠すことができることがわかります。

実践してみると、なるほどすでに読み終わった行に目を戻したくなる誘惑があらかじめ封じられて、読んでいる際のワーキングメモリをより信頼するようになる傾向があることが感じられました。

小説だとこのワーキングメモリを使う意味はそれほどないのでカードを使うメリットはあまり感じられませんでしたが、新書のような本ならば自分の場合ペースを多少挙げる効果がありました。

逆に、段落ごとで理解を促すような難しい本の場合には、こうしたペース自体が不要で、かえってカードは邪魔だったこともあります。つまりこの手法は万能なわけではなく、一定のペースを生み出せる本においてそれを加速するのに使うのがよいということが言えそうです。

読書にペースを意識できるようになると、自然と速度がその本の難しさやテーマにあわせて調整されるようになってきます。読書のスピードにむらがあって気になっている人は、ぜひ試してみてください。

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堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。