「個人的な経験」を「価値あるコンテンツ」にするミニサイト術
個人ブログ界で私がひっくり返っても勝てないと常々思っているひとの1人、Wada-blogの和田亜希子さんが「ほったらかしでも月10万円! ミニサイトをつくって儲ける法」という本を出版されていて、その貴重な一冊を送ってくださいました。ありがとうございます!
この本、タイトルの「儲ける法」に気を取られてしまうと、よくあるマネタイズを軸としたブロガー本のような印象をうけますが、内容を読んでみると実はちょっと違います。
でもそれを理解していただくには、まずちょっと小話をしなければいけません
経験をコンテンツに変える
「先日家族と江ノ島水族館に行ったら楽しかったよ」 私が藪から棒にこのように書いても、あまり興味を持つ事はできないと思います。楽しそうですが、あくまでこれは個人の経験だからです。
しかし、「江ノ島水族館にはくらげのショーと言うものがあります。クラゲでどのようなショーをするのか、想像ができますか?」と言われたならどうでしょうか。先ほどとは違った興味が湧いてくるのではないでしょうか(江ノ島水族館には事実、クラゲのショーがありますがこれはまた別の機会に)。
この2つの表現には情報量の違いもありますが、より決定的には、後者は私の口を通して伝えてはいるものの、皆さんが活用可能な知識の入り口を示している点が違います。
個人の単なる経験を知識に変えるというのはこういうことで、和田さんの本は、さらにそれをコンテンツ化し、ミニサイトとしてまとめるかについての実践的入門書になっています。
ブログと違う、ミニサイトの考え方
和田さんのおっしゃるミニサイトとは、時系列で情報を提供してゆくブログではなく、特定のテーマについて情報を集約し、アクセスしやすくしてある、一度作ればあとはメンテナンスをおこなうだけのウェブサイトのことを指しています。
例えば和田さんのミニサイトで特に秀逸だと私がおもったのは「キューバ旅行情報館」です。ここには渡航する際にどのような手続きが必要なのか? キューバの歴史と見どころ、日本からどのように宿などを予約すればいいかといった、キューバに行きたいと思った人のためのすべての情報が揃っています。
本と雑誌が違うように、ブログとミニサイトも違います(もちろん二元論的に違うのではなく、その中間のはたくさんの例外を含みます)。しかし単純に比較するなら、ブログはアップデートして話題を提供し続けるメディアなのに対して、ミニサイトは完成品をデザインして提供するメディアという部分が大きな違いです。
そしてこの違いが、コンテンツをどのように作るかという根本部分に大きな違いを生み出すとともに、ブログを書いている人にも参考になるのです。
本書のほとんどは、「儲ける方法」よりも、ニーズの高いミニサイトをどのように企画し、コンテンツをもれなく作成し、取材して構築するかという部分に割かれています。そしてこの部分が月10万円どころではない価値のあるノウハウの宝庫になっています。
たとえば写真のように「水族館」をテーマにミニサイトを作るとした場合、エリア、対象、属性などといった切り口に対してどのような記事がありうるかを洗い出し、アクセスしやすいページ構成とナビゲーションを考えて、必要な作業を絞り込んでいきます。
これを、一文字も記事を執筆する前にやっているのが和田さんの恐ろしさです。
そうして作成した記事の構成案に対して、必要な情報と取材対象をしぼりこみ、サイトを構築していきます。
もちろん競合がいないように調査し、進捗管理をするとともに、キューバー旅行情報館のようなサイトの場合は実際に現地にいくことや言語の習得なども含めて和田さんは管理しています。
慣れれば小さいミニサイトは一日分の作業量でできるとおっしゃってますが、ここ、恐怖に震える場所ですからね…?
誰にでもできる…? いやちょっとまて
本書は、このように経験をコンテンツに変えるための作業について惜しげもなく作業の詳細を公開し、どの部分がハードルになるか、どの部分がもっとも価値を生み出すかについて解説しています。それが、コンテンツを生み出す立場としてブロガーにも、あるいは書籍などの企画をするひとにとっても、とても参考になるのです。
一方で、どの部分が「和田マジック」なのかを正確に見極める必要がある本でもあります。普通の人は、こうしたミニサイトをいくつも作ってポートフォリオを作成して、収入をバランスさせるなんてハードルが高すぎます。
私が和田さんと同じことをしたら、きっと旅の途上のどこかで体力切れで倒れているはずです。著者が、著者にとって最強のフィールドでミニサイトを作っているからこそ効果があるものでもあるのです。
しかし、全方位にレベルの高い知識や経験や行動力がなくとも、たいていの人はどこか特定の部分において、他者とは違う、他者に語ることができる言葉をもっているものです。それを見出してコンテンツにすることができるかが問題となるのです。
そして本書には、そうした「強み」を見出すためのヒントが散りばめられています。
コンテンツをつくるための十徳ナイフのような本書は、ブロガーや著者や何かを表現してみたいと考えているすべてのひとに衝撃を与えるでしょう。おすすめです!
[ ■ ほったらかしでも月10万円! ミニサイトをつくって儲ける法 (日本実業出版社)