生産性の高いひとはなぜ仕事術や習慣を常に変え続けるか

あの仕事術を試してみてはやめ、この仕事術をためしてみては次を探し…。こんなことを続けている人は、なにか一つの手法や習慣に集中することができない、「ダメ」な人なのでしょうか?

Fastcompanyのブログで、条件付きではあれど、それはむしろ逆だという記事が掲載されていて目を引きました。仕事上の手法や取り組み方を常に見なおすのは、むしろ生産性を見直し続け、変化し続ける現場にもっとも合った方法を探す人に特徴的な行動でもあるのです。

これに気づいたのは、The Power of Habit(邦題「習慣の力」) の著者として有名な Charles Duhigg さんで、彼は著書を執筆中に、強固な習慣をつくってそれに厳密にあわせて仕事をする人のほうが生産性が高いのかと思ったら、どうも逆のようだと気づいて驚いたのだと言います。

Instead of letting habits, routines, and best practices rule their day and put them on autopilot, highly productive people change, and even overhaul, their systems on a regular basis whether they need it or not.

生産性の高い人々は習慣やルーティン、あるいはベストプラクティスに一日を任せていわば自動運転で作業をこなすのではなく、むしろその必要がなくても取り組み方を常に変化させ、ときには完全に見直すことさえするのです。

つまり、どこかにあなたを完全無欠の生産性の高い超人に変化させる ToDo 管理サービスがあったり、仕事術があったり、考え方があるわけではなく、むしろ現状で壁となっている部分を乗り越えるために常に模索していることが生産性を生み出しているという風にもいえます。

たとえば GTD を始めてみて、それに慣れてある程度の仕事の効率化を実践することができるようになったら、その考え方をベースにいま困っている部分を調整するために別の手法を始める。それが自然なのです。

これは、特に自分は仕事が苦手だと自覚があるひとにとってよい話で、苦手だからこそ常にやり方を模索するところに最適化の糸口があるわけです。

逆に、言葉は悪いですがこれは「仕事術バカ」の状態になってしまうことへの警告でもあります。名画を描いた絵筆に秘密があるわけではないのと同じくらいに、仕事術そのものに何らかの魔法があるのではないということです。

あいまいなイメージを現実に

テクニックは存在します。でもテクニックを使うあなたと、解決すべき問題とのあいだのとらえがたいもやもやとしたものを現実にするところに、仕事の真価はあります。

この話、実はライフハックや仕事術の根っこの部分にあるのに、あまり語られないことだったりもするんですよね。

道筋がみえているなら、あとは手続きだけになるのに、道筋をどのようにしてみつけるのかというところに、苦しみがあるわけです。

今週末に迫りましたが、8月28日のイベントでは特にこのもやもやとした「アイデア」を形にするときのツールの話に特化してお話をしたいと思っています。

それは Scrivener を使えばいい、Ulysses を使えばいいといった話ではなく、まだ呼び表すことができないものはどのようにして捕らえればいいのだろうかという話題になるはずです。

まだ若干ですが残席が残っていますので、よろしければぜひ!

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。