カレンダーが長期的な目標の管理に向かない理由
「予想どおりに不合理 」のダン・アリエリー先生が、Business Insider の動画で、なぜカレンダーが予定の調整には便利でも、1ヶ月先、数カ月先、あるいは来年の目標管理には向いていないのかについて説明しています。
いつもながら、どこかイタズラっぽい表情を浮かべて先生が説明するのは、カレンダーという器の限界、未来という時間について私たちがもっている思い込み、そして感情的な重み付けの三つについてです。短い動画ですが、理解すると時間管理についてけっこう身につけるのが難しい肝の部分が会得できます。
カレンダーの限界
まず、当然のことなのですが、カレンダーは一日、半日などといった捉えやすい時間を単位にしていて、そこに会議などといった1-2時間の予定を埋めて時間を管理するのに向いています。忙しい毎日を管理するのが、カレンダーの第一の目的だからです。
しかしそれがまさに、カレンダーで長期的な目標を管理できない理由だとアリエリー先生はいいます。「カレンダーは便利だけれども、なにもかもを書くことはできない。なので、書くことができるものが優先されてしまうのだ」。
ここに私好みの素晴らしい言葉が登場するのは、“We are what we measure” 「私たちは、私たちが測定しうるものになってゆく」というものです。1-2時間の会議ばかりしか意識していないなら、会議が人生をつかさどるようになります。だから、こうした雑事と、重要な目標の時間を実際に測定してバランスさせることが必要になるわけです。
長期の目標を、実践可能な「アクション」にせよという普遍的なテクニックも、同じことを別の言い方をしたものだといえそうですね。測定しうる、カレンダーに書き込める単位にまで細分化することが、長期の目標をそもそも進行可能にしてくれるというわけです。
未来への不合理な感覚と感情
アリエリー先生がさらに指摘するのは、「未来の時間について人間は甘い評価をする」という点です。実際には1年後の今日も同じくらいに忙しいはずですが、来週に予定をいれるのと、1年後に予定をいれるのとでは、1年後の方が時間がある気がしてしまうのです。
これを回避するために、どんな長期的な目標でも「来週実行するとしたら、そのためにいまある予定をキャンセルするだろうか」という思考実験をすすめています。来週のあの飲み会にゆくのは楽しそうだけど、それとあのプロジェクトを進めるのと、どちらがいいだろうか? と試しに考えて見るわけです。
「いつかやる」と考えていることを、とりあえず来週にもってくることによって未来の空き時間の幻想にダウトをつきつけるというテクニックといえそうです。
その結果、キャンセルすることで心に「ああ、キャンセルできてよかった」という感情が沸き起こる種類の予定があります。そうした予定は、どんどんとキャンセルして、遠い未来に「いつかやる」と思っていたことを引き寄せて考えてみること。これがアリエリー先生のおすすめです。
実際に時間が過ぎて、あとになって思い出すのは「どれだけの雑用をこなしたか」ではなくて、どんな思い出を作ったか、どんな仕事をしたかといったことだったりします。これらのテクニックを使って、忙しい現在をあるべき未来と引き換えてゆくという考えかたを身につけてみましょう。
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