Periscopeの生放送が、権力へのチェック&バランスとなる
歴史はかつて、伝聞と書物によって書かれました。やがて写真がその証言者となり、テレビが、いまではツイッター、携帯電話の動画もなにか事件が起こった時にはそれを瞬時に大勢のひとに伝える役割をもっています。
そこに、Periscope などといった携帯電話による生放送アプリが加わりつつあります。以前、パリのテロ事件が発生した時にも同時多発的に Periscope 動画が現地の様子を伝えてくれたのですが、今回は現場にいる当事者による放送です。
議場の床から、全世界に生放送
今回話題になったのは、オーランドにおいて49人の命をうばった銃撃事件に端を発した、アメリカ議会における銃規制の議論でのできごとでした。
まず基礎情報として、アメリカの上院は全米ライフル協会からの膨大な資金提供を背景に銃規制に消極的な共和党によって支配されています。先週、一人の議員が議事進行を妨害するための15時間もの長い演説を敢行し、銃規制に対して採決を要求するというできごとがありました。
この策は功を奏して、採決自体は行われたものの、テロリストの疑いがあるひと、精神病の既往症がある人への銃の販売を規制する法案は否決されるという結果に終わりました。
すると今週になって、公民権運動でも活躍した John Lewis議員を中心とした議員らが議会の床に座り込み、議事を妨害して新たな銃規制法案の採決を要求し始めました。
Call @SpeakerRyan and demand he give us a vote! @RepDuckworth @repjohnlewis pic.twitter.com/WL9mG7i5RY
— ((David Cicilline)) (@davidcicilline) 2016年6月22日
ところで議会のこの様子は、C-SPAN という政治専門ケーブルネットワークによって中継されていたのですが、この放送は議会、つまりは現状では共和党議員によって管理されているため、議会の混乱を国民にみせないために映像がカットされてしまいました。すると、床を占拠している民主党議員らは、Periscope、SnapChat、Instagram を使って独自に議会の様子を生放送で伝え始めたのです。
Watch our remarks live on @periscopeco:#NoBillNoBreakhttps://t.co/9Xlut2A1mj
— Rep. Scott Peters (@RepScottPeters) 2016年6月23日
さて、私はアメリカでいうところの民主党よりですし、銃規制にも賛成なのですが、それは横においておいてもこれはソーシャルメディアの活用方法としてとてもおもしろい事例だと思います。
法案を書き、採決を行う議員たち自身が、政治的主張として Periscope を利用しているわけで、いわば当事者が直接声を伝えているわけです。しかも Periscope はもう動画をアーカイブするようになっていますので、これはそのまま歴史の証言として機能するわけです。
C-SPANが切られたなら、言論は自分の手で広めてしまえばいい。その力が、政治家だけではなくてテクノロジーをもっているすべての人に与えられているわけです。完全に公平で客観的な視点はありえませんが、情報を伝えることが以前はできなかった場所に伝える方法が生まれたというのは、権力や言論においてのチェック&バランスの機能を果たせるということなのです。
また、今回の議会選挙を床から伝えている議員たちが笑顔だったり、活発にソーシャルメディアで意見を述べている様子は、数年前の Occupy Wallstreet 運動を彷彿とさせて、すごいイメージ戦略にもなっているなと思います。これが自然発生的に生まれるのがすごい。
議会選今日はまだつづいているようですので、その様子を #NoBillNoBreakハッシュタグで追っておこうと思います。
(追記)
とある議員がミーティングをしていたら、議員の母からの「なんであなたは床に座ってないの」というメッセージがやってきて、それを目にした議員が議場に飛んでいったというツイートも大きな話題になっていました。
見せ方も上手だなあ。
So I’m meeting with @keithellison. His scheduler walks in and hands him this note. Meeting ends :) #NoBillNoBreak pic.twitter.com/JwnusZKZuo
— Trita Parsi (@tparsi) 2016年6月22日