Evernoteのプランが大幅に改訂。詳細と無料ユーザーの今後
8周年のめでたい雰囲気に冷水を浴びせる感じではあるのですが、Evernoteから大きなプラン変更の知らせがやってきています。
この記事は余計な描写がたくさん入っていて読みにくいので、骨子だけ紹介すると 1. 無料ユーザーのEvernoteの使用方法に制限が加わるという点と、2. Evernoteプラス・プレミアムユーザーも若干の値上げが行われるというものです。
細かい内容と、回避方法、そして私の個人的感想についてまとめておこうと思います。
「Evernoteベーシック」ユーザーの同期は2端末のみに制限
まず、無料ユーザーについて。Evernoteはフリーミアムモデルの代表的存在といわれていて、無料のユーザーも容量や機能に若干の違いはあるものの、Evernoteを自由に利用することができました。
しかし、今回の改訂で「Evernoteベーシック」でノートを同期して使える端末数は2台までとなります。これは、手元にデータをダウンロードして利用する「公式クライアント」についての制限ですので:
-
ウェブ版のEvernote(これがけっこう便利なんです)は対象外
-
APIを利用するサードパーティーのアプリは対象外
となっています。
2台までというのはなかなか大きい制限で、次のような組み合わせが考えられます。いちばんありがちなのが、自宅と職場のパソコン、あるいはMacとWinマシンにクライアントをインストールしてEvernoteを利用しているケースですが、このような構成で使っているEvernoteベーシックユーザーは、スマートフォン、タブレットで公式クライアントは使えなくなります。
「うわ!たいへんだ!」と思うかもしれませんが、たいていの情報入力はEvernoteクリッパーで、そして普通は検索と閲覧くらいしかしないという人は、ウェブ版を活用することで回避することが可能です。たとえばスマートフォンを使いたいなら:
このように、どちらかのマシンはブラウザ版だけを使うようにできます。また、どうせ自分は情報を入力することが多くて、クライアントはあまり使わないというのなら割りきって以下のようにできます。
大きな変化になりますが、これは「無料ユーザーの利便性を減らしてやれ」という施策というよりは、同期するマシンが1台ふえるたびにその間の同期のための通信量はすごいことになりますので、ユーザーが1億人もいるサービスとして、そろそろ限界だったというのがあるみたいです。
あと、ほとんど関係ないとは思いますが、これまでプラス・プレミアムユーザーむけだった「モバイル版アプリにロックを追加」という機能が、Evernoteベーシックでも利用可能となりました。
一応回避策もあるわけで、こうした端末利用制限が痛いと思えるほどEvernoteを使っている人なら、これがEvernoteプラスに移行するタイミングである可能性もありますね。
Evernoteプラス・プレミアムユーザーにも値上げ
今回の改訂で、Evernoteプラスは月額 360円または年額 3,100円(+55%)、Evernoteプレミアムは月額 600円または年額 5,200円(+30%)の値上げとなりました。プラスの値上げきつい。ロック機能がベーシックでも利用可能となって事実上価値が目減りしての価格上昇きつい。
今回の価格改定について、Evernoteのなかのひとの説明をうけたところによると、いくつかの要因があります。
-
Evernoteプレミアムについては、これまで価格改定を行っておらず、ユーザーの拡大や為替変動等によってけっこう維持するのが大変だった
-
Evernoteが存在する国同士でも差があったり、高かったり安かったりといったことがあったので今回、個別に検討した結果日本では価格が上昇することになった
という点です。そう、前回Evernoteプラスが新設された際は、プレミアムは据え置きだったんですよね。
得か?損か?あたらしいEvernoteのプランで何が変わったのか
とはいえ、料金が据え置きでも相対的に安いプランができたこと、Evernote FoodやHelloやSkitchの一部バージョンが廃止されていろいろと価値が目減りしている中で、2015年5月からたった一年での価格改定は不安になります。来年、同じ話をしていないとも限らないわけですから。
この新価格については8月15日から順次、概要ユーザーにはメールで連絡が入り、相対的に安い移行期間を経て、新価格になるとのことです。移行措置については、まだ詳細がわかっていません。
Evernoteから別サービスに移行すべきか?
Evernoteコミュニティーリーダーである私ですが、今回の価格改定についてはポジティブに語ることはあまりできません。
中の人が頑張っているというのはよくわかります。ニュースになりにくいのですが、Evernoteクライアントの同期スピードは長年のうちに向上していますし、同期エラーもかなり少なくなりました。アプリがクラッシュしても下書きがちゃんと残っている可能性が一番高いのも他のメモアプリじゃなくて、Evernoteであるのも知っています。ウェブ版だって使ってみてください。あれはいいものです。
しかし今回の改訂で、ほかのサービスに移行したほうがよい人が出てくるのもしかたのないことでしょう。数パターンにわけてみます。
1. どうしても無料で使いたい:OneNoteへ移行
他のアプリやサービスに課金しており、利用頻度が少ないのでメモアプリには課金したくないというユーザーは OneNote がよい代替となるでしょう。やはり細かいところが、Evernoteほど使いやすくなく、私もなんどか試してはいてもなかなか使いづらいのですが、選択肢としてはまずこれになります。いまなら、移行ツールもあります。
EvernoteからOneNoteに移行するツールをマイクロソフトが公開
ただ、OneNoteが今後も完全無料であり続ける可能性は低いでしょう。
2. どうしても無料で使いたい:OSXメモアプリへ移行
もう一つの選択肢として、macOS に名前が変わる予定の OS X の「メモ」アプリがあります。iCloud などの利用の必要がありますので容量しだいでは完全に無料とはいえないかもしれませんが、Mac を利用している人ならばすぐに使えますし、同期もなかなか良好です。
もう簡易Evernoteと言ってもいい、OS X El Capitanの「メモ」アプリ
macOS Sierra ではメモに共有機能が付く予定と言われていますので、これで Evernote に可能なことはだいたいできるということになります。
3. Evernoteプレミアムからプラスにダウングレード
Evernoteをやめるところまでいかないが、プレミアムからプラスにダウングレードというひとも多いと思います。まず、ノート1件あたりの容量が200MBから50MBに縮小、月間アップロード容量も10GBから1GBに減るのが最も大きい違いです。あとは:
-
ファイル内の検索機能
-
PDF注釈機能
-
ノート履歴
-
ノートをプレゼンテーションモードに変換
-
関連コンテンツの表示
-
名詞をスキャンし、デジタル化
という機能が、プラスでは使用できません。まあ、容量の部分さえ納得できるなら、OS やスマートフォンの機能で代替できるものばかりといってもいいでしょう。
Evernoteプレミアムを本当にプレミアムにしてほしい
さて、これで今回の改訂についてはおおむねまとめられたと思います。自分の使い方なら、ウェブ版を援用して無料のままでいけるという人も、プラスに移行しようという人もいるかと思います。
最後にちょっとだけ、個人的な意見を加えるとするならば、今回のこの改訂は正式に、Evernoteがフリーミアムモデルから脱却する一歩なのだろうと思います。
フリーミアムモデルは、無料のユーザーのうち数%がプレミアムに移行するだけで維持可能なビジネスモデルでしたが、小規模なサービスならよいとしても1億人ものユーザーをもつEvernoteについてはスケーラビリティーの観点で無理があるのではないかというのは、指摘されていました。今回はそれが現実になったといえるでしょう。
その一番の影響をうけるのは無料ユーザーです。一度情報をいれれば、どこでも閲覧可能だったEvernoteの本質が、2台までという端末制限を受けますので、無料ユーザーと課金ユーザーとのあいだでは、Evernoteというサービスに対して抱いているイメージ自体に裂け目が生じるのです。
価格が上がったとはいえ、現在 Evernote と同じ程の利便性や生産性を提供できているサービスは他にありませんので、ある程度は仕方がないことだと思います。私はプレミアムユーザーであり続ける予定です(Evernoteコミュニティーリーダーですが、無料での提供はうけていないのです)。
しかしそれならば、Evernoteプレミアムユーザーに、この数年の停滞を忘れることができるくらいの、プレミアムな利用価値を提供してほしいというのが正直な願いです。
状況は、2011年に以下の記事をかいた頃に逆戻りしていると思います。大切で忘れたくない情報はどんどんとEvernoteにたまっているのですが、その自重によってしだいに利便性が悪くなっているのです。
象は羽ばたけるか。Evernoteの未来への漠然とした不安と期待
先日Evernote CEOのクリス・オニールと話した際も、これは解決すべき問題だという点で意見が一致したように思います。この方面でのEvernoteの次の一手に期待しています。
がんばれー。