4K動画とVRコンテンツに対応した新しいアドビ Premiere Pro CC
Adobeがこの初夏にリリースを予定している Adobe Creative Cloud 動画オーサリングツールの新機能について、記者発表を行いました。
コーエン兄弟による5月に上映が予定されている新作「ヘイル・シーザー!」の先行上映をともなう珍しいタイプの発表会で、「コーエン兄弟、見ますよね?」という担当者のお誘いにほいほいとつられて参加してきました。
なぜ上映会をともなうのかというと、この映画、全編が Adobe Premiere Pro CC で編集されているからなのです。
4K、8K動画にVRコンテンツ
「ヘイル・シーザー!」だけでなく、R指定映画として興行収入の記録を塗り替えた「デッドプール」など、Premiere による映画製作は増えつつあります。映画だけでなく、ソーシャルメディアむけの動画コンテンツや、VRコンテンツなど、動画を編集するニーズは高まる一方です。
今回のアップデートによって、Premiere では膨大な容量になる 4K 動画や、Red Weapon の 8K 動画などをバックグラウンドで読み込みながら作業を継続できる「インジェスト設定や」、高解像度の画像を編集時には低解像度にするといった機能によって、MacBook Pro であっても作業可能になっています。
また、VR 画像も、両目でみて現実感を与えるためには 4K 並の解像度、左右の目への個別の対応など、容量的にも作業的にもチャレンジングな編集が求められます。
これについても、Premiere では球面上にゆがんだ画像を「VRビデオモード」で平面上に投影して編集作業をおこなうことができるだけではなく、立体視の設定なども含めた作業ができます。
拡張された Lumetriカラーツールの「ホワイトバランスセレクター」を使えば、スクラブしている動画上で選択した箇所にあわせてホワイトバランスをリアルタイムに変更できますし、「HSLセカンダリーカラーコレクション」をつかって選択した色範囲を動画上で変更して青い空を火星の錆色に変えてしまうこともすぐにできます。
映画編集における Premiere
発表会では、「ヘイル・シーザー!」の編集に携わっていたコーエン兄弟のメイキング画像も紹介されていましたが、二人がフィルムで撮影した素材をデジタル上にとりこみ、フィルム時代を髣髴とさせる手作業でつぎつぎと編集してゆく様子が、なかなかに痛快でした。
二人はいまの映画監督にしてはめずらしく、すべてのカットを撮影してから編集をあたまから開始して最後までやるという協力作業で行います。カットを探したらベルを鳴らして編集を始めるなど、その楽しげな様子は Adobe ブログにも動画で紹介されていますのでどうぞ。
「全素材にIDを割り振ってくれるから、フィルムをゴミ箱から探さなくてよくなったよ」と冗談をいいながらも、デジタル時代だからこそできるような、二人の会話シーンにおける人物Aの演技はテイク1から、人物Bの演技はテイク2からクリップしてつなぎあわせるといった作業をさりげなく紹介するのは舞台裏がみえて興味深いものです。
私も最近 Podcast 編集のために Adobe Audition を使い始めましたが、次は動画の編集も学んでみようかと思います。そして Creative Cloud なら、すぐに Premiere が使えるわけです。夏にはこの新機能も手元に自動的に届きます。
ソフトウェアのサブスクリプションは異論も多いですが、これほど大規模な製作ツール群だと意味が強まりますよね。
さて、肝心の「ヘイル・シーザーは」どうだったのかというと、これがまた映画好き、しかも1950年代の黄金時代の映画を見ている人にはご褒美のような作品でした。それについてはライフ×メモのこちらの記事で紹介していますので、ぜひご覧ください。