「もっと時間があれば」は幸せの公式の半分にすぎない
多くの人が働き過ぎです。仕事は充足感を与えるものかもしれませんが、その割合があまりに大きくなってくると、仕事とプライベートの時間のバランスが崩壊します。
ここで、「だからこそワークライフバランスを!」という話になりがちなのですが、New York Times の記事が、単に仕事の時間をそぎ落として自由な時間を作るだけでは幸せの度合いが増えないという研究結果を紹介しています。「自由時間の量が問題なのではない」というちょっとドキッとする題名のこの記事は、時間の社会性について問いかけています。
You Don’t Need More Free Time | New York Times
二つの社会心理調査
この研究者は、「幸せの度合い」あるいは生活における「充足度」の指標をたてたうえで、調査対象者の日常の時間の使い方に対してそれをプロットしてみました。結果は、多くの人が月曜から木曜にかけて多くのストレスと緊張を感じ、仕事が少なくなる金曜日から週末にかけて開放感と幸せを感じる傾向があるという結果になりました。ここまでは普通です。
しかし同じ結果は、失業中の人にも当てはまったのです。失業していて、相対的には時間がある人も、月曜日から木曜日にストレスと緊張を感じ、週末に幸せのレベルが上がっていたのです。
そこで、時間の内容を細分化してどうしてこのような結果になるのか二つの目の調査を行ったところ、週末における「充足度」の半分は社会性の高いアクティビティと連動していました。つまり相手がいるような活動が牽引していたのです。
失業中の人の「充足度」が平日に下がっていたのは、時間が空いているからといっても、誰かと何かをするわけではない、「孤独なボーリング」状態が生み出しているものだとこの研究者たちは推測しています。日本語で言うなら「一人焼肉問題」といってもいいかもしれません。
人との交流チャンネルを確保すること
この結果は、単純に仕事時間を減らしたから幸福度が上がるのではなく、周囲の人といっしょになにかをできる時間がなければ、あまり変わらないという、すこしげんなりする結論を示しています。
ただ、この結果を逆手に取ることもできるかもしれません。つまり、空き時間が増えそうにもないならば、できるだけ誰かと会う時間にそれを割り当てることにする、といったようにです。
あるいは、直接あえないまでも、常にやりとりをすることができる LINE グループを開いておいて、常に日々の情報を交換するだけでも、そうした人との交流時間にプラスの効果はあるでしょう。
「自由時間の量が問題なのではない」というのはもちろん言い過ぎなのですが、時間が極限まで絞られている人が、少ない自由時間を何に当てることでバランスをとれるかという示唆を与えてくれる調査です。