予約投稿や継続課金マガジンに対応した「noteプレミアム」

世界のMedium、日本のnoteといっていいくらい、独自性の高いコンテンツ・プラットフォームに成長してきたnoteに、久々の大型アップデートがやってきました。月額500円の有料コースとなる、「noteプレミアム」です。

予約投稿、コメントの on/off、継続課金マガジンなど、これまでブログで当然できていた機能をとりこみつつ、ブログではなかなか難しい「定期購読」のモデルを混ぜるなど、プラットフォームとしてのポジションをさらに固めつつあります。

どんなコンテンツをnoteに書けばいいのでしょう? どんな人がnoteでコンテンツを売ることができるのでしょう? 新機能をみながら考えてみました。

ブログでもできたこと

noteはブログではありません。ブログ的ではあります。でもブログとは明らかに違います。

たとえばnoteにおけるコンテンツは、つぶやき、テキスト、イメージ、サウンド、ムービーと、軸足をさまざまにとれるように設計されています。テキストを中心にしてそこに音声をはりつけるのではなくて、音声が最初からコンテンツとして流通しているのです。

でもブログ的に使うことも可能で、今回の note プレミアム(有料、月額500円)はいくつかのそうした機能を実現しています。

skitched-20160302-150826

予約投稿は、先にコンテンツを作成しておいてリリース時間にあわせて公開するといった使い方ができますので、タイムリーな情報に使えます。プレスリリースのような時間に注意が必要なコンテンツにも使えますが、音楽グループがライブ中にアナウンスがある際に、時間にあわせて情報をアップするといった使い方もできます。

コメントの on / off 機能は、もちろんコメント欄が暴走してしまうのを防ぐために使うこともできますが、一つの投稿ではまだ結論をだしてもらいたくない、複数のコンテンツのシリーズになっているようなものに対して適用するのもいいでしょう。

note はブログとちがってすでに人がいる輪のなかに、ソーシャルのなかにコンテンツを投げ込むイメージがありますので、なおのことこの機能はプレミアムに位置づけてある意味があります。また、note プレミアムができたことで、今後の機能追加は無料版とプレミアムで差をつけながら投入されることも予想されます。

ブログとは明らかに違うこと

noteにはしばらく前から、コンテンツを一つのまとまりにする「マガジン」機能が登場しています。これはすべての投稿がストリームにのって流れてゆくのをせき止めて、一つのテーマで集合をつくるとともに、マガジンを単位に販売も行えるようになっています。

このマガジンの数には限りがありましたが、note プレミアムによって大幅に上限が増えました。

skitched-20160302-152852

また、審査制ではあるものの「マガジンの定期購読」も行えるようになっています。売り切りではない月額課金制のマガジンができたということは、ファンクラブのような継続的な読者との関係を構築することも可能になるわけです。これは本当に大きい。

ブログにおける読者との関係性は、RSS やソーシャルのフォローといった形をとっていて、著者と読者の結びつきとしては弱いものがありました。いえ、昔は強いこともあったのですが、次第に変わった部分でもあるのですね。

ではどのような人が、note にコンテンツを作るとよいのでしょう? どのような活動の仕方があるのでしょう?

noteにおけるコンテンツ

一つのありかたは、note だけで活動をして、フォロワーを集めるということが考えられます。Instagram だけで活動している人、Pinterest だけで活動している人もいるわけですから、可能ではあります。

しかし読者の数がある程度 note のユーザー数に依存しますので、次善の策としてはブログや、他の媒体、ソーシャルメディアを平行して運営して、note はその一つとして成長させるということが考えられます。

note はフォローしている人、フォローされている人の関係性が強いので、ブログに比べると「個人の声」を重視したコンテンツ、あるいは画才、音楽の才能など、属人性の高いコンテンツのほうが親和性が高いというのもすでに数多くの例が見られます。

課金コンテンツについてはどうでしょうか? これはもう少し複雑で「課金しないと読めない」という構造があるからには前提として「この人はこうしたものを書く人」だという情報が課金コンテンツの外側になければ、読者としては困ってしまうという側面があります。

一方で、すべてのコンテンツが無料ではなく、無料と課金とで凸凹させることができることができるのは、つくり手として面白い網目を編むことができます。これがブログとの決定的な違いです。これについてはネタフルのコグレマサトさん(@kogure)、みたいもん!のいしたにまさきさんと連載した「交換ノート」でコグレさんが触れています。

PVと違う評価軸が得られるということに関しては、これは投げ銭や記事に対するアワードなど、いくつかの取り組みが行われてきました。しかし、実際に書き手ではなく記事を評価するというのは、なかなか難しいんですよね。そこで、一つの記事に対して、有料がありやなしや、というのが判断できる、「note」というのは面白いと思った訳です。無料コンテンツもある、しかし中には有料コンテンツもある、その有料コンテンツの中から課金するかどうかを決められる、という場は、あるようでなかったのではないでしょうか。払う方も払われる方にも、かなり敷居が低くとっつきやすいのです。言い換えれば、実験しやすいということでもあります。

交換ノート09:なぜ「note」が面白いのか?ここらで軽く整理してみる

評価軸が違って嬉しいのは読者の側も同じです。私は finalvent さんの日記を楽しんで読んでいますが、そこには「内容な日記的なエッセイです。有料にしたのはコンテンツの価値というより、読む人が限られるだろうというだけのことです」と、およそ普通の売り物ではみることのない投げ出すような説明がされています。

でもそれでいいのです。読者としては、finalvent さんが何を書くのかに興味があって、それを最前列でみるために木戸銭を払っているにすぎないのですから。これも、ブログとは少し違ったコンテンツの流通方法です。感情がこもった流通といってもいいでしょう。finalvent さんなどは「考える生活」をコンテンツ化する技巧をもっておられる方ですので、これが可能なのですね。

一方で、すべてのコンテンツが課金になっていて paywall の向こう側にあるのでは、note の note らしさ、つまり人の輪のなかにコンテンツが放り込まれるあの感じは失われます。個人のレベルでも、note 全体のレベルであっても、バランスは重要なのです。

これから note で何かをかいてみようという方は、この「コンテンツ化」という部分と「どこから読者を誘導するか」という部分に力点をおいて考える必要があるでしょう。課金コンテンツであれ、そうでないものであれ、ただの情報でしかないものを消費可能な作品にするセンスです。ブログが往来なら、ここはほホールやライブ小屋というわけです。何を演じ、誰がやってくるのか。それがライブの成否を決めるのです。

この温度差や、凸凹さを意識して長期的にコンテンツを生み出せる人には、note は向いているのでしょう。

まとめ

というわけで、Medium が純粋にロングフォーム工場となりつつあるのに対して、note はもっと多様な世界観を構築しています。これはブログ書いている人だけでなくて、さまざまなコンテンツを生み出せる人にとって入り口が広がったと考えられますので、期待できるのではないでしょうか。

私はというと、いまさまざまなレベルで自分の書くものに温度差を生み出す試みをしています。検索エンジン経由で誰がきても大丈夫なように書くブログ、ここで扱う話題が好きな人にむけてもっとディープな話題を扱うニュースレター、といった具合にです。

note ではもっと私信めいたものを書いてみたいと思っています。私と同じようなひとを励ましたり、そんな人に向けて夜中で一人書く手紙のような、どこにも公開していなくても、その人に届きすればよいものを。よければ私のアカウントをフォローしていただければ、近いうちにお知らせできるのではないかと思います。

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。