科学の力で世界を変える。3Mがインフラの縁の下で力を発揮する3つの例 #3mjp

科学の力で、世界を変える。かっこいい言葉ですが、これを自信をもって言える企業はそんなに多くはありません。

なぜなら、単に科学技術をもっていても、コストが高かったりエネルギーがかかりすぎるなど、応用範囲が狭くなってしまうからです。科学で世界を変えるというのは、科学をどこに応用するかという問いかけへの答えでもあるのです。

そんな野心的な言葉を会社の基本メッセージにしているのが 3M です。以前からなんどか訪問している 3M 社イベント、今回のテーマはずっと聞きたかった「インフラ」における 3M の隠れた役割についてです。

ちょっと長いのですが、最後にプレゼントのフォームもありますので、ぜひ最後までお読みください。

ナビゲーターは今回も3M社の広報を担当しておられる鵜飼さん。

開発の現場にもおられた経験を活かして、体当たりで3M社のコーポレートメッセージを伝える方です。ぜひ、左側の写真で覚えていただけると本人も喜ぶかと…。

ひとくちに「インフラ」といっても、3M がつくるのは橋や巨大な建物の完成品ではありません。むしろ内装や壁面の施工を楽にしてクオリティを向上させるダイノックフィルムや、既存の電線に対して交換するだけで性能を向上させる ACCR （Aluminum Conductor Composite Reinforced）電線などのように、この素材を使うと自動的にコスト節約や性能向上がみられる、という隙間を狙っていきます。

ブログみたいもん！のいしたにまさきさんから紹介のあったこちらの ACCR、調べてみると、既存の鉄塔をそのままに入れ替えるだけで密度は半分に（軽量化）、でも密度あたりの強度は2倍以上に、熱による膨張は半分という性能をもっています。

「それが…？」と思われるかもしれませんが、強度があるということは鉄塔の間隔が広くて張力があっても大丈夫で、膨張が少ないということは高熱時の電線のたわみがすくないということを意味し、何百kmにわたって利用すれば鉄塔を減らし、張力を強く電線をはっても安全を満たせ、結果的に何億円という経費の違いにつながります。

取り替えるだけでいい、というところがなんとも 3M らしいです。今回のイベントでは、その場で実演できる３つのインフラの例を紹介いただきました。

1. コンクリートの養生をシート一枚で

さて、いきなり出てきたのはこちらのフィルム。なんのへんてつもないように見えますが、3M 流のわけのわからない特性があります。

その特性を可視化するために、こちらの色付きインクを垂らしてみます。

するとこのように、フィルムのある方向に沿って、垂らした場所から自然に色が一方向に広がっていきます。染みこんで広がったなどという広がり方ではなくて、勝手にインクが走ってゆくと表現したほうがよい動きになっています。

顕微鏡でこのシートをみると非常に細い溝がきれいに平行につながっているのがわかります。これは、水の表面張力によって細い管にそって水が動く**「毛細管現象」**を利用して自動的に水を広げて保湿をすることができる「コンクリート給水養生用水搬送シート 1117」というフィルムなのだそうです。

建設において「コンクリートが乾く」などという表現があって誤解が生じやすいのですが、コンクリートが硬くなるのは水が蒸発するからではありません。むしろ、水と結合して水和反応で硬くなるのがコンクリートです。つまり、**適度に硬くなるまでは水を常に均一に与える必要があります。**これをコンクリートの養生（ようじょう）といいます。

実験のために先ほどのシートを水につけて、かたやコンクリートに触れさせておくと、毛細管現象で水がどんどんとやってくるのがみえます。

これのなにが素晴らしいかというと、1. 敷いて水を一箇所にまくだけで均一に養生ができる、2. 半透明なのでどこまで水がきているか人目でわかる、3. 十分の4mmと薄いので少ない水で養生ができるだけでなく廃棄されるゴミも少ないわけです。これを建設現場の面積で掛け算すれば、そのインパクトがわかるかと思います。

こうした機能を、追加のエネルギーなしに毛細管現象だけで実現するというあたりが 3M です。「俺らはフィルムが得意だからフィルムでなんでも解決するよ」という意気込みが感じられます。

2. 反射材を変えるだけで安全性を高める

電線や養生シートと同じように、取り替えるだけで性能が発揮させる例として紹介されたのが反射材です。また地味な…と思われるかもしれませんが、世界中の道路標識が対象だと考えれば、とてつもなく大きな市場です。

この反射材、たんに反射しやすくする乱反射型や、鏡のような形質をもっている材料はもう古く、いまでは光が来た方向に非光をそのまま返す**「再帰性反射材」**が普通となっています。

斜めに入射した光でもそのまま入射方向に戻すなんて、物理的に不可能にみえますが、表面をこのように小さなビーズで覆ったり、プリズムのような構造で覆うことで再帰性反射を実現することができます。

プリズムで光が戻っている様子を、大きな模型で示すとこのようになります。どの場所から入った光も90度+90度=180度の反射をしていますので、撮影している私の様子が中央にみえていますね。

道路標識のような表面にあてはめて、斜めから光をあてるとこのようにみえます。乱反射と鏡の反射なら光の当たった場所がぼやっと光るだけですが、再帰性反射をしていますので、ギラギラと光が戻ってきているのがわかると思います。

また出たよ…「フィルムが得意だから、なんでもフィルムで解決するぜ」が…。

3. これから広がる、パスポートの読み取りも

今回はもう一つ、フィルムから離れた製品も紹介がありました。東京オリンピックにむけて免税店などでの膨大な導入が見込まれるパスポートリーダーです。

これ１台で、RFID タグ、紫外線、可視光、赤外線に対応し、アンチグレア機能もあり、パスポートの機械式可読領域MRZのスキャンも一瞬でこなします。これ、空港でみかけたことがありますが、以前はパスポートをかざして安定するまでに10秒くらいかかったのが、いまでは1秒以内の、あれですね。

忙しい小売店などでも、法律でパスポート情報を残さなくてはいけなくなっていますので、こうして1秒ほどでスキャンと情報の読み取りができるのも、一種のインフラです。

そしてこれらの実験をして席に戻ってみると、先ほどの養生シートはコンクリート片だけでなくて机のうえもぐっしょりにしていました。たわんでいるのに…重力に逆らって水をここまで運ぶか…。