頭脳のRAMを拡張するポスト・イット。その歴史と使い方 #3mjp

ポスト・イットにちょっと書き付けをして、パソコンの横に備忘録として貼っておく人は多いはずです。その備忘録がどんどん増えて、パソコンの画面の枠を広がってゆくこともままあるのでは。

ポスト・イットはこのように「忘れたくない」と思う事柄を書いて、その記憶の断片をどこにでも持ち運んで再度はることができる発明です。そしてこれ、もうちょっと突き抜けて使うことで仕事中のワーキングメモリを格段に増やすことができるツールでもあります。

今回はそんな3Mポスト・イットについて、3Mイベントで学んだことと、私の机のうえでの簡単な使い方を紹介します。

プレゼントの情報もありますので、お見逃しなく!

ミクロな球状の接着剤がささえるポスト・イットの粘着力

先日、3M で行われたイベントでこのポスト・イットの原理や、背景となっている技術についてうかがうことができました。

ポスト・イットの接着剤の発明は、1968年に 3Mの化学者スペンサー・シルバーによって行われました。彼は強い接着剤の開発の過程で、クオリティの高い、しかし逆に粘着力の弱い接着剤を製造しました。

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その接着剤は小さな球状をしていて、その小さな接地面に対して粘着力を発揮しません。普通は「面」で粘着するのに対して球ですから:

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このように接している部分が少なく、粘着力が発揮されないのですね。

しかしこうした特徴のために、これにどんな用途があるのかシルバーには思いつくことができず、彼はこれを「問題がまだ見つかってないソリューション」として社内で繰り返し発表を行いました。

Fry lightbulb on forehead1

転機が訪れたのは1974年。3Mの社内プレゼンを聞いていたアート・フライが毎週金曜の夜に出席していた教会の聖歌隊で、聖歌集のしおりが散らばってしまうのを防ぐために利用できないかと思いついたのがきっかけでした。彼はこの「弱い接着剤」を紙に塗布すれば、何度でも使えるしおりになると考えたのです。

こうして、社内ベンチャーのような仕組みを用いて最初の Press ’n Peel 「押して剥がす」メモが1977年に登場しますが、売り上げは芳しくありませんでした。消費者には使い方がよく伝わらなかったのです。

そこでアイダホ州で無料のサンプルを配り、実際に利用してもらったところ94%の人が「製品を購入する」とこたえるなど、次第に利用方法が広まるようになりました。そして1980年に「Post-It Note」として再ブランディングされて発売されたのが、いまのポスト・イットの源流です。

ちなみにポスト・イットの特徴的な黄色は、たまたま、製造した時にあの色の紙がとなりのラボに積んであったのだそうです。「アイデアを出す色」などといった話があるのは、全部都市伝説なんですね。

3Mポスト・イットと、その他の付箋紙

こうした面白い歴史をもつポスト・イットですが、いまでは3M以外からもさまざまな種類がでています。しかし実際のところ、どれほどの性能の違いがあるのでしょうか。

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3Mのイベントでは文具王こと高畑正幸さんが、さまざまなポスト・イットを比較検討した実験についてプレゼンしてくださいました。曲面への添付、染色、はりやすさなど、そこまでするか!というほどの実験結果が次々に飛び出しました。

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面白いのは、「はって、はがせる」という接着剤の性能を単純な塗布で引き出しているポスト・イットに対して、他の企業が作っている付箋紙の多くは格子状に接着剤を塗るなどして低粘着力を実現している点でした。これ、乾きやすくなって、ペリっと剥がれるあの嫌な付箋紙の原因になるんですよね…。

単純そうにみえるポスト・イットですが、イベントに参加されていた開発者のかたが「それ以上は言えません…」と口を濁らせる瞬間があるほど、接着剤そのもの、製造工程そのものにノウハウが多いわけです。

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接着剤の種類と、加工の仕方によってポスト・イットのような低粘着の製品から、高粘着ポスト・イット、さらには建築で使用できるほど強いVHDテープのような製品まで作れる、その技術力の幅が今回のイベントでは目を見張る点でした。たとえば上の写真の椅子、これ金属フレームにVHDテープのみでつながっています。

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このように人がのっても大丈夫。無理をしたら金属フレームのほうが先にどうにかなりそうです。

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こうした技術は、ちょっとした補修ならば壁の表面に貼って済ませてしまうなど、建築やデザインの工程を変えています。

ポスト・イットの本質とは。それは記憶のコンテナ

私はというと、ポスト・イットをふだん机のうえに散りばめた「記憶の置き場所」として使っています。

本業の作業では、さまざまな細かい数字や、チェック項目が生まれます。どれもこれも、頭で覚えていると急速に生産性が落ちてしまうような細かいものです。そこでそれをポスト・イットにすべて書き出して作業を進めます。

割り込みがあったときには、ポスト・イットの上にポスト・イットをはりつけて割り込みを表現することもできます。上のポスト・イットが回収されてから下のものをすすめるわけですよね。

最終的には、終わったものは捨て、終わらなかったものはノートに回収されて次の日にまた机の上に展開されます。こうしておくと、作業のピースを頭で覚えておくことなしに進めて、あとのための記録にもなるのですね。

ポスト・イットのなにが好きって、紙と接着剤がつくことによって、新しいメディアが誕生したこと。紙よりも機動性があって、変化を受け入れて、場所を変えて、記憶や情報のコンテナとなってゆく。最高 #3mjp

— M. E. Hori (@mehori) 2015, 9月 9

イベントでもつぶやいたのですが、ポスト・イットの魅力はこうした「記憶のコンテナ」だということです。いまのネットでいうなら、「記憶のTCP/IP」のように機能しているといってもいいでしょう。

机のうえだけでなく、本のすきま、曲面のある壁のうえ、スマホケースの内側など、様々な場所にこのコンテナが使えるように、ポスト・イットには各種あります。すべてが同じ接着剤ではなく、それぞれの用途のために開発され、塗布の仕方も工夫されていると考えてください。

もう少しポスト・イットをふだん思っているよりも多く使ってみること、記憶を外に追い出すことを恐れずに使ってみると、さらにその効果は高まるのです。

3Mからポスト・イットプレゼント

さて、このイベントの記事を書くのがたいへんおくれてしまったので、本日がしめきりでたいへん恐縮なのですが、この多彩なポスト・イット製品について、お試しいただけるプレゼント企画があります。なんと:

  • 3M(TM) VHB(TM) アクリルフォーム構造用接合テープ 接合維新 BR-12

  • ポスト・イット(R) ノート

  • ポスト・イット(R) ふせん

  • ポスト・イット(R) メッセージノート

  • ポスト・イット(R) ノート 強粘着モバイルメモ

  • ポスト・イット(R) 強粘着ノート

  • ポスト・イット(R) ノート 強粘着ノート シルエットデザインシリーズ

  • ポスト・イット(R) ジョーブ スマートケース

  • ポスト・イット(R) ジョーブ 超丈夫なインデックス

  • ポスト・イット(R) ジョーブ ポータブルデザインフィルムプチケース

  • ポスト・イット(R) ノート 強粘着ロール

  • スコッチ(R) 秒速封かんのり

と、普通に買うと相当する内容のポスト・イット製品の詰め合わせになっています。

締め切りは本日2015年9月30日、23:59まで!

こちらからの応募になりますのでぜひいますぐ入力してみてください。

(追記)

上記のリンクが、締め切り前にもかかわらず「定員に達しましたので、締め切りました」と表示されているみたいです。いま担当者が不在なので、また後日対応していただくことにしますので、私のツイッターアカウント(@mehori)や、ハッシュタグ「#3mjp」を注目していてください。ご迷惑おかけします。

修正されました!

3M
堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。