力強い、まだなにかを始めていない人への呼びかけ

Ze Frank氏はいったいなにをしているのか説明するのが難しいタイプの人物です。

彼はパフォーマンス・アーチストであり、パブリック・スピーカーであり、作曲家やユーモア作家でもあります。そして現在はBuzzFeedの動画部門の取締役でもあります。

zefrank.comに個性的なブログとホームページの中間のようなサイトを持っている彼は、ここにさまざまなコンテンツを公開しています。彼の毎日のビデオショーだった the show と、その後始めた a show のコンテンツもここから視聴することができます。

この2012年に開始した a show 初回で、Ze Frank氏は “An Invocation for Beginnings” 「始まりへの呼びかけ」というモノローグを公開しています。

“Invocations” とは、呼びかけ、あるいは祈りの意味で、ここではホメロスやダンテが詩の始まりにおいて詩神ムーサイへと呼びかけて祈るときと同じ意味で使われています。

なにかを始めようとしている人が、これから始めようとしている人にむけて語る素朴で、力のある言葉です。

先日、友人の Peerless Yukari さんのビデオポッドキャストの初回に登場させていただいたのですが、その彼女が Ze Frank のこの Invocation を紹介していて、きっと多くのひとの背中を押してくれるのではないかと思いましたので、ざくっと翻訳してご紹介したいと思います。### これはまだ始めていないやつらへの呼びかけだ

*「これはまだ始めていないやつらへの呼びかけだ

カム(comb「櫛」との駄洒落)バックだなんていうな。俺の前髪はまだ何年分もある。

怖いさ。自分の才能がもう枯れてるんじゃないかと思うと怖いし、ヘマをするんじゃないかと思うと怖いし、お前のことが怖い。始めたくない、でも始めよう。

これはまだ始めていないヤツらへの呼びかけだ。0と1の間の、あのぞっとする場所で身動きがとれなくなっているヤツのためのものだ。

過去に俺が何かをやりぬくことが出来なかったからといって、それが未来の俺を予測しているだなんてことはない。それは健康的に俺のケツを炙る促しの小さな火にすぎない。

俺の FILDI (Fuck it, Let’s do it.「うるせえ、やるぞ」)が十分強いなら、やつを本当に必要とするまでビロードを張った豪華な箱のなかに閉じ込めておいてやりたい。俺の FILDI が弱いなら、オレンジを与えて養ってやって、俺のエゴと傲慢さを貪り食うようなことがないようにしてやりたい。

どうか俺が麻薬か何かのようにFacebookを開くことがないように、ブラウザのタブを閉じたままでいられるようにしてくれ。

もし俺がtwo-two(チュチュとの駄洒落)を着ているなら、それは「お前は太りすぎだ(too fat)、「遅すぎだ」(too late)、「歳を取り過ぎだ」(too old)というやつだが、もしそうならロバが嫌いな荷物を背中から落とすようにそれを振り払ってやりたい。

そしてあの気持ちが、わかるだろう?、あのエネルギーの塊が突然生まれて足元で跳ねて腕の中に飛び上がってきて「今すぐ冷蔵庫に行ってチーズサンドイッチをとりにいってこい!」と命じたときの気持ち。それは内なるチーズの怪獣がしゃべっているだけで、その怪獣は実際にはチェダーチーズくらいじゃない満足できない、成功のチーズでしか満たせないんだ。

自分にとって大切な人たちを思い起こしてみよう。彼らが失敗したり自分をがっかりさせたときに、それでも彼らを愛しているし、彼らにチャンスを与えるし、彼らのなかの善いものをみようとするだろう? その寛大さを、俺が、俺自身にも与えてあげよう。

俺が周囲の世界を理解するためにメタファーを利用することを、そしてそれがもう役に立たないとわかったら捨てる力も与えられますように。

俺が、俺の中にある理性ではコントロール出来ないクリエイティビティや勇気を感謝できますように。勇気は獰猛な犬みたいなもので、呼んだからといって来るものじゃなく、追いかけ、捕まえ、あらん限りの力で引き止めないといけないものなんだ。

俺が自分の勝利も敗北も自分だけが描いたものだなどと思うほど思い上がることがありませんように。

俺がやることのいちいちに他人が意図していなかった意味を見出すのは俺のせいでなければ俺の業績でもないと、俺が覚えていますように。

完璧主義ってのは磨きぬかれた靴が美しいヤツかもしれないが、ちょっと癇に障るところがあるから、誰もプール・パーティー呼びはしないって覚えておこう。

批判がもたらす苦痛はたいてい批判している人物が意図したことではないと覚えておこう。でももしその意図が悪意なのなら、ブロック機能はそういうときのためのものだ。

そして自分への批評を読むときに、良いアドバイスと苦い薬草とを選り分けられますように。

(低音)少ない人々への大きなインパクトは、大勢への小さなインパクトよりも価値があり得る。

(高音)誠意のこもった笑顔に和らげられない人なんてほとんどいない。だから笑おう。

俺が自分の仕事をなにか別のものへの足がかりの踏み石だなんて思わないように。もしもそれが踏み石なら、せめてその形にうっとりとなりますように。

俺をここまで導いてきたアイデアはもう安らかに眠らせるとしよう。これから始めることはそれではない。でも何かではあるんだ。

もう鉛筆を削ることはやめよう。俺の鉛筆は十分削れている。先がまるくなったやつでも、印はつけられる。欠点もふくめて。さあ、始めようじゃないか。

(あと、始めるんなら、どうせなら楽しもうじゃないか。人生はなにかが実現するのを待つだけのものじゃないのだから。)」 *

追伸

もっとも、a show は出資金をあつめてスタートしておきながら8ヶ月後にアナウンスなしに中断しているのですが、そのうちまた再開するのでしょうか。

この呼びかけについてはポスターになっていて購入することもできます。

Ze Frank 氏については、TED トークと、動物についての正直すぎる紹介動画も声がひょうきんで楽しんでいます。もしよければ御覧ください。

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。