観光 × イングレスという妙手。横須賀市観光課がしかけるイングレス・キャンペーン

横須賀市経済部商業観光課が主導となって、Googleの拡張現実ゲーム「Ingress」のキャンペーンが始まっています。ほんの少しですが、私と、「はじめよう!Ingress」の共著者であるネタフルのコグレマサトさん(@kogure)、みたいもん!のいしたにまさきさん、ネットウォッチャーのotsuneさんが監修者としてお手伝いしています。

イングレス、つまりはゲームと観光? というのはにわかにイメージがつかないと思いますが、これは両方にとってメリットの大きい、面白い取り組みだと思います。

従来の観光PRでは届かなかった部分、そしてイングレスが究極的にもっている目標とが、うまくマッチするのですね。過去の、そして今回のキャンペーンを通してみていきましょう。### ポータルを「発見」するとりくみ:岩手県

イングレスと地域観光というと、岩手県の取り組みがとても注目されました。

そもそもポータルが少ない岩手県で、ポータル申請そのものをイベント化してしまうイベントが開催されたり、「もりおか雪あかり」イベントと連携してイングレスイベントが企画されています。

岩手県庁Ingress活用研究会 初の野外イベント! 「ポータル探して盛岡街歩き」 イベントのご案内 http://t.co/Q9WhhHCxrl 街歩きコース  http://t.co/vJ2SjBSC5Y pic.twitter.com/d63hQKJSXG

— 岩手県広聴広報課 (@pref_iwate) 2014, 10月 24

岩手県のとりくみは、そもそもポータルが少ない、あるいは距離が離れていることを逆手にとって、「それなら地域の面白いところこみでご案内しますよ」と地域のものを発見する手伝いをするという側面がありました。

地方の観光のテーマとして、そもそも観光すべきものを発見してもらうという問題があって、それとイングレスの親和性が高いわけですね。

ミッションで人の動きをつくる:横須賀市

横須賀市の場合は、猿島、三笠公園、そして意外に知られていないのですがロッククライマーなどには有名な鷹取山側のポータルをミッションでつなぐというキャンペーンがまず始まっています。

Yokosuka1

地元のエージェント(私もそうですが)なら歩くことで経験的に知っている、一番おいしいルートを、あらかじめミッションとして提供してしまうことで、人の流れを作ってしまうわけですね。

Sarushima

猿島ルートの場合は、Level2以上のエージェントはスキャナーアプリの画面を見せることで船の割引ももらえます(猿島行きの船は土日祝日のみ運航ですのでご注意下さい)。

岩手県と違うのは、横須賀の場合はすでにポータルが1200近く存在するという点があります。すでに発見されているポータルに人を誘導すればいいので、イベントを開催するよりも人の数がスケールするのが特徴です。

発見、出会い、観光

こうしてみてみると、イングレスと観光との間には、これまでに開拓することが難しかった親和性が見て取れます。

たとえば観光付き物なのが、「有名な場所にいく人は多い一方で、そのちょっと離れた場所は人が少ない」という問題があります。これもイングレスの場合は、そこにポータルがあれば人の動きがありますので、部分的に解消できます。

また場所の発見にしても、ガイドブックを越えた情報を、イングレスのポータルとして、あるいはミッションとして提供することができるのです。

ゆくゆくは、こうした取り組みを拡張して、ミッションのガイドツアーを組むといった活動や、ミッションバッジを見せることで割引、限定グッズの提供を行うなどといった、地元と行動するエージェントとの相互作用を生み出すことができるとよさそうです。

イングレスによって、外にでて活動する理由を手にした私たちが、今後は行き先を手に入れて、これまで知らなかった場所をより深く体験できる。観光とイングレスという断面はまさにいま切り開かれはじめたばかりなのです。

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。