Quipスプレッドシートはデータと文書が融合した仕事の新しいフォーマットを生み出す
ブラウザ上でオフィスソフトが使えるようになる。それはGoogleドキュメント&スプレッドシートで実現しました。しかし実際にブラウザで利用可能であることの醍醐味である共有と同時編集が利用しやすい状況とはいえません。
そんなオフィス機能を1から再創造しているサービスが、チャット機能が軸になっている文書サービスQuipです。このQuipに先日、スプレッドシートが追加されました。Googleスプレッドシートがあるのだから、車輪の再発明のようにみえますが、ここにQuipならではの使用感が実現しています。
みてみると、なんで最初からこうでなかったのかと思うほどです。
Quip の特徴はブラウザでも、iPhone、iPadでもまったく同じ環境をリアルタイムで共有することができる点です。というわけでiPhoneを使って新しい文書を作成すると、スプレッドシートが追加されています。
開いてみると、使い慣れたスプレッドシートが登場します。
すでにスプレッドシートとしての基本的な機能はそなえており、罫線や400種類ほどの関数、その場で電卓を呼び出してセルに入力する機能など、十分な機能をもっています。しかしQuipらしさはここからです。
Quipの特徴は、文章のどんな場所でも他のユーザーを呼び出してチャットすることができる点です。実際、文書はむしろチャットを軸足にしていて、ドキュメントやスプレッドシートはチャットに対して従属しているような形をとっています。
そしてGoogleスプレッドシートよりも面白いのが、Quipのスプレッドシート機能はそのままドキュメントの中に埋め込み、セルの数値をドキュメントに呼び出し、リアルタイムに編集可能である点です。これは動画をみていただくのが一番わかりやすいでしょう。
Quipはもともと完成度の高い文書を作成するために利用することも可能でしたが、タスクリストや買い物リストなどを作って、それを共有してメンバー全員でチェックしつつ進めるといったような流動性が高い文書が得意です。
このあたりが、「完成した文書」を作ることを念頭においたWord/Excel、あるいはそれに対抗して作成されたGoogleドキュメント&スプレッドシートと比べ、考え方がフレキシブルです。いわばデータと文書の融合したフォーマットが実現したようになっているのです。
たとえば家計をスプレッドシートで整理しつつ、その数字を文書内で呼び出して貯金の目標額とならべて表示しておくといった使い方、スコアの集計に従って変わってゆく記事など、情報が常に変化する文書が作れます。
そしてそのデータは、自分だけでなく、文書を共有しているだれから流れ込んできても大丈夫というのが、Quipの秀逸さです。
Word/Excelファイルを持っている人が最終的に仕事を握り、仕事を仕上げるという世界から、所有という概念も、仕上げるという概念もきえてゆく。ようやくクラウドの仕事場が、あるべき姿に仕上がってきたように思えます。