大量のメールをストレスフリーに管理するGoogle Inbox
Googleに採用された社員は、初めて自分の社内用Gmailアカウントにアクセスしたときに、すでに何百通というメールが届いているのを発見して驚くという話を耳にしたことがあります。毎日のメールを迅速に、的確に処理することは、仕事を効率化する上でとても大事なことであり、大きな組織になればなるほど、組織全体のスピードを決定づけるのです。
Gmailはそうしたメールの処理を楽にするさまざまな機能がありますが、やはり建て付けは伝統的なメールアプリと同じで、メールの一覧表があり、手でいちいちそれを処理してゆくという側面が強く出ています。それをなかば自動化し、人間が処理する部分を先取りしてしまうシステムがあれば、メール処理のストレスを減少させつつ、効率を上げることができます。
そうしたニーズをにらんでなのか、GoogleからGmailの上で動作するChrome App、Android/iOSアプリの Google Inboxが登場しています。
Google Now、メールの出会い
先日飛行機に乗り、海外のホテルにチェックインする前にそのコンファメーションのメールをGmailが自動的に拾って、GoogleカレンダーとGoogleマップのマイマップに追加しているということがありました。「直接送信された、ホテルからのコンファメーション」という文脈をGmailが読み取るのは決して簡単なことではありませんが、不可能ではありません。
同じように、AndroidにはすでにGoogle Nowが存在し、私の予定や位置情報にしたがって「もうそろそろ出発してください」「あしたの行き先の天気はこうなってます」といった必要な情報を先に用意してくれます。Google Inbox はこうしたGoogle Nowの機能と、Gmailとの出会いから誕生しています。
Google Inboxのいくつかの機能の一つとして、メールを用件ごとに自動的に束ねるBundleがあります。
Gmailはすでに広告メールや、家族からのメールを自動仕分けする機能がありますし、ラベルとフィルターもその一つですが、Bundleはこれを自動的にカテゴライズしつつ実行します。
メールの用件がToDoなら、素早くタスクを登録してメール自体はアーカイブということができます。
問題はGmailのタスク機能が貧弱で、せめてこれをモダンなタスク管理のレベルまで引き上げてくれるか、別のアプリと連携できるようにしてほしいという点です。
Snooze機能はMailboxなどで人気となった、メールへの対応を先送りする機能です。とりあえず 受信箱からメールを消し去りますが、明日や明後日といったように設定された日にまたメールは受信箱に戻ってきます。
これらが組み合わさって、メールをすべて見なくても何が重要なのか、いま対応しなければいけないのはどれなのかがまとめて見られるのが、Featuredのページです。
実際、Google Inbox内ではフラグを立てる動作に相当するPin、先送りのSnooze、終わってアーカイブするDoneの三つが最も大きなアクションになっています。
これは検索とアーカイブが最も大きなアクションであるGmailの設計から、少し軌道を変更したようになっています。
これらの機能の多くは、「先送り」を機能の一部分として取り込んでいるMailboxやBoomerangなどの機能を意識したものとも言えますが、メールを中心とした設計を、受け取った人のアクションを中心に設計しなおしたとも言えそうです。
Google Inboxは現在招待制なので、inbox@google.comにメールを送って、登録希望と連絡しておく必要があります。私もまだinviteをもってないので、だれか招待してください(笑)
でも本当に役に立つのか?
なぜ、GoogleはGoogle Inboxを開発しているのでしょうか?
理由として、iCloudとDropboxのような、Googleの足元をおびやかす存在があります。より便利なメールアプリと、それと紐付いて添付ファイルをまかなうクラウドサービスの存在はGoogleの存在理由を削ぎ取っていきます。
MailboxがDropboxによって買収されていることも思い出すと、けっしてGmailが盤石とはいえない事情が見えてきます。
さて、メールにまつわる作業を自動化し、人間が判断して操作しなければいけない部分を減らすことでストレスフリーなメール処理を目指しているGoogle Inboxですが、本当に楽になるのでしょうか?
こうした試みはGmailについてもすでに何回か行われていて、広く利用されるようになったとは言えない状況です。例としてこちら。
たいていの90%のメールは自動で処理しても大丈夫ですが、メールの面倒くささは例外的な、緊急の、自分でもどう扱えばいいのか難しい10%によって効率が落ちている面があります。
はたしてこうした例外に対してGoogle Inboxが効果を持つのか。それはじっくり使い込んでみないとわかりません。
Google InboxがGmailへの機能追加ではなく、ワークフローを変える別アプリとして提供されているあたりに、Googleの本気を期待したいと思います。
繰り返しになりますがまずは誰か招待してください!