「iPhoneも入る財布」は財布とケースの境界を越える新感覚ガジェット

見た瞬間に「これは自分に必要だ!」と直感が叫ぶ製品があります。そして見た瞬間に「これはいらないな」となんとなくわかるものも。

しかしたまに、見ただけではわからない、触ってみないとなにが起こるかわからない、そういう想像力の外側からやってくる製品との出会いがあります。

ブログみたいもん!の、というよりは最近はカバンプロデューサーの、と肩書きを変えたほうが通りがよさそうないしたにまさきさんの新作、「iPhoneも入るサイフ」がまさにそういった隙間をグサッと刺していて、言葉にするのが実に悩ましい。

レビュー用に2週間ほど使用した感想をまとめたいと思いますが、最初に書いておくと「iPhoneも」の「も」、ここにすべての可能性が予告されているのです。### 「iPhoneも入る財布」は財布なのかケースなのか

「iPhoneも入る財布」は「薄い財布」「小さい小銭いれ」などのヒット商品で知られる abrAsus のノウハウを元に作られています。

Iphone wallet

お札部分の両側を皮で挟むのではなく、財布をたたんだときの構造がお札を包むようになっているので、薄くて済むわけですね。

財布をたたんだときに留める部分がそのままコイン入れの留め金になっているのも特徴です。

開くときに上下を気をつけないとコインが流れだしてしまいそうですが、そんなことは数度使っていれば慣れてしまいます。むしろ、小銭にしか用事がない場合はこの部分を開くだけでよいのがとても便利。

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「iPhoneも入る財布」の最大の特徴はもちろんiPhone 5がすっぽりと収まる中央のポケット部分です。これがiPhoneとリーズナブルな数のカードとお札を入れたときの様子。

写真なのでふくらんでいるようにみえますが、自分の場合いままでだって「薄いマネークリップ」とiPhoneを同じ前ポケットにいれていたのですから、ポケットのなかでの違和感はありません。

皮におおわれているとはいえiPhoneの頭は両側からつまむことができますので、片手でポケットから出したり入れたりできます。

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このポケットに寄り添うようにSUICAなどのICカードを入れられるポケットが、お札部分に寄り添ってカード入れがあります。

つまりサイフを閉じた時にICカード入れとカード入れの部分は表と裏になりますので、私はICカード入れにSUICAを、カード入れの最も外側に同じくICカード式になっている職場の職員証を入れています。

これまで職員証のほうはSUICAと重なっていると認識しなかったのが、これで表と裏両方で「ピッ!」とできるのが快適すぎます。

入るのはiPhoneだけとは限らない

でも多くの人がきっと「それってありなの?」と思うのが「iPhone を入れる」という部分だと思います。本当に自分は財布のなかにiPhoneを入れたいのか?

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ここが「iPhoneも入る財布」のすごいところで、普通は、サイフをつくるか、iPhoneケースを作るか、とにかくカテゴリがはっきりしているものを作ると思うのです。

しかしこのポケットの存在はこれまでの財布やiPhoneの使い方から何かが変わることを誘います

たとえばそれは、出勤して「ふーっ」と息をつきながらオフィスの机につくときにポケットの中から財布とiPhoneをそれぞれ取り出す…のではなく、財布とともにiPhoneが一度に机の上に置かれるといったことだったりします。

あるいはこれまではiPhone ケースがないと傷がつかないか不安だったけれどもケースを付けること自体は好きではなかった人が、ようやく裸のiPhoneを財布のポケットの中に安心して入れて持ち歩けるということかもしれません。

このポケットが生み出すのはそのように小さくて、とても個人的な利便性なので「ここが便利!」と万人に向けて説得力のある説明ができるものではありません。とにかく、なにかが変わるのです。

入れるのはiPhoneであるとも限りません。

現に、Ingressが楽しすぎてiPhoneを手に持っている時間のほうが長かった数日間については、このポケットは名刺、駐車証、すぐに取り出したいメモ、レシートなどが収まっていました。

その他にも Simplism のiPhone 型のバッテリー、スマートフォンサイズの大学ノート「サーキット」など、iPhone サイズのポケットに収まるものはけっこうあります。

「iPhoneも」の「も」というのはここに入りうるすべてのものをさした1文字であり、財布だと思っていたものが一種の「母艦」として使える可能性を示しているのです。

iPhone 6 が発表されたけど?

というわけで、「iPhoneも入る財布」というネーミングのキモは「iPhone」ではなくて「も」の部分なのだということがわかると、iPhone を使っていない人にも、iPhone 5のサイズから iPhone 6 に移行しようと考えている人にも何かのヒントがあるのではないかと思います。

今回いしたにさんは、ご自身のデザインする製品を包み込む「Thinking Hands」というブランドを立ち上げているのですが、このネーミングにも「考える手」であり「手で考える」という、明快な答えを与えないスタイルがこめられています。

使い方が最初から決まっている部分と、使ってみると発見がある部分。そしてその発見によって使う人にも変化が起こる。道具というものは本来そうあるべきなのですね。

というわけでしばらくはこの財布で歩き回っていると思いますので、どこかでもし私にあったら声をかけてみてください。このポケットから意外なものが飛び出すかもしれません。

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堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。