論文、プレゼン、PDF資料のすべてを管理できるPapers 3

Papers3

研究者や、卒論、修論を書く学生さんにとって学術論文の整理は頭の痛い問題です。

最近ではほとんどの論文がPDFで入手可能になったとはいえ、論文の数は日に日に多くなるばかりです。それをテーマごとに、キーワードごとに、あるいは著者、年代とともに整理し、必要に応じて思い出せるようにするのには、ファイルで並べておくだけでは無理があります。

そこで便利に使えるのがEndNoteのような論文管理ソフトウェアですが、EndNoteの中途半端さ、マイナーチェンジのたびに数万円も払わないといけないコストの高さには辟易として最近では Mendeley、Papers といった代替ソフトを使っています。

そのPapersのMac版が、このほど見た目も機能も一新した Papers 3 として生まれ変わりました。シンプルでありながら高機能、そしてDropboxなどとの連携も。

研究者だけでなく、PDF書類がたくさんあって管理に困っている人にとっても必須のツールとなりそうです。### 一新したシンプルなインターフェース

Papers についてご存じない人のために、核となっている機能を列挙しておきますと次のようになります。

  • 論文の目録を、題名、著者、abstractやキーワードといったメタデータなどとともに作成できる

  • Web of Science、JSTOR、Google Scholarなどの論文データベースを横断検索できる

  • 論文のPDFをアプリ内から簡単に入手して管理できる

  • iPhotoのアルバムに似た、論文のコレクションを作成したり、条件にあった論文を表示するスマートコレクションを作れる

  • 原稿で論文を引用する、目録をつくるといった作業も一発でできる

  • 論文への書き込み、メモなども管理できる

つまり Papers をひらいておきさえすれば、論文探し、読み込み、整理、引用のすべてが可能になるわけです。

Papers3 interface

Papers 3 ではこれらの機能はそのままに、インターフェースが簡素なものに変更されました。こちらは論文をグリッドビューで一覧表示している場合です。この他に、列表示、カバーフローなどのビューも存在します。

また、右側のメタデータのパネルは畳めますので、コンパクトに利用することも可能です。

Papers3 article

こちらが論文を開いている際のビュー。右側のパネルには論文のメタデータや abstract だけでなく、タグや星評価をつけることも可能になっています。

Papers3 meta

右パネルは論文メタデータだけでなく、最近多くなってきた画像や動画などのサプリメント資料を貼り付けることも可能ですし、その論文に対して書き加えたメモ、はいハイライト、ウェブ・ツイッターなどで発見できた関連論文を表示することもできます。

この関連論文リストから直接目録に論文をインポートして、PDFをダウンロードしてから元の論文を読む作業に戻れますので、ワークフローも脱線せずにすみます。

探す・読む・管理するをすべてサポート

さて、これだけ論文が多くなり、電子ジャーナルも多くなったいいま、すべての雑誌に目を通して論文を把握し尽くすというのは難しくなってきました。Papers 3 は高度な検索機能で、研究者が「探す」部分をサポートします。

Papers3 search 1

左パネルの “Search Engines” に入っているのは、使用している論文データベースです。ここで “Favorites” に入っているものは横断検索が行われますので、科学者なら “Web of Science”、そして Google Scholar など、主に使用するものを選んで放り込んでおくとよいでしょう。

検索ワードを入れると、Author、Title、Year といった項目を AND、OR、NOT などの論理構造とともに検索することができます。括弧をいれて AND / OR をまとめることもできます。

Web of Science の使いにくいさに辟易していた人、同じ検索条件で複数のデータベースを探す手間をかけていた人は、この検索機能だけで大きな時間削減ができるはずです。

ただ、現時点でこの検索窓は日本語の直接入力に対応していませんので、日本語を入力したい場合はコピー&ペーストで行うことになります。また Web of Scienece など、一部のデータベースの利用には研究所や大学が Web API へ登録する必要がある場合もあります(WoSについては購読している所は無料です)。

時間節約がすばらしいさまざまな機能

今回の Papers 3 の目玉機能の一つに、Dropbox を利用した同期ができることが挙げられます。

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いままで、Papers 2 のデータベースを Dropbox で管理していた人もいると思いますが、今後は機能としてそれが提供されるということです。

新しくリリースされたiOS 版の Papers を利用すれば、Papers 3 のライブラリに Dropbox から直接アクセスできるわけです。Papers 2 で WiFi 同期をしていた人は、これでもっと便利に論文を持ち出せるだけでなく、出先でも必要に応じて論文をダウンロードすることが可能になりました。

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Papers のもう一つの魅力に、PDF ファイル名の自動変更があります。よく論文データベースから手に入れた PDF は BH23423089854.pdf といったような解読不能な名前になっていますが、これを Papers はメタデータに即して変更し、適宜フォルダに整理してくれます。

このファイル名の構造、サブディレクトリの作り方も、設定することができます。これは万が一 Papers から移行する際にも安心だといえます。

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これ以外にも、Wordなどのワープロとの連携機能、主要論文雑誌にあわせた目録の作成、コレクション、スマートコレクションなど、Papers にはファイルの管理と論文作成を楽にしてくれる機能が山と積まれています。

Papers 3 になって、論文だけでなく、書籍、プレゼンファイル、配布資料なども管理できるようになりましたので、学会のプレゼン、ポスターなどもここで管理できるでしょう。実際、私は研究時間中に Papers 3、Evernoteに1つずつデスクトップを割り当てるだけで、だいたいの作業ができるようになっています。

機能満載の Papers 3ですが Mac App Storeにはまだ登録されていないので、自前でダウンロードする必要があります。また、新しい Papers for iOS は別アプリになっていますので、もう一度購入する必要があります。

また、Papers はいまのところ個人で利用することを念頭に開発されていますので、グループで論文目録を共有するなどの使い方はできません。このタイプの使用方法はむしろ Mendeley の持ち味と言っていいでしょう。

価格は $79 と安くはないですが(教育機関割引あり)、研究者や学生の時間をどれだけ節約できるかと思えば安い買い物です。

ファイルまたファイルの論文管理よ、さらば!

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。