来年の航跡を描くための「年間レビュー」のすすめ
一年のおわりになると必ず、その年の何がうまくいったのか、何がうまくいかなかったのか、そして来年にむけてどのような航路を選ぶのかという「年間レビュー」を、The Art of non-Conformity のクリスの要領で行っています。
これは正月三が日が終わる頃には忘れている新しい習慣を決めようという話ではありませんし、人生を劇的に変えるためになにか自分らしくない枷をはめることでもありません。
むしろ、一年を通してやってきたことを意識して、ほんの少し航路を変えることで次の一周をより望ましいものにしようという試みにほかなりません。### 航跡を描き出す − 螺旋
「年間レビュー」のことを考えるとき、必ずといっていいほど思い出すのがスティーフン・キングのホラー小説「IT」のエンディングの以下の美しいくだりです。
“But it’s nice to think so for awhile in the morning’s clean silence, to think that mortality defines all courage and love. To think that what has looked forward must also look back, and that each life makes its own imitation of immortality: a wheel.”
朝の清冽な静けさのなかで、しばし考えにふけるのも悪くはなかった。免れ得ない死こそが勇気と愛とを決定づけるのだと。未来に向けた眼差しは時として過去を振り返らないといけないということを。そうしてすべての命の営みは自分なりのやり方で不死を真似るのだと。車輪のように。
- Stephen King, “IT”.
私たちはせいぜい100回未満しかこの車輪を回せません。そして今日の自分を、明日いきなり変えることもできません。変えるべきでもないでしょう。今の自分は、そのダメな部分も含めて、それなりに必死に、よかれと思って努力しているでしょうから。
せいぜいできることは、次の一年、より良い航跡を描くことです。それには大言壮語も、悲壮な覚悟も余計なものです。「来年は何を変えてみる?」この小さな軌道修正を意識できればまずは十分なのです。
「年間レビュー」のフォーマット
そこで年間レビューでは、クリスも行っているように、「今年なにがうまくいったか」「何がうまくいかなかったか」を書き出して、そこから「どのような修正を試みるか」を導き出します。
最終的な目標を書き出すのもいいでしょう。でも注意が必要です。現在の軌道からあまりに逸脱した大きすぎる軌道に変更するには、それなりの反作用が必要です。12ヶ月で果たしてそのような新しい軌道に乗れるのか? ここは現実的に考えるべき部分です。
クリスの年間レビューはそのために目標とセットでメトリックを設定することを勧めています。たとえば「もっと読書する」という目標に対して今年の数が54冊だったら、来年は58冊という具合に利用する数の指標です。
年間レビューの結果として、来年に向けての確固としたアクションと、メトリックが出ていれば成功です。これを実現するためのExcelシートもあるのですが、てきとうにクリスのものを日本語化しておいたものがありますので、こちらを使っていただくのでもいいでしょう。
今年うまくいったこと
さて、この要領で私自身の今年うまく行ったこと、うまくいかなかったことをリストにしたいと思います。その上で、来年にむけてのアクションを明日立ててゆくことにします。
まず、うまくいったこと(すべてではありません!)。
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本業の仕事でですが、46日間の北極航海に乗船して無事に帰還できたこと。これまでにない経験を積むとともに、次の一手を考えるよい機会になりました。
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鳥取ブロガーツアー、福島・郡山ブロガーツアー、PFU金沢工場見学と、ブログ関連で3つの旅に参加させていただくことができました。また、鎌倉フォトウォークや、今週末の福島ブロガーツアー・トークショーに参加させていただくなど
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ライフハックLiveshowを #36 から #79 まで、実に44回もオンエアできました。いつもお付き合いくださるゲストのみなさんのおかげですが、地味にこれもログになりつつありますね。
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記事の数はまだ少ないものの、第2ブログ「ライフ×メモ」をわりあい楽しく続けられていること
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下の子供が病気をしたり入院をしたりとややこしい時期もありましたが、無事に一歳の誕生日を健康に迎えることができました。実家も親も病気したりしていましたが、まずは健康を取り戻せて感謝。
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3年連続で World Domination Summit に参加。来年も行きますよ!
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日経BPアソシエの「ビジネス洋書先取りガイド」の連載を続けられたこと
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Evernoteアンバサダー、ScanSnapアンバサダーに就任。これは目立ってなにかメリットがあるという話であるよりも、ブログで書いてきたことが一つの形になったこととして。
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これは言葉にしにくいことですが、自分のなかでブログを書く際の文体に一つの幅が生まれたこと。それはiPhone について書くのも、Google+の未来について書くのにも、本のレビュー、旅行、グルメ、話題などに広く応用が可能。
次に、うまくいかなかったことです。
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ブログの更新頻度がとても落ちてしまった。多くの場合、これは0歳児の相手をしていたからですが、もう少し執筆時間を前もって割り当てることはできたはずでした。
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準備していた書籍の完成が遅れていること。
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立ち上げたニュースレターが、中断したままであること。これはなるべく2014年に復活させたいですが、まずは記事スケジュールや執筆スケジュールの構築を行わないといけません。
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新しい本を読む挑戦が途絶えていたこと。知的な倦怠期を迎えていた印象があります。
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家事・育児に関して家内を頼ることが最初の子供よりも多かったこと。もう少し「自分にできること」の領域を拡大するようにできればよかったのですが、なかなか実行には移せなかった。
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春先の病気と足裏の怪我をきっかけに運動の頻度がめっきり減っていること。まだ体調にはね返ってはいないものの、身体のさまざまな数値の低下を避けるにはせめて以前のレベルで運動をしないといけない。
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時として大きな怒りや不安、悲しみに日常が振り回されることがあったこと。特に不安がもたらす効果が生産性低下をもたらすことが多かった。これを完全に絶つことは不可能ですが。
こうしてみると、うまくいったことと、うまくいかなかったことは案外同じ根っこをもっていることがわかります。
「これだけできる」と思ったことへの過信が生み出した失敗もあれば、それがうまくいっている部分もあるというわけですね。
そうした箇所はいわばレールの歪みや整備不良です。ゆがんでいるからといってその軌道を放逐する必要はありません。それを修正すればいいのです。よりよい軌道へと向かって。
さて、明日からは具体的なメトリックについて、そして来年の軌跡を描くための調整点について書いてゆこうと思います。