愛されるサービス、製品、ブログを生み出す「逆・漏斗」型の発想

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顧客を愛しなさいというのは、よくいう決まり文句です。でも自分の提供している製品・サービス・ブログ、なんでもいいのですが、それを広げようとする際に見失いやすい点でもあります。

Buffer の中の人がしばらく前に紹介していて知ったのですが、Mailchimp CEO Ben Chessbut さんのブログで通常「漏斗型」といわれるマーケティング手法を批判する記事を読んで納得したのでした。

英語のポンチ絵を日本語になおしてご紹介したいと思います。### 「漏斗型」と「逆・漏斗型」

ここでは Mailchimp のように人が大勢くればくるほど利益となるサービスの運営を念頭に書かれていますが、これはどんなものに応用してもかまいません。たとえばブログの運営に置き換えてみてもあまり違和感はないのです。

通常こうしたサービスでは、まだ課金をするまえに興味を持ってくれる「リード」を増やし、そのなかから顧客をつかむという発想をします。もちろん現実にはこうした流れしかないのですが、成長を急ぐあまり途中で発想がこうなってしまうケースもあるわけです。

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これだと、とにかく最初に大勢の人がサービスを通過することが必要で、その経過において機能や利便性をスパムのごとくアピールして彼らを「顧客化」しないといけないという理屈です。

Ben さんはこれを「まるでせっかく来てくれた人をコーヒーミルにかけるように見える」と評したうえで、しかも近視眼的だとも説明します。

Mailchimpのマスコットはサルなのですが、そのサルを模した猫の帽子キャンペーンなどを広告と楽しみの面白半分にやったりしているそうで、人々からは「いったいどういう戦略なんだ?」ときかれたりするそうです。

Ben さんのこれに対する答えは明確で、「戦略とかじゃなくて、客を喜ばせたり楽しませるのが僕らの仕事じゃないか」といいます。つまり漏斗は逆なのです。

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「この方が安定してるようにみえるよね?」とした上で Ben さんはこれを説明します。つまりこれは、まだ顧客が少ない初期で、マーケティングの予算もないときに特に有効な手段で、少ない顧客を尋常でないほどに大切に扱う戦略なのです。

「猫帽子」のキャンペーンが意味不明なのも当然なことで、それはすでに輪の中に入っている人のためのものなのです。

製品が十分に良いもので、大切な扱いをうけたならば、客は友人を呼んでくれる。そしてその友人もまた輪の中に入ってくる…といった具合です。

これは考え方の違いにすぎませんが、前者が「成長」を最大化する考え方とするなら、後者は「定着」を最大化する考え方で、入り口は違えど行き先は同じなのです。しかしみなさんなら、どちらの扱いをうけたいと思うでしょう?

どこにでも見出される「逆・漏斗」

同じ考えは、ブログのような個人メディアでも似てきます。PVを増やしたいというけれども、それは耳目を集める話題で訪問者をコーヒーミルにかけていることになっていないか? 他のどこでもない「自分の場所」で提供できている固有のおもてなしはあるだろうか? という発想になります。

そしてこれは、勇気のいる話でもあります。前者は心や意図を隠して続けることができるでしょう。でも**「逆・漏斗」は心を開く必用がある**のです。ほんとうに自分は何を伝えたいと思っているのかが、サービス、製品、あるいは文章などから伝わらないと成立しません。

成長を望むとき、どのような絵を描くのか? 漏斗の上が広がっているのか下が広がっているのかは、ずっとあとの頃になって自分の首をしめかねないのです。

Ben さんのブログではもう少し先まで考察が進められていますので、ぜひ元記事もどうぞ!

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。