帰ってきました!北極で役に立ったサービスと強制的なネット断ちについて
氷に囲まれた海をこえ、オーロラが光る凍てつく空をくぐり、高い波と永遠に続くかと思う時間を乗り越えて、ようやく北極から帰ってきました!
あまりに過酷な状況のために思うように記事を書くことは難しかったものの、それでもLifehacking.jp、そして北極観測ブログ、ライフ×メモという3つのブログで合計60個の記事をアップし、これまで研究航海ではなかなか行われなかったリアルタイムのつぶやきも継続することができました。
あまり参考にはならないかもしれませんが、この制限された環境で最も役に立ったサービス、強制的にネットから1ヶ月も隔離された効用や影響について書いてみようと思います。### 最も役に立ったサービス、メール経由のBuffer
メールでもブログを投稿できるようにしましたが、結局は回線さえつながっていれば XMLRPC 経由で MarsEdit から直接アップすることが楽な場合があるというのが今回の発見でした。
一方で、画像だけがはじかれるので Flickr に送ってから記事に html リンクを貼りこむなど、余計に手間がかかる部分もありました。Flickrに写真をメールで送信したらブログ用の HTML を返信する仕組みを作っておかないといけないなと通関しました。
狙い通りに、そして思った以上に効果があったのが Buffer によるソーシャル・メディアへの投稿です。
あらかじめ用途別にアカウントをちゃんと用意しておけば、あとは件名につぶやきを、本文の @p ハンドラや、@s ハンドラで行き先を1行で指定できるのは、どんなに苦しい時でもメールひとつ書く元気があればできる事なので重宝しました。もっとも、その元気がない日もありましたが…。
そして Buffer に入れておきさえすれば、日本時間で皆が起きている時間帯に順次つぶやいてくれるというのも、Buffer のすばらしさです。投稿する側の都合よい時間と、読む側の都合よい時間をマッチングしているわけです。
強制的なネット断ち
最初はなんとかニュースに追いつこうとしてみたものの、情報を取得するのにかかる手間と時間に対して、得られる情報量があまりに少ないためにそれも旅半ばで諦めてしまいました。いわば強制的な情報ダイエット、いや情報断食です。
東京オリンピック開催決定、「あまちゃん」ラスト、急に盛り上がったネットのゲームや用語。持ち上がったニュースや届いた訃報。すべてが分断され、文脈を半ば失ったキーワードの羅列としてのみ届きます。
そして気づくのは、どれほど速くひとつの話題が消費され、吟味されつくされることなく次に移ってゆくのかという、スピードの速さでした。
ぱっと燃え上がる花火のように、一つ一つの話題はどうやら数日間から一週間は関心を集めていたものの、すぐにツイッターのトレンドからもきえて観測不能な領域に消えていきます。どんな大きなニュースでもそうでした。
それは現在の情報流通の効率の良さを表していることでもあり、かつ、どれだけスルー可能な情報が溢れているのかということの示唆でもあります。
私みたいな人間には100%のネット断ちはとてもつらいものがあるのですが、だからといって全ての話題に目を配ろうと情報収集ツールにすべてを集め続ける必要もないということがあらためてわかりました。
一方で、「情報化社会」というものが「つながる端点同士でのみ成立するものだ」ということも意識できました。つながらない、情報環境が悪い場所にいる人にとって、世界の情報の総量は100分の1、1000分の1でしかないのです。
リアルタイム性も、ソーシャルな「つながり」として意識されるものも、端点の端末が存在すればのことです。それがなければ、私達は互いに別の時代に生きているようなものなのです。
意図的にある地域や人々を情報の流れから隔離することが、一種の「文化的戦争」になりかねないこと、接続しない情報群同士に必然的に発生するであろう緊張も、肌で感じることができました。
たとえばある国や人々に対して Wikipedia の閲覧を拒むだけで何が起こるでしょうか? 起こりにくいとはいえ、これは起こりえない話ではないのです。知らないところで情報の流れが分断していたら?
というわけでリハビリ中…
せっかく得た不思議な意識の眼鏡ですので、しばらくは不在中に起こった出来事を1つずつ拾いながら、通常とは違った、ゆっくりとした仕方で記事にしてみようかと思います。
時間が経過しても取り上げるべきものは、きっと重要な事でしょうから。
しばらくは海はこりごりだと思うのですが、すでに来年の乗船者名簿に名前が載っているという情報も伝わっており、はてさてどうなることやら…。
でもひとまずは、I am back!