回線の細い北極からブログとSNSを更新し続ける
食堂のご飯の写真ばかり送信していたら「本当は北極にいるんじゃなくて、社食に閉じこもっているのでは?(笑)」と Google+ で笑われてしまいましたが、ちゃんと北緯75度にいます。
船内では研究に利用しているイリジウム衛星回線、インマルサットと呼ばれる静止衛星を利用したメール用の回線、あるいは私用メール(Gmail / Yahooメール)のための、これも静止衛星の3系統があります。
どれも高速通信はできませんし、研究回線を私的に濫用するわけにもいきません。そこで今回はだいたいにおいてメールだけで完結する方法を作っています。
便利になってきた海外での通信ですが、通信量を減らすための参考になるのではないかと思いますので記事にまとめておきましょう。### メール投稿でSNSを更新できるBuffer
まず、ツイッター・Facebookの更新、しかも自分のアカウントと、公用のアカウント(@arcticjp)を使い分けながら更新するのには Buffer を使っています。
Buffer はあらかじめ予定したスケジュールでつぶやきを行ってくれるサービスで、Chrome などの拡張機能がたいへん便利ですが、メールによる投稿も柔軟で利用価値が高いです。つぶやきは固有のアドレスに送るメールの件名にいれ、本文にコマンドを挿入することで自在に更新が可能です。たとえば:
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@p mehori:で mehori というアカウント、この場合はツイッターを更新
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@s Facebook:で、Facebook サービスをすべて更新
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@now:でいますぐ投稿。これがないと、あらかじめ決めたスケジュールにプッシュされます。
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@link:リンクを投稿したい場合に明示します
このメールを、どのメールアドレスからでも送信しさえすれば、任意のアカウントが更新できます。船の場合、専用のアドレスを付与されることも多いので、この「from がどのメールアドレスでも」という部分はとても重要なのです(そのかわり、アドレスが流出すると悪用される可能性も)。
メールでブログを更新できる Wordpress Jetpack
ブログの更新には Wordpress Jetpackを利用しています。Jetpackにはさまざまな機能が含まれますが、そこにメールだけでブログを更新する email update 機能が含まれます。
ブログによってパーマリンクをきちんと設定したい、カテゴリが設定できないと困るといったニーズがあると思いますが、Jetpack はおよそ考えつく設定をすべてメール内でできます。たとえば:
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[category x,y,z]:カテゴリの設定
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[slug URL]:記事の slug を設定
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[delay +1 hour]:任意の時間だけアップを遅らせる。地球の裏側にいて、日本時間でアップしたいときなど便利
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[comments on | off]:コメントのオンオフ
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[more]:moreタグの挿入
などです。また、HTMLメールを利用して画像を送ることなどもできますので、普段通りのブログ執筆をメールでできます。
もっとも、イリジウム回線程度であればさほど通信量を逼迫せずに普通に XMLRPC 経由でのアップデートができることも今回の発見ではありました。
作業を自動化する IFTTT
そしてもちろん、かゆいところはウェブサービス同士の連携を自動化する IFTTT 頼みです。
たとえば公式の研究ブログが更新された場合に、自分の @mehoriアカウントでそれを告知したい場合は、「もし、ブログのRSSが更新されたら、ツイッターでこのフォーマットでつぶやけ」というレシピを入れておきます。時刻どおりの定期投稿も、IFTTT が便利です。
IFTTT レシピを合わせ技で使う場合もあります。たとえば Soundcloud に音声ファイルを送り、ポッドキャストを作成して、なおかつそれをツイッターなどで告知したい場合には次のようにします。
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IFTTTに対して #soundcloud というタグ付きでメールを送ると、添付ファイルの部分を利用して Soundcloud にパブリックの投稿を行う
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もし Soundcloud にパブリックの投稿が行われたなら、その URL と題名を利用して Buffer に投稿する
このような感じです。
事前の準備がすべて
これ以外にも、Flickr にも投稿とつぶやきを行う専用アドレスがあったり、メールだけでつぶやき、タイムラインの検索や返信ができる Yabmin というサービスだったりと、ブログやつぶやきに関して常に複数のルートをもつようにしています。IFTTT のレシピに関しても、まだ利用していないものが多数あります。
通信環境が悪い場合、いつ、どの手段が利用不可能になるのか予想がつきません。
たとえば静止衛星に関しては、赤道上の衛星は高緯度からみると限りなく水平線に近いところにあり、波が高い、あるいは舳先の向きが違うだけで通信ができなくなります。
その場合に、他の衛星回線を利用しても同じ結果が得られるように、さまざまに手段を用意しておくわけです。
みなさんがここまでチャレンジングな通信環境におかれることはめったにないかもしれませんが、山の上、海の上、たとえ宇宙環境でも、メールひとつ確保できるならさまざまなことができるというのは心強いことです。
そう、メールはウェブサービスの最小公約数的な機能であり、最後の頼みの綱なのです。