Flipboard Magazineのウェブ版で「キュレーションのキュレーション」が始まる

Flipboard mag

さあ、キュレーションのキュレーションが加速していきます。

めくるだけでコンテンツを流し読みできる Flipboard には先日から素晴らしい雑誌機能がありましたが、今回そのウェブ版が利用可能になりました。

つまりiPad / iPhone / Android 上で「この記事はいいな」と思ったものを、個人的に編集している雑誌上に「キュレーション」すると、それがウェブ情にも発行され、誰でも閲覧できるのです。

なんだ、それだけ? とおもわれるかもしれませんが、これがすべての始まりだともいえます。Flipboardはようやく**「情報がたどり着いて死ぬ場所」から、新しい情報の価値が生まれる場所**という進化を遂げたのです。### Fliboard Magazineへのアクセス方法と操作方法

さて、まずは Flipboard Magazineのウェブ版へのアクセス方法と操作方法をまとめておきます。

まだ Flipboard Magazine をもっていないという方は、Flipboard内で任意のコンテンツについている「+」ボタンを押してみましょう(Flipboardアカウントでログインしている必要があります)。新しい雑誌をすぐに作れます。

Flipboard sharing

自分のキュレーションしている雑誌はメニューの「マイ・マガジン」でみることができますので、そこで選択をします。

表示された雑誌の表紙には「共有」というボタンがありますので、ここで任意の SNS への共有、あるいはリンクの取得を行うことができます。

操作方法は動画に詳しいのですが、まとめておくと:

  • 左右キーでページをめくる。あるいは単にスペースバーで進む

  • Shift + 左右キーですばやく移動。Shift + Spaceで前のページへ

  • 1-9 の数字を押すと、そのページへジャンプ

となっています。また、共有、自分の雑誌への組み込みも、ウェブ版から行うことが可能です。

Fliboard mehori

あとは任意のコンテンツをクリックして詳細を読むことができます。Flipboardの雑誌はすでに多数がスタッフ自身によってキュレーションされているので、それをフォローするところから始めてもよいかもしれません。

キュレーションのキュレーションへ

Fliboardの雑誌機能は、ツイッターのように単に情報を拡散するだけでなく、自分の興味を一つの「雑誌」としてストリームにできるところが秀逸です。誰もが、どんな興味でもキュレーションすることができますし、人のキュレーションした雑誌から情報を取り込んでもかまいません。

このことは今静かに進んでいる一つの流れを加速します。つまり「誰もがキュレータである」という流れです。

つぶやきをリツイートするのであれ、Google+でリンクを共有するのであれ、はてなブックマークをシェアするのであれ、それは情報を手元に手繰り寄せて一つの情報の流れを発信するという要素をもっています。情報の受け手である私達が情報を濾しとっているのです。そのことは以前「あなたが情報のキュレーターにならなくてはいけない理由」という記事に書いたとおりです。

またこれは、残念ながら誰か特権的な「有名人」のキューレーターがいればいいという話ではないのですね。すでに情報の多様さは一人物が選択を担い切れるほど小さくはないからです。

Fliboard curation

Flipboard Magazine はさらに読者・キュレータの境界をぼかしていきます。

コンテンツを消費している何百万という個人がキュレーションする「雑誌」が作られる。そしてさらにその雑誌から抜き出した情報が新しい雑誌に流れ込むという「キュレーションのキュレーション」が生み出されることで、多様性を失うことなく、情報を搾り取ることができます。

上の図は非常におおざっぱにこの状況を模式図にしたものですが、誰かキュレータがいて、それに対する読者がいるという状況から、右側のすべての人が読者であるキュレータである状況になってると考えてください。

すると右側の端っこにいる読者などは、大きな丸のキュレータからではなく、彼の情報をさらに編集した別の「読者・キュレータ」からさらに一段階経て情報をうけとっていますが、情報がどこから来たのかなど別にどうだっていいのです。この読者がほしいと思えるものに出会えているなら、それでいいのですから。

具体的には、たとえばライフハック系ブログのMagazineが10種あったとして、そこからiPhone関連の情報だけを抜き出して新しいMagazineを作ってもいいですし、自分のAndroidに対する興味をそこに付加して新しいMagazineを作ってもよいのです。あるいは文具やガジェットとファッションをクロスオーバーした視点で複数のMagazineから情報を選びとって新しいMagazineにする?それも自在です。

自分だけの「はてなブックマーク」のホットエントリ一覧があると思ってもよいかもしれません。

キュレーションがログ化されてゆく

さて、そしてようやくこれが本題ですが、これまでFlipboard Magazineは、アプリのなかでのみ消化するものだったのが、「ウェブ版」が登場したことで話は一段と加速します。

ウェブ版のFlipboard Magazineはブログのようにログとして機能するのです。

Flipboard curate2

これまで Flipboard のなかでしか Magazine を見ることはできませんでしたが、これからはウェブのコンテンツとして自分の Magazaine を共有することもできます。

現時点で、Flipboard Magazineにもっとも似ているのはTumblr や Pinterest で、情報を自分の雑誌に組み込むのは Tumblr でいうところの reblog ですし、雑誌を選んで組み込むところは Pinterest のボード機能によく似ています。

しかし Tumblr / Pinterest もアクティブに投稿しているのでなければ Tumblr / Pinterest のなかにあるものをキュレーションしていることが多いわけで、Flipboard のように「情報を読む」ところから「共有」「キュレーション」「発信」するところまですべてがあるのは強みといえます(厳密にはTumblrも同じですが…)。

どんどんと膨大になる情報を、ただ読んで死なせてしまうのはもったいありません。かといってつぶやいて拡散しておくだけでも物足りない。Flipboardは、読むことがすなわち情報の選び取りで、そして次の発信へとつながるプラットホームを提供してくれたのです。

興味のあるかたはFlipboardでとにもかくにも一つ雑誌を作ってみて、そこにコンテンツを登録してみてください。読むことが発信へとシームレスにつながった未来を感じることができるはずです。

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。