「意志の力」には3つある。誘惑に強くなるための目標と価値観の使い方

Temptation1

私もまた意志の力がとても弱い一人にすぎません。ちょっと時間つぶしをしよう、ちょっと余計なものを食べようといった誘惑に負けることが多く、そのたびにどうしてこうなったのだろうと分析することがあります。

よくいわれることですが、誘惑に反応している瞬間の自分は短期的な利益に目がいっており、長期的な目標や価値観はそのとき忘れがちです。このことをアニメ動画で説明している動画を本家Lifehacker経由で知りました。### 意志の力の3種類

動画は心理学者で Kelly McGonigal さんの新刊「The Willpower Instinct」をベースにしたもので、ここでは意志の力に3種類があるということが解説されています。

第1が「I won’t」タイプの意思の力で、通常「意志の力」というとこれのことを指す、いわゆる誘惑に打ち勝つタイプの力です。「〜をしない」という否定形で表現されるために won’t になっています。

このタイプの意志の力だけだと、誘惑の種類やタイミングは無限にありますのでいずれは負けてしまうことがほとんどです。そこでシフトしたいのが、第2の「I will」タイプの力と、第3の「I want」タイプの力です。

第2の「I will」タイプの意志の力は誘惑に直面した瞬間、たとえばダイエット中にカロリーの高いお菓子を前にした際、「しかし自分はダイエットに成功した未来が欲しいのだった」と目標や価値観を思い出せるという状態です。

第3の「I want」タイプの意思の力は行動している際に常にこの将来の目標や価値観のイメージに基づいた行動をとっている状態で、ここまでくると誘惑を感じることも少なくなるので、この状態を維持するほうが楽になります。日本で行動している際に車道の左側通行を意識することがないのとどこか似ていますね。

それでは第2、第3のタイプの意志の力にシフトするにはどうすればいいのかについて動画は非常に簡潔にまとめています。例えば第2のタイプにシフトするには、ありがちな失敗パターンについて代替の行動を決めておくという方法です。

「ケーキを食べたくなったら、必ず代わりにもっと健康的な◯◯を食べる」といったルールを失敗するたびに設定することでケーキを別のものにすり替えていきます。これだけでも、誘惑に直面した時により長期的な行動原則を思い出す確率が増えます。

これだと「健康的でない食べ物」を「健康的な食べ物に」というすり替えを行なっていますが、それを今度はさらに「自分は健康的に生きたいと思っている」という価値観の思い返しとすり替えるのが第3のタイプへのシフトになります。これは第2のタイプのすり替えが十分にできるようになった段階で可能になります。

それほど新しい話というわけでもないのですが、この3つのタイプに簡単化された「意志の力」は第1のタイプで負けてしまっている人を責めるのではなく、テクニックとしてスムーズに第2、第3のタイプにシフトさせる手助けをしてくれるという点で魅力的です。

「〜をしない」という禁止型の意志の力だけでは負けてしまい、「なぜ自分は意思が弱いのだろう?」と思い悩むときは、ぜひ「自分はこの行動をなにと入れ替えるべきなのか?」と積極的な形でリフレーズしてみてください。自分を鞭打つ心が少し軽くなって、意思を貫きやすくなるかもしれません。

The Willpower Instinct: How Self-Control Works, Why It Matters, and What You Can DoTo Get More of It (Kindle版)

(via Improve Your Willpower by Reminding Yourself of Your Goals and Values | Lifehacker

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。