本当の自由は書斎から始まる。「あたらしい書斎」(いしたにまさき著・インプレス刊)

知的生活の栄養が本であるなら、書斎と本棚はその「器」です。
知的生活について語る場合、この「本」の部分を語られることが多いのですが、存外それを支えている書斎、本棚、机、引き出しといった部分は見過ごされています。
その「書斎」にフォーカスをあてたみたいもん!のいしたにまさきさんの新刊、「あたらしい書斎
」がインプレスから登場しました。
献本いただいた本をさっそく週末読んでいたのですが、つくづく「自分が書いてみたかった!」と嫉妬する内容です。
書斎とは作家や知識人だけのものではありません。忙しい人、知的な自由を感じたいと思っている人、自分の個性を見つめ直したいと思っている人、みんなに書斎が必要なのです。それはなぜなのでしょう?### どんな家にもほしい、せめて一畳の「自分空間」
書斎というと、万巻の書物が並んだ豪勢な本棚や、大成した知識人や作家の「城」のようなものをイメージするかもしれませんが、単に部屋の一角がその人のために仕切られているというのでもよいでしょう。
そこでは本を読むのでも、漫画を読むのでも、模型作りに夢中になるのでもいいでしょう。自分が自分らしいことをするための場所として空間が切り取られていること、これが「書斎」の基本です。
こうしてある場所が「こもる場所」「自分と向き合う場所」として確保されることで、私たちはメールや自動化された仕事に反応するだけの自分ではない、自由な自分自身をとりもどすことができるのです。
そのためにも、書斎は機能性と自分らしさを追求することが求められます。このことを「あたらしい書斎」では探検家松浦武四郎の「一畳敷」という、たった一畳の書斎に着想を得て、「一畳の書斎」として提案しています。
IKEAでつくる一畳の書斎
本書の魅力は前半で「書斎」がなぜ必要かという、実に私たちの内面に切り込むテーマから始まって、具体的に「一畳の書斎」を作る現実解へと手を届かせてくれるところです。
この解を与えるために、本書では IKEA の協力のもと、実際にいしたにさんがご自身の書斎をリニューアルし、さらにいくつかの書斎のレイアウト案も提示されています。
本や物が多い人にとって一畳という空間は「小さすぎる!」と思われるかもしれませんが、実際にはどんなに書斎が大きくてもいつも居る場所はその程度であったりします。
ようは、「手の届く範囲に何があるか」から書斎が始まっていて、何に囲まれたいかという質問が読者に提示されているといってもいいでしょう。それに答えるために、本書のなかではいくつかの書斎を実際に取材して、ヒントを与えています。
「開かれた」書斎
先人の書斎が洞窟のように籠もる聖地のような側面をもっていたのに対して、私たちのいまの書斎はインターネットにつながった世界への「開かれ」た側面ももっています。本書ではデジタルツールとネット環境によって書斎がどのように世界に開かれているかといった内容にも触れています。
また本書ではライフスタイルとしてのノマドが是か非かという議論のなかで取り残されていた、「オフィスをもたず自由に」ということは知的生産そのものに影響しないのか? という疑問にも触れています。
つまりは、ノマドが、クラウドが問題なのではなく、自らの知的生活の中心はどこにあり、どの方向に窓が開かれているのかというしごく当たり前なのですが忘れられやすいテーマがまとめられているのです。
江戸川乱歩の土蔵、404 Blog not Found の小飼弾さんの書斎など、いくつかの究極の書斎や住宅を取材して、知的生産の舞台としての「書斎」の魅力と必要性が語られてゆくなかで、自分もこんな書斎がほしいという気持ちがむらむらとしてきます。
というわけで!
以前から必要に迫られて引っ越しを検討していたのですが、本書を読んで物件を心に決め、引っ越しとともに新しい書斎を作ることにしました!
家内の理解もあって、これまで私は家のなかに必ず自分の「書斎」を作ることを許されていました。結婚当初は4畳、その後6畳で、現在は変則的な4畳の空間を占有しているのですが、本とガジェットがあふれ、整理しようにもバッファ領域がなくて手間ばかりがかかるのが現状です。また、夏と冬は暑すぎて寒すぎるという、気温条件に左右されやすい自分にはかなり厳しい空間となっています。
そこで、「あたらしい書斎」をヒントに、せめて6畳の空間で本棚も考え直し、もう一度書斎を設計しなおしてみることにしたいと思います。
時期は今年の年末から新年にかけて。その様子も順次報告していきます!
■ あたらしい書斎