iOS 6 のマップと Passbook が生み出す「出会い」のマーケティング
モレスキン・アトリエでお会いした @ezm_t さんに、Passbookで近くの木村屋でアンパンのプレゼントキャンペーンが行われていると聞きましたので、それは面白いとおもって足を伸ばしてみました。
Passbookは iOS 6 に追加されたデジタルクーポンのプラットフォームです。クーポン、映画鑑賞券、飛行機の搭乗券など、さまざまな応用が見込まれています。
しかしまだ国内ではあまり使える場所がないのかなと思っていたら、すでに多くのキャンペーンが始まっているのですね。まずは体験ということで行ってみました。### 道案内してくれるクーポン
クーポンは Passbank.jp で手にはいるということでしたので、iPhoneのSafariからそちらにアクセスします。木村屋のクーポンがありますのでこちらをタップすると、Passbookに登録されます。
Passbookには、クーポンの詳細や住所があります。この住所をたよりにマップで向かいます。
店の前でパンを配っていました。受け取りは Passbook のクーポンに表示された QRコードを使います。
アンパン!美味しかった! 私は土曜日の夕方に行って 289 番目ということでしたので、日曜日分、700個がまだあるそうです。キャンペーンは 9/23 日曜までなので銀座にいかれる方で、Passbookを使える方はぜひ!
マップ・Passbook・出会い
というわけで、こうしてクーポンの存在を知り、店を出てから10分でアンパンにありつきました。今回私が他の方から口コミでこのクーポンについて聞くことができたという意味は考えてみると大きい気がします。
今回は会った人から聞いたわけですが、なにも対面していなくても、私が有楽町にチェックインしたことをツイッターなどで知った人がわたしにクーポンのURLを送ってくださるというパターンでもこの流れは成立します。
これまではクーポンが手元に存在しなければ取引ができませんでしたが、クーポンそのものを抽象化することで、オンラインのコミュニケーションにキャンペーンを乗せて届けることができるわけです。
これまで店の名前とキャンペーンを広めるという目的のために、実際はクーポンが広められていましたが、これで本来あるべき姿に戻ったともいえるでしょう。
iOS 6 については「マップがひどい」といった意見が多く聞かれますが、アップルほどの会社が、それでも独自のマップを推進しているのには、こうした現実世界のサービスを iOS を通過させることで成立させようという強い意志を感じます。
つまりはユーザーと店の出会いを矢印で表現するとこういうことです。
ユーザーが店やキャンペーンに到達するまでに、さまざまなクチコミや情報の流れがありますが、Google は検索によって無数のサイトの情報を制していて、一度でもGoogleを通れば彼らにとっては win という Google+ 戦略があります。
逆にアップルは人気デバイスがありますので、iOS で強化された Twitter / Facebook 連携を通して**「owning the communication = クチコミを制する」という戦略をとっている**のかもしれません。
店を誰かに教えたいと思ったとき、その人が iOS デバイスをもっている場合にどのような手段があるでしょうか。
これが Passbook や独自のマップを通して行われれば、この矢印の上には独自のサービスや、課金を乗せることができるのですからアップルにとっての winです。
しかし、注意してみるとこの矢印がアップルにとって完成するには、独自のマップは不可欠です。またこの機能をサードパーティーがアプリで利用することで Google 以上に強固な囲い込みが成立します。これは怖い(笑)。すごいことを考えたものです。
しかし一方でGoogleにもAndroidがありますので、もちろんこのまますんなりとアップルだけの世界にはならないわけで、消費者にとってはネットとリアルが融合する実に興味深い時代に生きているとアンパンを食べながら思ったのでした。