スティーブ・ジョブズの「好きなことをしよう」の裏話

Passion

「自分が好きなことをしよう」「情熱を追い求めるんだ」

よく耳にするこのフレーズですが、去年亡くなったスティーブ・ジョブズのスタンフォード大学での講演での言葉として思い出す人も多いのではないでしょうか。

しかし情熱を追い求めるのであればなんでもいいとスティーブは思っていたのでしょうか。それともその先に「何か」を見つめていたのでしょうか。

最近になって、スティーブの伝記作家であるウォルター・アイザックソンさんが明らかにしたやりとりが、ヒントを与えてくれます。### 情熱と、歴史の流れ

最近開かれたパネルディスカッションで、ウォルター・アイザックソンさんは、ジョブズとのこのやりとりを思い出しています。

ああ、僕らはいつもパッションを追いかけろという話をするけれども、同時に僕らは歴史の流れの一部でもあるんだ。僕らは誰かが作ってくれたものを受け取って生きている。だからこそ僕らの人生は偉大であり得るんだ。

それがわかっているなら、この歴史の流れに何かを戻さないといけない。誰か他の人を助けるようなものを。それはたとえ小さな小石だったとしても、20年、30年、40年たった頃に誰かがそれをみて、「ああ、この人はただパッションをもっていただけではない。彼は他の人が喜ぶものを作ろうと心をくだいていたんだな」といってくれるようでないといけないんだ。

“Yeah, we’re always talking about following your passion. But we’re all part of the flow of history… And we take things out of that flow that other people have created. And that’s why our lives are so great.

So you’ve got to put something back into the flow of history that’s going to help your community, help other people, so that 20, 30, 40 years from now, even if it’s a small pebble you put back in, people will say, this person didn’t just have a passion, he cared about making something that other people could benefit from.”

アップルという起業がシリコンバレーで生まれたことにも、歴史的な必然が一部はあります。アップルの成功は、スティーブ個人の情熱に帰着するわけではないということをちゃんと認めた上で、彼は歴史に、社会に、なにかを還元することの重要性を述べているのです。

これは、「自分以上のものに向かって挑むこと」と言い換えることもできます。情熱をもって「自分を越えるもの」に挑戦する人、そこに個人の情熱が社会とつながり、奇跡を起こす秘密があるのかもしれませんね。

(via Study Hacks “Steve Jobs’s Complicated Views on Passion”

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。