人生を変える秘密はテクニックではなく、習慣

急で無理があったり、新奇なダイエット法はほとんど役に立たないということは世界中で有史以来発刊されたダイエット本が教えてくれているように思えます。

でもなぜ、私たちは多くの場合ダイエットの過程ではなく、手段の部分に注目してしまうのでしょうか。過程がすべてであるとわかっているのに。

いつもインスピレーションに満ちているセス・ゴディンが「急なダイエットと良い習慣」という記事で「急なダイエット法」とからめて、人生を変えたいのならというテーマで書いていますが、それは「変わることへの恐怖」そのものなのかもしれません。### 変わることへの恐怖とめくらまし

「急なダイエット法はたいてい効果がない。そして同様にセールスを上げるテクニックや職を得たり失わないためのテクニックも有効ではない」セス・ゴディンはいきなりこう切り出します。

「そしてそれが効果をもたないのは、テクニックそれ自体のせいではなく、習慣を変えないからだ」

つまり、ダイエットをしたい人ならこれから毎日運動をしてシャワーを浴びるという一連の作業が日常に組み込まれさえすればよいということになります。それ以上でも、それ以下でもありません。

業績をあげたいなら、資料を集めて読み込む、営業トークの練習といった業績をあげるための準備だけでなく、とにかく打席に立つことが最も近道です。秘密もなにもなく、ただ打席に立ち続けるだけです。

そのうえでセス・ゴディンは以下のようにまとめます。

Your audacious life goals are fabulous. We’re proud of you for having them. But it’s possible that those goals are designed to distract you from the thing that’s really frightening you–the shift in daily habits that would mean a re-invention of how you see yourself.

あなたの大胆な人生の目標は実にすばらしい。誇りに思ってもいいとおもう。しかしその「目標」はあなたを最も不安な事柄から目を背ける要因になっていることさえありうる。つまりは習慣を変えて、自分を再発見することから目を背ける口実になっているかもしれないのだ。

これは「大目標」を「中目標」「小目標」に分解するときに特にありがちな思考の罠です。

口では「自分は○○を実現したい」といっていても、今日どんな行動を変えることがそれを実現することに繋がるのかがあいまいなわけです。そしてそれがあいまいであることは、実際に行動を起こすことから私たちをシールドしてくれます。

これは何かについての「テクニック」にも同様の話です。この「ダイエット法がきくらしい」「この仕事術で自分も120%働ける」といったテクニックへの希求は、実際の行動をとる不安に対する目くらましとして実に有効です。

それよりは、毎日何をすれば目標に近づけるのかというボトムアップの思考のほうが難しくも、一番有効になります。

今日を変えられるなら、明日も変えられるかもしれない。明日の次はまた明日。テクニックが身につくかではなく、その小さな行動の変化の先にしか、人生という大きな航路の到着港の変化はないのかもしれません。

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。