あなたは変であればあるほど成功できる:Chris Brogan 基調講演 #WDS
World Domination Summit 二日目の挨拶に登場したクリス・ギレボーは「インスパイアされるだけでなく、アクションを起こしてほしい」と壇上で語りました。
いわゆる「気づき」などというものはそれだけでは意味がなく、行動を変えてこそ意味があるという彼らしいメッセージです。
そんなメッセージにふさわしい二日目最初のスピーカーはもう一人のクリス、ブロガーChris Broganです。彼は事前に1000人の聴衆全員にアメコミのスーパーヒーローのカードを配ってこんな話をし始めました。### 不合理な「恐怖」と戦うこと
「君が恐れているのはなんだい」
トランクを手にして壇上に登場したクリスはいきなりこう切り出します。
「馬鹿にされるのではないかという恐怖。与えられた舞台の上で期待通りのパフォーマンスができないという恐怖。知っている人を失望させてしまうという恐怖。でもね、恐怖の逆を知っているかい」
クリスはいすをステージ上に置き、トランクを開いて続けます。
「恐怖の逆は勇気ではない。恐怖の逆、それは『諦め』だよ」
クリスが聴衆全員にスーパーヒーローのカードを配ったのは、それが超能力を象徴するものであると同時に、スーパーヒーローは皆隠しごとがあるからです。
たとえばスーパーマンは無敵に見えますがクラーク・ケントという一般人としての素顔を隠しています。バットマンや、スパイダーマンも、素顔を隠していますが、隠されているのは顔だけでなく、生い立ちや弱点であったりします。この Secret Identity との相克、「私は何者なのか」という自問自答こそがスーパーヒーローの魅力の本質なのだとクリスはいいます。
「恐怖と勇気は手に手を取った存在なんだ。与えられた舞台ですごいことをやってみせるのが恐怖を我がものにするということなのさ」
そこから、クリスはスーパーヒーローが恐怖を我が物とする物語から学んだいくつかの教訓について語りました。
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他人の期待から自分を切りほどくこと: 「君は期待通りではない」「なんでこうしないんだ」という他人の意見は多くの場合あなたに対して抱いた間違った期待感の現れであったりします。また、賞賛の多くも「本当のあなた」に対するものではなく、同じように切りほどく必要があるものだったりします
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安住してはいけない: スーパーヒーローの物語は、彼らがもっている能力を超えてゆくときに輝きます。たとえスーパーマンであっても、その能力上手に使うだけでは物語は面白くありません。「自分はこれしかできない」と自分自身の定義に安住せずに実行したことだけが新しい自分を作っていきます。
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自分の「変」を受け入れる: もっと「能力」があれば、もっと「実力」があればと人はいつも願うものですが、そんな風にそつなくこなしているだけの実力者は面白みもなければ、注目に値しないこともあります。むしろ、どんな変な能力でもそれを活かしている姿が物語を生み出します。
「なぜアメコミにこんなにもスーパーヒーローがいるかというと、それだけの数の Secret Identity があって、それだけの数の物語があるからだ。君の超能力も、一つの物語になる」
しかしそれには、行動で実践しなければいけないとクリスは強調します。スーパーヒーローの物語は、彼らの超能力の物語ではなく、究極的には彼らが何を実行するかという人間性の物語だからです。
「だからこそ、『自分はこうしたい』という言葉ばかりを繰り返すのはやめて、実行に移すんだ。超能力がスーパーヒーローを作るのではない、彼らがなにを実行したかがスーパーヒーローを生み出すからだ」
クリスの講演は膨大な冗談やアドリブのパフォーマンスを含んでいて、まさに「技巧」の産物というよりは彼自身がどんな人間であるかをまざまざと見せつける、熱気に満ちたものでした。
逆にそうした暑苦しいほどの熱気で直接語りかけるからこそ、次の一言が生きてくるような気がします。それは他人に何度となく否定され、揶揄され、期待を裏切ったと非難されてもその都度、「いや、自分はこういう人間なんだ」と自分自身を定義してきた人の言葉です。
「きみは変であれば変であるほど成功できる。だから他人のシナリオやテクニックにとらわれているひまはない」
(写真:Armosa Studios)
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