WWDCで発表されたマイナーだけれども毎日を楽にする新機能

Appleの開発者向けカンファレンスWWDCが始まり、初日の基調講演では新しい Retina ディスプレイ MacBook Proや、より高速になった MacBook Airなどが発表となりました。

さらに iOS6、OS X Mountain Lionなど、目を引く話題がたくさんあってAppleファンにとって、あるいは長年のファンでなくても楽しい日だったのではないでしょうか。

しかし目を引く大きな発表に埋め込まれていたり隠れるようにして、地味に毎日の作業や生活を便利にしてくれる話題がいくつかありました。### iPhoto と Aperture の Unified Library

Whatsnew library

Retina MacBook Pro にあわせたアップデートが iPhoto / Aperture に来ています。

「最近デジタルカメラでちょっとまじめに写真を撮るようになった」という人も多いと思いますが、撮影している当人はより高機能な Aperture を使っていても家族は iPhoto を利用しているのでライブラリが2重化していて面倒くさいというデメリットがいままでありました。

今回のアップデートで、Aperture と iPhoto は Unified Library によって互いに同じライブラリを利用するようになりました。写真のインポートは必要なく、写真の編集、フォトアルバムの作成などは互いに反映されます。

細かい編集をApertureで行い、アルバムの閲覧、カードの作成などは iPhoto で行うといった使い分けが可能になります。

OS X の共有機能

Sharing

TwitterやFacebookが iOS / OS X と深く連携するようになって、アプリの側でも情報の共有が1クリックでできるようになります。

OS X Mountain Lion では全てのアプリに共有ボタンがあって Twitter / Facebook / Flickr などに情報を送ることができるとされています。

あまり期待してはいないのですが、この共有機能、EvernoteやBufferといったその他のサービスにむけてAPIを公開してくれるようだと本当にうれしいのですがどうでしょう。すくなくとも Evernoteは期待して…いいよね?

Passbook

Passbook

iOS 6 の機能として提供される Passbook はクーポンや飛行機のボーディングパスなどを扱うことができるプラットフォームです。なんだ、「おサイフ機能」のかわりか、と残念に思った人もいるかもしれませんが、私にはこちらのほうが非常に魅力的に感じます。

Suica / Pasmo のような電子マネーカードやクレジットカード、銀行カードよりも、むしろ利用頻度が少ないけれども持っていないと損をするスターバックスカードや、店のメンバーシップカードをこのようにデジタル化してくれたほうが私の財布はずっと薄くなります。

また、これまでは飛行機のボーディングパスを Evernote に入れたりなどしていましたが、最新の情報に基づいてゲート番号の変化に対応したりする Passbook のほうがなくしにくく、便利です。

最新の情報にアップデート可能ということは、たとえばスターバックスの夏の新商品についての情報が Passbook 上に表示できたりなどという具合に、サービス提供側にとってもメリットは大きいのかもしれません。

また一つ、お金と情報の流れがデジタル化した気がして期待大です

iCloud Documents on Air のインパクト

Icloud doa 以前も書いたように Mountain Lion では Mac と iOS との間でデータが双方向で同期されます。

Pages / Keynote ドキュメントを職場の Mac で作成し、iPhone上で編集し、ノートパソコンを開けばすべてが同期しているという状況がすぐそこまでやってきています。このことは、これまで Mac は Mac、iPhoneはiPhoneという具合にわかれていたデバイスが一度にiCloud上ですべて結び合わされることも意味しています。

同様の同期は iCloudを使う他のアプリについても期待できますので、これまで同期がなかったり、独自に提供していた OmniFocus や Things といったタスク管理アプリや、Scrivenerのようなエディタでも同期が実装されやすくなるのではないかと期待しています。

より自由になったフォトストリーム

Photostream

フォトストリームは iPhone で撮影されたり、iPhotoから追加された写真が iCloud上で一つのストリームとなって同期される機能です。

ユーザーはデバイス間における写真を同期を意識していなくても、フォトストリームのおかげでちょっと子供の写真を家族にみせたいときなどに iPad を取り出すだけでよくなります。

iOS 6 ではフォトストリームから数枚だけを選んだり、フォトアルバムの単位で指定した人と共有することが可能になります。つまり家族の写真だけ、仕事の写真だけといったストリームの支流をつくって共有することが可能になるわけです。

写真共有サイトにフォトアルバムを作って、プライバシー設定をして、共有リンクをメールで送ってといった作業が大幅に短縮されるなら、写真を共有するときのハードルが下がりそうです。

まとめ

今回の WWDC 基調講演はハードウェアの更新がとても目を引きましたが、その裏側では OS X と iOS の統合が着実に進められているといえます。

その接着剤となっているのは iCloud で、この10年のAppleの成長がiTunesとともにあったのと同じように、今後はiCloudが要になるということがみえてきます。

Mountain Lionは来月、iOS 6 は秋にリリースとなりますが、これらのマイナーでも生活を変えてゆく新機能を待ちたいと思います。

でも新しい Retina MacBook Pro 触ってみたいなあ(笑)

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。