「クラウド『超』活用術」は、まさしく「超人」のためのクラウド本だった
著者から献本いただきました。ありがとうございます。
日々新しいサービスや、iPhoneアプリがどんどんと発表され、このブログでも紹介しています。
ひとつひとつはとても便利なのですが、それをどのように自分の生活に当てはめればいいのかわからないということもあるでしょう。ともすれば新しいツールに振り回されているという状態になりかねません。
そんなとき、それらのサービス、アプリをすべて使いこなしている達人の意見を聞きたい、一つの羅針盤がほしいと思います。本書はそんな「超人」によるクラウド活用術といえるでしょう。
どんなところが「超」なのか、どんな人におすすめなのかみてみましょう。### 誰のための本か
本書の目次をみると、さまざまなキーワードが垣間見えます。情報マネジメント、セルフマネジメント、ライフログ、Evernote、ツイッター、Toodledo…。
著者がイメージする「クラウドを使いこなしている人」とは、これらすべてのツールにそれぞれの役割を担わせ、普通に手動でこなしていたのでは足りない面を補強する、いわばクラウドサービスと融合した人といえるでしょう。それが如実にあらわれているのが次のページ。
Evernote、Googleカレンダー、Toodledoを軸として、さまざまなアプリやサービスが衛星のように取り巻き、それぞれがそれぞれの役割を演じています。たとえば入ってきた情報をキャッチして、適切な場所に格納する、あるいはブログ記事にするまでのフローがあります。あるいは、自分だけのライフログを取るためのフローがあります。ソーシャルメディアからインプットをもらうためのフローもあります。
革命的に新しい方法はないかもしれませんが、ここまで一つのアプリ群の連携を作りこんだ人は過去にいなかったのではないでしょうか? さすがは「超」活用術。
本書を読めば、アプリやサービスを雑多に使っていてオーバーラップしたり、いまいち役割が絞り込めていなかったという部分を明確にすることができるでしょう。
すでにクラウドを活用しているけれどもさらに一段階上の活用方法を模索したい人にはおすすめです。
たった一つの危惧
しかし危惧もあります。北さんの本はまさにキッチンシンクの状態で、クラウド・ライフログ・iPhone・情報整理・Evernote・Toodleなど、ありとあらゆるキーワードが投下されています。それぞれと連携しなければいけないアプリの数ときたらたいへんなものです。
読んでいて一つだけ気になるのは、いったい、どうしてこれだけのことをできる時間が作れるのか? そもそもどうしてこれだけのことをしなければいけないのか? という点があまり明確ではないというところです。
「クラウド『超』活用術」の世界観は、「成果」なるものを明確にしないまま、利用するサービス・アプリ、そして処理する情報をより増やせば成果やクオリティは増えるとしている気がします。
でも、情報をより膨大に処理すればより多くの成果が得られるというものでもありませんよね。最近出版された勝間和代さんの「ズルい仕事術 」のまえがきでは、「新しい価値をより少ないインプットで生み出し」とあるのも思い出されます。付加価値の視点からいえば、この方が王道です。
便利なツールもウェブサービスもたくさんありますが、どうやったら overwhelm されずに、人生の価値や幸せを増す形でそれを使いこなせるのか? これってまだまだ答えを求めるべき疑問という気がします。
というわけで、本書はすでに「自分は何を生み出すべきかわかっている」「自分にとって求めるべき価値、成果は自明だ」という人には切れ味のよい武器になるでしょう。さもなければ、持ち上げることのできない長物になりかねない。そこだけは注意したいところです。
あなたはこの剣を引き抜けますか?