「ひとの役にたっている」何かを一つもつべきことについて

Sharing

「〜すべき」などという言葉はどんなときでもなるべく避けるようにしていますが、「ひとの役にたっている」という何かを、誰もが一つはもっていなければいけないと思うことがあります。その理由について書きたいと思います。

このブログ、Lifehacking.jp ではアフィリエイト、本の印税、その他の形で得た収入の10%を目標に寄付などの社会貢献をしています。

その一環でおこなっていたマイクロファイナンスのサイト Kiva の融資件数が先日100 件を超えました

Kiva は発展途上国のアントレプレナーに対して少額から融資を行なって支援をおこない、融資をうけた人はそれを少しずつ返済するという「何度でもお金が活用される支援」です(日本語の詳しい説明はこちら)。

Kiva で融資をおこなうと、毎月のはじめに返済がされたという通知がやってきます。出資額にもよりますが、たいていそれは本当に少額で、せいぜい数ドルずつだったりします。

私は主にアフリカの、女性を中心としたアントレプレナーを選んで出資しているのですが、彼女らが地球の裏側で融資されたお金を活用して仕事を営み、私の昼食一食分程度にすぎないお金を返してくださるために努力していると思うとき、なんだか心のなかに火が灯るのを感じます。

慈善のつもりで始めた Kiva でしたが、私はこれをいまでは privilege =「支援させていただけることが栄誉」だと思っています。### すべてはめぐってくる

そしてあるとき、前触れもなくその日はやってきます。唐突に振りかかる不幸や、自分だけではいかんともし難い障害。心の冬のときや、何をしてもうまくいかない逆境の谷底。

ライフハック? そんな詰まらない小細工の底の浅さが露呈して、無力さばかりがまざまざと感じられるとき。

そんなときに、Kiva からやってきた定形のメールが私を救ってくれることがあります。

私が(間接的に)融資したお金を使って、遠い国でそれに報いるべく頑張っている人がいる。新しいビジネスを立ち上げ、家族を養いつつ、こつこつと時には数年かけて返済している人がいる。そう思ったとき、自分も何かの役に立てている、自分は無力ではないと信じられるようになる気がします。

これは Kiva などの募金や融資に限ったことではないと思います。ソフトウェアのプロジェクトにコミットしていることや、コミュニティやイベントを運営していることでもいいでしょう。あるいは家族や友人のつらいときに、そばにいるだけでもいいはずです。

なにか「ひとに与えている」部分が一つでもあるとき、それは巡り巡って自分のもとに返ってくるのです。だから私は Kiva の活動を慈善ではなく、「支援させてもらえること自体が幸運であり、またとない栄誉」だと思うのです。

ライフハック、仕事術の何がつまらないかというと、それがそれだけでは「自分のためにしかならない」「自分のことしか考えていない」ものだという点です。

自分のために努力することは当然のことです。しかし少しだけ、だれか人のために何かをコミットしておけば、それがめぐりめぐって、自分で自分を助けられない瞬間にあなたを助けてくれるかもしれない。私はそう信じています。

2011年はさまざまな不幸なできごとや、大変なできごとが続いた年でした。誰もが、人のことをかまう余裕がない危機の時でもあります。

だからこそ「なにか人の役に立っている」というルートが一つでもあることは、来年に向けて精神の命綱をつくることともいえるのです。

説教がましくて申し訳ないのですが、この一年の締めくくりに心にとめていただければ嬉しく思います。

みんなで来年を、よりよい一年にしましょう! このブログでもいろいろと新しい挑戦を考えています。それをシェアできる日が待ち遠しいです。良いお年を。

Happy Lifehacking!

p.s.

この記事で Kiva に興味をもったというひとがいましたら、ぜひこちらのリンクをつかって登録していただければ、招待した人数が私の lender page の統計に加算されるのでよろしくおねがいします!

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。