あなたの過去は、あなたの未来。Evernoteの2つのアプリが示すライフログの価値
電撃的に公開された Evernote の二つのアプリ、Evernote Hello と Evernote Food をめぐって、GigaOM でこれを「Evernote joins the battle for the past」と表現している記事がありました。
面白いと思ったのは、「battle for the past」=「過去をめぐる戦い」という表現です。これまで Evernote は非常に自由度の高い、なんでもキャプチャできることをうたったサービスでした。
それが今回、機能を「コンタクト」と「食事」に制限した、いわば使い方を明示したアプリを投入してきたのですから、これまでの戦略とは一線を画しています。
なにが Evernote をそうさせたのでしょう? そして記憶のプラットフォームが向かう先はどこなのでしょうか?### あなたの過去は、あなたの未来
「過去を記録する」アプリはすでにたくさん存在します。ツイッターや、SNS においてあっという間に消費されてゆく「今」を惜しむように、写真のログとストリームを形成する Instagram、位置情報を記録する Foursquare、食べ物を記録する Foodspotting や miil、時間をログするさまざまな時間トラッキングツールといったようにです。
しかしこれらのサービスはすべてそれぞれのサービスに情報が存在するため、Instagram であれば Flickr へデータを二重化するといった利用法がされてきました。
ここに、Evernoteの強みがあります。Evernoteはなんでもいれることができる記憶のプラットフォームがすでにあるのですから、共有ではなくてデータを記録することが目的なら、なにも他のサービスを使うよりもEvernoteから派生したものを使う方がよいのです。
しかしそのために Evernote iPhoneアプリを使うのは多少無骨でした。Phil がサンフランシスコで行われた Evernote Trunk Conference で言ったように、「駅で3分あったらEvernoteをみる」といったカジュアルな利用方法には向いてはいません。
今回 Evernote が投入した二つのアプリは、自由すぎて利用方法がわからない、利用するタイミングがわからないという人のために「Evernoteへの近道」を用意しているわけです。
Facebook のタイムライン、Path のスマートジャーナル、あるいは Instapaper のアーカイブ一覧のように、「今」をクラウド上に保存されたデジタルな「過去」として保存して、未来につなげるという分野はますます競争が激化しています。
というのも、次第にデータの価値が低減する「単なるデータ」と違って、ユーザー本人が覚えておきたいとおもったからこそ保存している過去ログは常に価値が増え続けるという特徴をもっているからです。
過去を未来につなげれば、そこには価値があります。今後、Evernoteはこうしてログを蓄積しやすくするいくつかの道筋を作りつつ、過去から有益な情報を得るためのデータマイニングの道筋も作ってくるのではないでしょうか。「Evernote ギャラリー」と仮に名付けられて予定されている新機能は、きっとそれを可能にする仕組みなのでしょう。
ライフログは単に記録してニヤニヤするためのものではなく、未来を先取りするものでもあるのです。それにいち早く気付いたサービスの競争が続きます。
象さんは生き残れるのでしょうか?