「スティーブ・ジョブス 驚異のイノベーション」刊行記念イベントに行ってきました
先日紹介しました「スティーブ・ジョブズ 驚異のイノベーション 」の刊行記念イベントに行ってきました。
今回のイベントには著者のカーマイン・ガロさん、解説を書かれた外村仁さんのお二人が参加されていて、本の内容についてのプレゼンと、Q&Aのセッションを聞くことができました。
来場者とのディスカッションも楽しむことができたイベントの様子をまとめておきたいと思います。### 情熱が、世界をつくりかえる
カーマイン・ガロさんが本書を書いた理由の一つは、厳しい経済状況の中でどのようにしてジョブスとアップルがイノベーションを通して大きな成長をとげることができたのか? という秘密を探ることにあったといいます。
その秘密が**「情熱を傾けること」「ビジョンに賭けること」**であることをカーマイン・ガロさんは強調します。わかりやすく聞こえるのですぐにうなずいてしまいそうですが、これはなかなか当たり前のことではありません。
カーマイン・ガロさんが提示した例のなかで印象的だったのが、マウスやGUIといった新しい技術を前にしてゼロックスとアップルの反応の違いについてでした。
技術を見つめる際にアップルが**「すべての人が利用できるコンピュータをつくる」というビジョンをもっていたからこそ**、マウスや GUI をもったマッキントッシュという革命的なマシンが誕生したのであって、逆ではないという逸話です。
ビジョンは世界を作りかえる力です。でもそれは同時に、「いまうまくいってるもの」を放り出して、新しいものを生み出すリスクの高い行動を促す劇薬でもあるのです。
これを一般の人が実践するには、どのようにすればいいのでしょうか?
自分を信じられるか?
イベントの後半では会場からの質問も交えてのディスカッションを通して、どうやってイノベーションを、ビジョンを実現するのかという議論が行われました。かいつまんで紹介したいと思います。
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ガロ「情熱は敗北から守ってくれない、でも敗北に打ち負かされないようにしてくれる」
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ガロ「違うものとの組み合わせによってイノベーションがはじまる。マックの Mag-safe コネクタは日本の炊飯器に着想を得た」
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外村「バーチャルなものではなく、実際に目で見て、手に触れることで、物に対する感度が上がる」
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外村「イノベーションは発明だけではなく、もうすこしよいやり方をつくるといったように、本の内容を実践することでどんなレベルからでもボトムアップでできる」
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ガロ「運と環境は大事だけど、ビジョンを実現するチャンスが与えられたときにそれをつかむという最後の鍵は自分しか開けない。そこで情熱が必要になる」
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外村「シリコンバレーでは、スタートアップを成功させた人は『運が良かったのさ』と素直に言う。それは、成功を素直にうけとり、失敗しても次に向かいやすくする考え方」
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ガロ「震災のようにたいへんな時期こそ、大きな夢を描くこと
先日の記事では、「スティーブ・ジョブス 驚異のイノベーション」を読んでいて、本書の「7つの法則」があえて曖昧に書かれていると書きましたが、その理由がそこはかとなくわかる気がしました。
ビジョンをもつこと、情熱を追い求めること、失敗を恐れないこと、こういった言葉はそのままでは「お題目」にしか聞こえない部分があります。それを掲げても、失敗をおそれる人々にはにわかには信じられません。
本書の最大の魅力は、スティーブ・ジョブスという稀代のCEOの半生を通して、こうした価値観を信じられるようになる、それが嘘ではないんだよと確信をもてるようになる点なのだなと思いました。
イノベーションとビジョンを起こせると信じている人には、それはすでに生き方であり、不安も、リスクも、不確定さも、すでに引き受けたものなのです。
自分を信じられますか?