ライフハック以前のあたり前のこと

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サイドブレーキをひきながら車を始動しても動きに足かせがついて走りにくいですし故障の原因になります。でもそれを解決するのにエンジンをチューニングしてもしょうがありませんよね。

それと同じで、日常にはライフハック以前に愚直に実践してさえいれば、それだけで格段に能率が上がったり、楽になることが多くあるとよく感じます。いや、そういうものばかりだからこそ、あまりこのブログで「こんなライフハックが…」という話にならないわけでもあるのです。

たとえば今日はこんな話題についてツイッターでつぶやいていました。

米航空管制官の勤務態勢改善 居眠り相次ぎ、防止策 | asahi.com

寝不足は米国で社会問題になっており、疾病対策センター(CDC)は、3月に発表した睡眠に関する調査で初めて居眠り運転経験の項目を追加。過去1カ月間に昼間に居眠りをしたことがある人が37.9%、居眠り運転経験がある人が4.7%に上っていた。 (中略) またCDCの別の調査では、睡眠時間が7時間未満の人の23.2%が「集中しにくい」、18.2%が「物事を記憶しづらい」と訴えていた。

この記事をハック的に「集中力と記憶力を強くしたかったら7時間以上眠ること」と読むのはもちろん可笑しいですよね。

よく記事を読んでみれば、「7時間以下」の数字があるだけで7時間より多く眠っている人が記憶力と集中力が強いという数字はありません。でもこの数字になんとなく納得してしまうのは多くの人が8時間ほど眠るのが適正だとわかっているのに7時間以下、時には4時間から6時間しか眠っていない、という痛いところを実にさりげなく突いているからです。

忙しいのもわかりますが、いずれにしても眠らないことには死んでしまうのですから、毎日1時間多く眠ることで生産性が少なからずアップするなら、眠らずに続けた場合を相殺して余りあるというということも大いにありうるのではないでしょうか?

手っ取り早く能率をあげたいなら、無理をせずに眠るのはまさにハック以前の話なのですが、それを認めて向き合うのはどことなしか後ろめたい、その気持ちは私にもよくわかります。

同様の話は日常にありふれています。

  1. 忘れ物が多い人はかごやトレイを用意して、前の晩に忘れてはいけないものを一箇所にまとめておく。ハック以前に当然の日常習慣ですが、これだけで忘れものはほとんどなくなります。

  2. プレゼン術を学ぶよりも、プレゼン前に2回通し練習をするだけでプレゼン力は飛躍的に向上しますが、いくら言っても聞いてくれる学生は少なかったなあ…。

  3. 普段から本を読んでいれば、読書のスピードと記憶力はそれなりに強くなって困らない程度になりますが、「読書術」から入りたくなること、よくありますよね…。

そもそもこうした事を日常的にきちんとこなしている人はライフハックなんて言葉を知らないはず…なんて言ってしまうと身も蓋もないのですが、せめてこうした「ライフハック以前」のことが実践しやすくなるように、リマインダやワザを作るところから始めてもいいのでしょう。

ただ、ライフハックが日常の常識より上にあると取り違えてしまうと、奇妙な逆転に足をすくわれてしまいます。

それがワザを頼りにする私のような凡人がいつも注意しなくてはいけない落とし穴なのです。

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。