[書評] いつも三日坊主のあなたが続ける人になる50の方法・佐々木正悟 (中経出版)

Habit50 ライフハック心理学の佐々木正悟さんから献本いただきました。ありがとうございます。

この題名をみれば、たぶん中を開く前から本書に対するイメージはかなり確定していると思います。なるほど「習慣」の話か、そしてそれを続けるための方法が50個書いてあるのか、と思う人が多いはず。

でも佐々木さんの本をご存じの方なら、「何かちょっと変化球が入っているはず」と思うことでしょう。鋭いひとならお察しの通り、題名が「続けるための方法」ではなく、「続ける人になる方法」となっているあたりにライフハック心理学的なスパイスが入っているのです。

「続けること」は目的ではない

ちょっと言葉遊びみたいになるのですが、ダイエットであれ、言語やスキルの習得であれ、ブログの執筆であれ、何かの習慣を実践したいと考える場合、その多くは「続けること」それ自体に意味があることはまれです。

ただ、ダイエットみたいに一日や二日では目的を達成できないことが多い、続けないと「目標とする場所」に行けないので続けるということはよくあります。

でもこの2つ、実は等価ではありません。

Notequal

前者は続けることが目的になっていますが、後者は続けることである場所に行きたいという、目的に対する手段として「習慣」が導入されます。

情報ダイエット仕事術 」でも書いたのですが、前者に立つとなにがなんでも続けなくてはいけませんので苦しくなりますし、なにより目的を見失いがちになります。

それに対して後者はもうちょっと泥臭くて、「目的を達するためならどんな方法を使ってもとりあえず続けてしまえばいいじゃないか」という態度がとれます。

本書は、この「どんな方法を使っても続けられる人になる」という部分に力点が与えられた本なのです。

あの手この手で続けてみる

本書には、習慣が続かなくなる心理的な罠とその回避方法が数多く掲載されています。たとえば記憶力と習慣形成の失敗との関係など、習慣術が「根性」だと思っていた人には目からウロコかもしれません。

あるいは、ただ単に「早起きしよう」「運動しよう」と考えてしまうことで、何も始める前から失敗の準備をしている可能性があるという話題にも、心理学的な説明が与えられています。完全強化の話や、ヤンキース・ドットソンの法則など、実際に行動を起こすときに参考になる知識もふんだんに紹介されています。

人間の心理には理屈の通用しない独特の力学がありますので、そのレールの上に「実践したいこと」をのせる方法について説明がたくさんあるのが本書のメリットです。

習慣づくりを「いかに続けるか」という形でとらえていた人は、本書を利用して「続けられる心理状態をいかに耕すか」という形に捉え直すことで、気持ちが楽になるはずです。

載っている「あの手この手」の習慣形成方法を試すだけでも楽しいはず。新年度に新しい習慣を作りたいと考えている方は、どうぞ!

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。