Google +1 であなたはウェブをキュレーションしてゆく
しばらく前から Google の検索結果で「一番上の結果」は一意ではなくなっていました。つまり、過去にどのような検索をしたかが、結果に影響していたのです。あなたが「ライフハック」で検索した結果は私のものとは違うかもしれません。
こうした検索結果のパーソナライゼーション(個性化)は、きめこまかく様々な言語圏、文化圏、クラスタに属している人にそれぞれ重要な情報を伝えるべく進化してきましたが、これまではユーザーのクリックといった行動だけがこのシステムにフィードバックを与えるだけで、フィードバックの生態系は脆弱なものでした。
そこで今日登場したのが、Facebook の「いいね!」ボタンのように検索結果をレコメンドする Google +1 ボタンです。
Google +1 を使ってみる
Google +1 はまだ英語版の Google のみの実験的機能ですが、有効にする場合はこちらからできます。
そして普通に検索を行うと、+1 のボタンが検索結果に表示されるようになります。手前味噌ですが押してみたのが次の画像。
こうした承認画面がでますので承認します。ここで、この「+1」の情報を利用して検索結果と広告をパーソナライズするかというチェックボックスがありますので選んでおきましょう。
また、Google Profile を利用している人は、+1 の結果をタブとして表示しておくことも可能です。+1 のタブから、「Show this tab on my profile」を選択しておけば、どのような情報に +1 をしたのかが、他の人にも見えるようになります。
+1 ボタンは最初は検索結果に対してのみ付けられるようですが、今後は Picasa の写真や、ブログの記事といったさまざまな情報に対して付けられるようになる予定だそうです。ブログにはりつけるボタンがまた一つ増えるのか…とちょっと複雑な思いですが…。
フィルターバブルを破る、一突き?
Google の動画には「+1で、ウェブをちょっとよい場所にしよう」と明るいメッセージがありますが、もちろん実情はそれほど陽気なわけではありません。Facebook という、現実の人間関係の上に構築された「いいね!」の網目への対抗策です。
一つ注目しているのは、Google +1 の場合、Facebook の「いいね!」よりも新しい情報を探しにゆくときに使われるために、ソーシャルバブルを破りやすい可能性がある点です。
わかりにくい概念ですが、検索結果のパーソナリゼーションは、それを共有する似たもの同士の間で情報が並列化されてしまうソーシャルバブル(情報の閉じた泡)を生み出すといわれています。
たとえばライフハックについて興味のある人同士のクラスタ内で「いいね!」「+1」される情報は閉じたサークル内で強い意味をもっていたり、価値を認められる反面、それ以外の情報を遮断してしまうわけです。極端な話、中東情勢に興味をもっていないクラスタの人が「中東」と検索した場合、観光名所はヒットしても、エジプト情勢もリビア情勢も入りにくくなるということだってあり得るのです。
Google +1 は検索結果という、「知っている知識の境界面」への近道ですので、新しい発見、興味、好奇心が流れ込みやすい、それだけソーシャルバブルを破りやすいのではないかと思われます。
攻殻機動隊 S.A.C. に出てきたセリフを引用するなら「情報の並列化の果てに個を取り戻すための可能性」としての「好奇心」というわけですね。
+1することであなたの価値観が波及する
そんな「+1」ボタンを押すことになんのメリットがあるのかと話題になっていますが、よくよく考えると Facebook の「いいね!」もクリックすることにそれほど直接的なメリットがある訳ではありません。
ただ、ほんの少し「これいいよ!」と、その情報に対して中立的な立場にいる人を自分の側にたぐりよせる役割を帯びているに過ぎません。同じ力は検索アルゴリズムに対してもかかっており、あなたが「+1」したという影響は、ほかの何万という「+1」といっしょにウェブに波及していきます。
直接的には Google Profile を通してあなたとつながりのある友人たちに、より間接的にはウェブ全体に、あなたの価値観が広がっていくのです。限られた「知識人」や「ジャーナリスト」がキュレーションを行う時代が終わり、誰もが情報のキュレーターであるというのはこういう意味なのでしょう。
難しい話のようですが、誰もがこれまでと同じようにウェブを閲覧し、ちょっといいなと思ったものに「いいね!」や「+1」をつけてゆくだけのことです。そうした一つ一つの行動がバタフライ効果となって、ウェブ全体に波及してゆく。
そんな可能性と楽しみが、この小さなボタンには含まれているのです。