脱メールの仕事環境「EC studio チャットワーク」を使ってみた (後編)
以前から「iPhone情報整理術」や「できるポケット+Evernote」の執筆においてはチャットを利用してきましたが、まだまだ電話やメールを中心としていてチャットで仕事をしたことがないという人も多いかもしれません。
そこで今回レビューさせていただいている「EC studio チャットワーク」を例にとって、チャットで仕事をする際の作業の流れと、注意点についてまとめておこうと思います。
百聞は一見にしかずですので、開発者のかたに質問したチャットの画像も見ていただいて、チャットワークによる仕事がどのようなものになるのかイメージをしていただければと思います。
職場でチャットワークの導入を考えておられる人は、必ずと言っていいほど周囲の人の説得をする必要があると思いますが、その助けになれば幸いです。
コミュニケーションにチャットを加えると何が良い?
チャットの最も大きなメリットは「非同期な会話が実現できる」という点です。非同期であるというのは、「会話が同時に進まない」という意味ですが、その極端な例が「送信→返信→再返信」という具合に進むメールです。
逆に電話は会話している両者が同時に会話していますので「同期」していますが、お互いの時間を同じ分だけ拘束してるというデメリットがあります。
また、チャットの場合、同時に書き込んでいれば電話のようにもなりますが、互いの書き込みが数分から数時間遅れていたとしても会話の流れが途切れないというメリットがあります。電話のように横入りすることなく、お互いの空き時間を能率よく融通しながら会話がよどみなく続くというのが非同期対話の魅力です。図にすると以下のような感じです。
もちろん、チャットを利用することは相手がどこにいるかということに依存しませんので「空間の非同期」も実現できます。会話の相手はとなりの席に座っていてもよいですし、どこか遠くでチャットルームにアクセスしているのでもいいのです。
電話の場合は会話を録音したりメモしたりしないと保存することができませんが、チャットは会話そのものがログになっているというメリットもあります(チャットワークではまだログをエキスポートする機能はありませんが、今後追加予定だということです)。
つまりチャットツールを加えることで、「重要なことは電話で」「返事を期待しない連絡事項はメールで」という使い分けをした上で、その中間に広がっている実務的なコミュニケーションをチャットに割り当てることができるのです。
チャットワークでは、Skype と比べて「返信」「引用」といった機能が備わっていますので会話の流れが分かりやすくなっていますので情報の拾い損ねが起こりにくいですし、会話そのものにタスクを割り当てることができますので実務上ありがちなボタンの掛け違いをツール上でつぶしてゆくことができるというメリットがあることも見逃せません。
チャットワークでの仕事の流れ
それではチャットワークでのチャットによる仕事の流れをみてみましょう。まず仕事単位でチャットルームを作成していきます。GTDでいうなら、一つのプロジェクトに一つルームがあってもよい感じです。
チャットルームを作成したら、メンバーを加えておきます。
あとは普通に会話を行うように連絡事項を確認しつつ仕事を進めます。たとえばこの原稿を書くのには EC studio の担当者のみなさんに質問をしつつ進めていましたが、このような流れになっています。
必要に応じて To 機能を利用して直接語りかけたり、メッセージを引用してどの部分に返事をしているかを分かりやすくしておくわけです。
ところでチャットルームはそれなりに会話がはずむので間違えやすいのですが、大事なのは会話がすすむことではなくて、仕事が進むことですので要所要所で会話で決まったアクションをタスクとして割り当てておきましょう。
割り当てられたタスクは右タブに一覧表示されますので、ここにタスクが存在している間は何か仕事が待っていることになります。
また、必要に応じてファイルをチャットルームそのものにアップロードします。ファイルをアップしたあとは、チェックしてほしい人にタスクを割り当てるなど、そのファイルをどうしてほしいのか意思表示しておくのがよいでしょう。
こうしたある程度仕事が終わったらチャットルームをどうするかという判断も考えておきましょう。
チャットワークのメジャーな利用方法はメーリングリストのかわりに導入する場合だと思いますが、その場合はチャットルームは無期限に存続させておきます。
逆に案件別に作成したチャットルームの場合は必要に応じて閉じたり、いったん会話を終息させることを宣言して、仕事が再開されるまでチャットルームはそのままですが会話が行われない状態で休眠させるというのでもよいでしょう。
チャットに向かい合うための時間も貴重なリソースです。チャットルームの数はこの希少なリソースを分散しすぎないように適宜調整しましょう。
実際に運用する場合の注意点は?
チャットを仕事場に加えた場合、いくつか新たに注意しておきたいことも発生します。どれも新しいツールに付随した注意点で回避可能なものですが、最初のうちは意識しておいたほうがいいでしょう。
ノーティフィケーションに注意!
それはまずノーティフィケーションの問題です。人対人なら声で呼びかけますし、電話なら呼び鈴がなって、メールなら受信箱をチェックすると思いますが、そこにチャットが加わりますので書き込みがされていることをタイムリーに知るための仕組みが必要です。
チャットワークの場合、ブラウザのなかで立ち上げることのできるデスクトップ通知機能がありますので、新しい書き込みがあった場合にいち早く知ることが可能です。より重要な通知(タスクの割り当てや、期限の変更など)があった際にメールなどの通知が送られてくる機能については今後実装される予定だそうです。
本当に伝わっているか確認を!
チャットに書き込んだものの、それを相手が読んでいなかったということはツールがリアルタイムに近い以上、必ず発生するトラブルです。これを防ぐためには重要な連絡であればあるほど複数の通信手段を利用すること、あるいは一定時間が過ぎたら再度相手に呼びかけるといった必要があります。
メールとは違うということを周知する
メールでも送信したあとに「◯分以内」に返事がないとイライラするという人がいますが、これが滑稽なのは郵便でも相手がすぐに読むことは期待されていないのに、電子メールが瞬時に届くからと言ってすぐに読むと仮定している点にあります。
チャットでもリアルタイムに近いからといって、書き込みにすぐに返事があるとは限らないということは周知する必要があるでしょう。そしてむしろそうした時間差の会話が能率を上げることを広める必要があります。
国産チャットサービスよ、盛り上がれ
EC studio の開発者とも記事の作成にあたっておはなしを伺ったところ、チャットワークで最もこだわっているのが操作性だということです。
複数のチャットルームという縦糸に対して、タスク管理やファイル管理といった横糸が1画面のなかで収まっているために、メールに比べて大量の細かい作業を捌くことができるように気をつけたそうです。
また、スマートフォン中心のコミュニケーションツールに比べて、業務に利用出来る設計を中心として今後スマートフォンに進出する計画であるという点も、本サービスの位置づけを語っていると思います。
個人的には、Google Apps や Flow のように海外のウェブサービスがいつもフィーチャーされることが多い中で、国産のサービスがこうしてリーズナブルな価格帯で登場したことを大いに歓迎したいと思っています。
日本で作られているということは、Flow などにあるような日本語変換まわりでのバグや、ファイルの文字化けといった点も心配する必要がありませんし、サポートも日本語でよいわけですので、これだけでも小規模なオフィスで利用する価値があります。
計画停電などのようなさまざまな障害が発生している今だからこそ、技術と知恵でそれを乗り切る知恵の一つとして、チャットで時間と場所を選ばない会話スタイルを導入する人が多くなることを祈っています。
チャットワークでは現在英語版の開発も進められていて、今年中に世界展開も目指すとのことです。
チャットワークのような国内発のサービスがさらに盛り上がっていくといいですね!
(Disclosure)
本記事は EC studio、AMN とのタイアップによる記事広告です。記事の執筆にあたり謝礼をいただいていますが、私の一存でその全額を東北地方太平洋沖地震の被害にあわれた方への義援金として日本赤十字社に寄付いたします。