あなたが情報のキュレーターにならなくてはいけない理由
キュレーション、という言葉を最初にきいたのはThis week in Google のホスト Jeff Jarvis が「検索の次にやってくるもの」としてキュレーションについて論じていたときのことです。それ以来、この言葉がもっている磁場に私もからみとられています。
「キュレーション」というと、普通は美術館で展覧会を催すときに特定のテーマやメッセージに基づいて作品を選びとり、配置する学芸員の役割として辞書などには載っています。しかし最近ネットでよく聞くようになったキュレーションは、むしろソーシャルメディアやブログによる情報の選別・整理・共有などを指しています。
ここまで聞くと、「ああ、影響力の強いブロガーやメディアの話ね」と思われる人もいるかもしれませんが、むしろここまでツイッターや Facebook の影響力が強くなった現在、誰もがキュレーターでなければいけないということを日々感じます。
「やめないひと」の役割
このことを生のデータから浮き彫りにした、いま一番旬の本が、みたいもん!のいしたにまさきさんが出版された、「ネットで成功しているのは〈やめない人たち〉である 」 です。
この本は非常に奇妙な作りをしていて、本の初盤にはネット上で活動している110名もの人への(私も末席に加わっています!)アンケート結果が生データのまま掲載されていたり、中盤には一見つながりのみえない二つのインタビューが挿入されていてリニアに理解することを拒みます。
しかし「なぜネットに情報を発信するのか?」という疑問を手にアンケートとインタビューを切り進んでいくと、きっとこのブログの読者であるみなさんには肌で感じ取ることのできる答えが見えてきます。
ブログであれ、ツイッターであれ、Evernote であれ、なんらかの形でログを残していると、そのログが価値を持って語り出します。<やめない人>たちはそれを知っているからこそ、膨大な情報を自分の目で濾し取って、自分というフィルターを通して再度ネットに発信し続けるのです。
いしたにさんの著書にはアンケート結果がすべて載っていますので独自の分析を加えることができます。私がちょっと興味をもって数えたのは、どれだけの人が「自分の視点」を大事にしているか、そしてどれだけの人が「情報の受け手を意識しているか」という側面でした。
結果はほぼ同数で、110人のうちの多くの人が「自分の視点」と「受け手の反応」をなんらかの形でバランスさせている様子がみえました。これはいわば、キュレーターが「意味・価値の伝声管」として自分の視点を来場者に受け取りやすいように腐心している姿に相当します。
ネットで情報を配信する人はすべてなんらかの意味でキュレーターなのです。
あなたはどんな情報のフィルターか
それではブログの著者や、ウェブに情報を発信しているひとだけが何かの価値を生み出しているのかというと、そうではありません。
あなたがこの記事を読んでいるということは、なにか別の記事を読まずに、このブログを選んでくださったという決断が伴っています。そしてその選びとりは、情報のフィルターであり、あなた自身の価値観によるウェブの、世界のキュレーションでもあるのです。
どんなブログを読んでいるのか、ツイッターでどんな人をフォローしているか、どんな記事を読み、どの記事をブックマークして、どの記事に言及しているか。そうした何気ない情報の選びとりが、そのままあなたの価値観の反映なのです。
そしてその情報の選びとり方という価値観が、そのまま普段の仕事での情報力、アイディアの発想力にも直結します。
ひるがえって考えると、他の人とまったく同じ情報しか追っていない、自分の情報フィルターの独自性が低い場合には、どんなにたくさんの情報を追っていても差別化が難しくなります。
逆に少ない情報でも、他の誰も追いかけていない情報の組み合わせを読み取っている人のもとには、独自の価値がやってきます。
「あなたはどんな情報をフィルターしているか?」これは Google Reader の上手な使い方や、Evernote の使いこなし方といったこと以前に重要な点なのです。
ちょっと込み入った話でしたが、情報整理の根源的な話題ですので、質問の形でまとめておきたいと思います。
-
あなたが読んでいる新聞、雑誌、ブログ、ウェブサイト、ツイッターのフォローに 10-20% でよいので自分だけの偏愛で選びとって読んでいるものはありますか?
-
残りの 80% のうち、重複が多いもの、読まなかったからといってあなたのフィルターとしての役割に影響が及ばないものはありませんか? それをまとめてダイエットしてしまうのはいかがですか?
ふだんの情報の選びとりがそのまま情報のキュレーションであると気づくとき、情報のフィルターとしての自分の役割がみえてきます。そしてそれを実際の日常の仕事で応用できる道もきっとみえてくるはずです。
あなたはどんな情報をフィルターしていますか? それはどのような価値を生み出し、誰に届いていますか?