Evernote と Google の「同時検索」機能。その意味とは?
ちょっと考えないとその重要性がわからない新機能というものもあります。
今週急遽追加された Evernote の Chrome エクステンションでの Google 検索との「同時検索」機能がまさにそれです。
この機能を Chrome エクステンションのオプションで有効にすると、Chrome から Google 検索を行った際に、通常の検索リストの上部に「Evernote の関連する項目」が表示されるようになります。
ユーザーは Google の検索でヒットした項目か、Evernote の項目のいずれかを選んで探しているものに向かって舵を切ることができます。
ただこの新機能、2つの検索がまったく方向性の違うものであることを意識しないとなかなか意味がわかりません。
検索の「個性化」と Evernote
実は Google 検索はここ最近ずっと検索の「個性化」を進めていました。最近ではブラウザのクッキーなどをクリアしない限り、同じキーワードで検索しても異なる結果が得られることが多くなっていたのです。
たとえば私の Chrome では「モレスキン」と検索すると、「モレスキン伝説のノート活用術」が高いランクで表示されますが、それは職場の他のパソコンで検索をした場合とは異なる結果です。私の検索後のクリック行動が検索に影響を与えているのです。
また、Google プロファイルにツイッターのアカウントなどを登録している人は、検索にソーシャルストリームが流入していることにも気づいていることでしょう。これは検索ワードについて「自分のフォローしている人がどういう発言をしているか」と検索したもので、その人その人に固有のものです。
Google はこうした検索の「個性化」を進めることで、検索がその人にカスタマイズされて表示されるようにしているわけです。
Evernote の同時検索もこのような「検索の個性化」の流れに近いですが、方向性のベクトルが 180 度異なります。
Google の検索がいかに個性化されたところで、本質的にそれは「自分がまだ触れていない情報」へのアクセスを促しています。
それに対して Evernote は「過去に自分が触れた情報」「自分が Evernote にいれるくらいには興味をもっていた情報」という側面を探し出してくれます。
このことは、過去にすでに Evernote に入れたのを忘れていた情報を取り出すのに便利なだけでなく、過去の経験を「現在知りたいこと」の検索ワードで串刺しにするという意味ももっています。
たとえばいま「記憶」というキーワードで Google 検索をした場合、Evernote の同時検索には過去に自分がクリッピングした「記憶」という文字列を含むノートを探してくれます。たとえ普段「記憶」について意識して情報を集めていなかったとしても、です。
Evernote は「第2の脳」として記憶を外部化するということを会社の目標にしていますが、こうした Evernote のプラットフォーム化は、それがあながち冗談ではないことをしめしています。
脳の中と外を同時に検索しているような不思議な感覚がしますが、ぜひ利用してみてください。