人生のルールブックを変える。クリス・ギレボーの "The Art of Non-Conformity"

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映画「マトリックス」で、ローレンス・フィッシュバーン扮するモーフィアスが語るセリフに、いつも私が何かあるたびに小さくつぶやいているものがあります。

Some of their rules can be bent, Others can be broken ルールの大半は曲げることができる。そして残りは打ち砕ける

交通ルールのように、守らなくては即座にゲームオーバーとなるルールもあります。しかし一方で、人生において順応したり服従することが暗黙のうちに期待されているルールの多くは、曲げたり破ったりしてこそ面白みがうまれます。

こうした Non-Conformity 「ルールに素直に従わない」ライフスタイルを提示するのがクリス・ギレボー氏の The Art of Non-Conformity という本です。

クリスは理知的ですが、挑発的でもあります。「人生で一度か二度しか海外旅行にいかない人がいる。しかも行ったとして、イギリスみたいに安全な国にしかいかない」そんな彼は旅を通して自分を見つめ直すために、すでに100カ国ほどの国を訪問しているそうです。なかにはシリアのようにアメリカ人には旅行しづらい場所や、ブータンのようにそもそも入国が制限されている国も含まれます。

クリスは通常の仕事を辞め、ブログを通した執筆などの活動だけでそうしたライフスタイルを維持しているという点も驚きます。「自分の考えに制限を加えるな、自分のルールを作って人生を思うように生きるんだ」とクリスはさらに挑発します。

本書ではそうした普通でない生き方を送るためのヒントが短くまとめられています。たとえばこうした変化を起こす際の恐怖と戦う方法、周囲の抵抗をどのようにやりすごすか、ブログを通してコミュニティーを立ち上げて助けてもらう方法、経済的自由の作り方、世界中を少ない予算で旅する方法などです。

クリスの本はこれまで読んだこの手の本に比べてものやわらかい内容になっています。人によってはつまらないと感じる人もいるかもしれません。しかし普段からクリスのブログを読んでいてとても感じるのは、自分の生き方を人に伝えることでその人に幸せになって欲しいと願う、真摯さです。この真摯さが、この本にはみなぎっています。

ライフハックも、本来はこうした「ルールに従えない人」のものだといえます。言われたとおりにやるよりも良い方法があるなら、迷わずそれを選ぶ反骨の精神が根底にはあります。ライフハックが仕事術だなんて、誤解も甚だしい!

クリスに刺激を受けたので、今後このブログでもこうしたライフスタイル・デザインの話題は増やしていこうと思います。

ルールを曲げるのが好きですか? つまらないルールを破壊してよりよい方法で人生を生きたいと思いますか? それなら、この本は一読に値します。

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。