人生のサボタージュ、あるいは有言実行の壁

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自分の人生を自分でサボタージュしていませんか?

セス・ゴディンの記事、Sabotage! が短いながらも、何度読んでも心に突き刺さります。

サボタージュ」は日本でよく用いられる「サボる」という言葉の元ですが、怠けるというよりは意識的に妨害することをさしています。

ここでいうサボタージュは、恐れや不安から自分の能力を過小評価することや、あえて自分ができることをやらないという選択肢を選ぶ心理状態のことを指しています。

Marketing self-sabotage is fascinating to watch and understand. Consider the college application: it’s primarily an opportunity for teenagers who aren’t sure of where they want to go to undercut their chances by exposing their uncertainty. The lizard brain, the voice in the back of the head that wants security and safety–it’s not eager to go to a college that might be ’too hard’ or ’too good’. The easy thing to do is to scale back the effort, not do what works, but do what feels right instead.

マーケティングにおける自己サボタージュは観察していても面白い現象だ。大学の出願を例にとってみるといい。自分がなにをしたいのかわかっていないティーンエージャーにとって、それは不安を理由に自分を安売りする機会となる。安全と安心を求める原始的な脳の部分が、「良すぎる大学」「難しすぎる大学」に行くのはよせとささやくのだ。努力を控えるのは簡単だ。可能性に賭けることをせずに、なんとなく気分に従えばよい。

同様の心理状態はリーダシップをとるとき、本当に重要な仕事にのりだすときにも訪れます。それはもっともらしい説得力に満ちていながら、その実自分で自分を否定するサボタージュの行為なのです。

Or consider the way we resist opportunities to lead, to connect, to do work that matters. We don’t resist because we’re not capable of it… we resist because if our marketing fails, if we don’t get the job or earn the trust, then we’re off the hook. No promises made, which means no promises to keep.

リーダシップを発揮するとき、重要な仕事をするとき、私たちはその仕事ができないから拒むのではない。リーダーの器ではない、仕事がとれなかったとわかった時点で、責任から開放されるからだ。約束をしなければ約束を守ることもないというわけだ。

私自身、いったいこれまでどれだけのことを言い訳して逃れてきたのか、見当もつきません。「このテーマは難しすぎる」「これは複雑すぎて自分にはわからない」「どうも自分には向いていない気がする」こうした言い訳はいつも先回りして私を安易な谷間へと谷間へと手を引いてきたように思います。

あるところで、こうしたすべての言葉が分別でもなんでもなく、単に勇気がないだけのことなのだと気づかなければ、このゆるやかな転落は止まりません。そうしているうちに、手にしていると思っていたものさえも失われてゆくのです。

突然漫画の話になって申し訳ありませんが、我が家でも大人気の「ワンピース」の主人公の決め台詞に「海賊王に俺はなる」というものがあります。作中ではそれが主人公の無謀さ、不敵さ、そして痛快を描くものとなっていますが、これと同じように、無謀であっても、先に犠牲とするものがわかっていなくても、「私は◯◯になる」と結論を先回りさせて、その結論に自分を導いてもらうしか方法はない気がします。

本当にほしいものを、本当になりたいものをいまこの場で宣言できるでしょうか?

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。